マネジャーから事前に雅紀の不眠について聞いていたから、その寝息に安堵したのも束の間。

 


時間にすると寝入って僅か二、三分程度経った頃。
 

 

『ヒュッ』と息を吸う音がしたかと思うと急に静かになった雅紀の体がビクッと一度大きく震えると、突然大きく目を開けてそのまま飛び起きた。
 

 

「雅紀・・・?」
 

 

今度は胸の辺りを押さえながらハッ、ハッ、ハッ、と短い呼吸を繰り返し、キョロキョロと首を左右に振って何かを探しているように見えた。
 

 

「雅紀?なに?どうした?!」
 

「・・・あ。え!?しょーちゃん?」
 

 

同じように身を起こした俺が雅紀の肩を掴んで揺すると、やっと自分を取り戻したようで俺を見て驚いた。
 

 

「急に呼吸が停まったと思ったら飛び起きたから、どうしたのかと思ったよ」
 

「あ・・・、そう、なの?ごめん、自分じゃ分かんなくて・・・」
 

 

ふー、と大きく息を吐いて自身を落ち着かせると、その後何やらブツブツと独り言を呟き始めた。
 

 

「・・・驚かせちゃってごめんね。びっくりしたでしょ」
 

 

くふふ、とちょっと恥ずかしそうに笑って見せた。
 

 

「いや、いいんだけど・・・」
 

 

長い付き合いだからこそ分かるその表情。
 

 

「いつから?」
 

「え?」
 

「いつから」
 

 

俺の質問に動揺した瞬間を見逃さない。
 

はぐらかそうったってそうはさせない。だから同じ質問を今度は疑問ではなく断定で投げかける。
 

 

「いつから、って・・・」
 

 

返答に困って笑ってごまかそうとする雅紀の腕を引き、一度離れた体をもう一度抱き寄せる。
 

何も身に着けていない肌と肌がぴったりくっつく。
 

敢えて顔を合わせないように胸元に雅紀の頭が来るように腕を回した。
 

 

「ちょ、しょーちゃんっ、痛い痛いっ。頭の骨砕けちゃうっ」
 

 

ジタバタと腕の中で藻掻いてみせたって、ふざけてこの場を乗り切ろうとしてるのは分かりきったこと。
 

雅紀が痛がるほど強くなんて締め付けてないし、その証拠に腕の力を少し弱めようとしたら上からギュッと雅紀の手が押さえつけてくる。
 

 

「・・・・・・」
 

「・・・・・・も、いつから・・・なんて・・・わかんな・・・」
 

 

無言のままでいるとしばらくして、雅紀が掴む俺の右腕の内側を濡らす感触が伝わってきた。