雅紀のナカに放った後、すぐに動く気になれずしばらくそこに留まった。
せめてこの息が整う間だけでもこの幸福感に包まれていたい。
重なっている胸と胸の間で心臓がものすごい早さでドクドクしていて、雅紀が果てた時と俺が雅紀のナカに射出した時、ようやく自分たちが今、生きているんだと実感を持つことが出来た。
少し落ち着いた頃、独特な倦怠感に支配された体をどうにか動かして雅紀の上から退いて、最低限の後処理だけを済ませて隣に寝転んだ。
すぐに右腕をくぐらせ雅紀の肩を抱く手に力を入れると、俺の意を汲んで雅紀が自分から胸元へ寄って来てくれた。
少し乱れた息遣い。トクトクと脈打つ鼓動。汗に塗れた体から香る匂い。胸の上に置かれた掌の熱。右脚にからめられた長い脚。
ずっと長い間、傍で見て来た雅紀を形作るすべて。
全部が愛しい。
汗で湿ってはいるがクセのないサラサラの髪が顎を撫でる。
そこに軽く口づけ、更に抱き寄せた。
優しく抱きたかった。でも途中でそんな余裕もなくなって自分の欲を満たすことを優先してしまい、思いやることが出来なかった気がして、今になって急に不安になった。
雅紀を傷つけるような無茶な抱き方だけはしなかったと思うけど、正直、自信はない。
「しょーちゃん・・・」
それまで目を瞑っていた雅紀が瞼を上げ、胸元から俺を見上げた。
手に力が入らないと言いながら小刻みに震えている手を伸ばし、その様子をじっと見ている俺の顔にそっと触れると、これ以上ないってぐらい優しく微笑んだ。
「しょーちゃん。・・・ありがとう」
「えっ、な、なにが?」
心の中を見透かされたようでドキッとした。
「しょーちゃんに、こうしてまた抱いてもらえて、オレ、嬉しかった」
涙が出そうになった。
眠っている雅紀にキスをした時、もう一度この手で触れることが出来て、心の底から良かったと思った。
自宅待機期間中に何度か、そんなことにはならないはずだと思いながらも万が一を考えて、沈み込むこともあった。
「まさ・・・」
その度に掬い上げて、救ってくれたのは雅紀で。
会うことは出来なかったけど、その存在に精神はずっと支えられていた。
礼を言うのは俺の方なのに。
言葉にすると堪えていたものが溢れそうで、耐えるために眉間や口許に力を入れるけど、耐え切れず顔面があちこち打ち震え、相当情けないことになっているのが自分でも分かった。
そんな俺を見て、また顔に触れて、安心したように笑う。
もう何度目だろうこの行為。
あ。
見つけたかも。
違和感の正体。