「衣装、使えそう?駄目なら替えはこっちにあるからおいで」


「・・・あ。は、はい」
 

 

中腰のまま振り返ればそこに既に姿はなく、慌てて先を行く彼の後を追った。
 

階段の近くの部屋に入ったその人が部屋の電気を点けて、入口でどうぞと僕を迎える。
 

今までのこの人からは考えられない程そっけないぐらいの態度が逆に怖く思える。
 

 

「あ、ありがとうございます・・・」
 

「どういたしまして」
 

 

油断は出来ないぞと身を引き締めて室内に入ると、彼は中には入って来ず部屋の外に立っていた。
 

 

あれ・・・?

 

オレが気にしすぎた?自意識カジョーってやつ?

 

だったらチョー恥ずかしいし、そんな風に思ってしまった事を申し訳なくも思う。
 

 

そんな事を思いながら、衣装室らしきこの部屋からオレが着ていた衣装と似たようなデザインの服を探していたら、突然ドアの方から大きな物音がして慌てて振り返った。
 

 

「ひえっ・・・!?な、なにっ?」
 

 

何にびっくりって大きな音もそうだけど、一番の驚きはそこに櫻井くんがいたこと。
 

 

しかも鬼の形相で。
 

 

オレの心臓がバックンバックンして今にも壊れそう。
 

 

思わずその場にへたりこんで、手にしていた服で咄嗟に体を隠した。
 

 

ドアに押し付けられるようにスタッフさんが櫻井くんに胸ぐらを掴まれていて、ものすごい怖い顔した櫻井くんが何か喋っているけど、内容までは聞こえなかった。
 

 

な、なんでここに櫻井くんが?!
 

 

呆気に取られたオレは二人の様子をただ見ているだけだった。
 

決して大きな声ではないのに、めちゃくちゃ怒ってるのが雰囲気で伝わる。
 

スタッフさんも完全にビビッてて、真っ青になりながらなんか言ってる。
 

 

「俺マリーナでアンタに忠告したよな。次はねぇって。次コイツに近寄ったら上に報告するって言っただろ。なのになんでここにいんの」
 

「・・・いっ、いや。これは、そのっ、あ、相葉くんが!一緒に来てと言うので、俺はそんなつもりじゃ・・・っ」
 

 

櫻井くんから逃れようと必死にもがきながらスタッフさんがオレの名前を口にした。
 

 

それを聞いた櫻井くんがオレの方を睨んできたので、違う違うと懸命にアピールした。
 

 

だって、本当に知らないんだもん。むしろついて来いって言ったのこの人のほうだしっ。
 

 

「おまえ・・・っ」
 

「ぐ・・・っ」
 

 

そしたら櫻井くんはこれ以上ないってぐらい怒りを露わにして、更にきつく締め上げた。