マネジャー経由で雅紀から送られてきた救援物資のおかげでなんとか自炊も出来て、初日以降は平熱に戻ったし、検査もずっと陰性で無事に自宅待機期間を終えることが出来そうで、最終検査の結果が今晩出るのでそれが届き次第、自宅待機解除になる。

 


待機期間中は、ひたすら自宅で出来る仕事とトレーニングと断捨離に費やした。
 

今まで取材して来た事を書き記したノートをデータ化してパソコンに取り込んだり、今後取り上げてみたい議題に関する下準備をしたり、休憩がてら見ていた動画から得たアイデアを松本に相談してみたり、今までやった事のない掃除に取り組んでみたり。
 

思いがけずハマった掃除はしばらく継続され、後に自宅を訪れた後輩たちにモデルルームのようだったと高評価を得るほどだった。
 

普段、時間が合わずなかなか連絡を取り合えない友人とビデオ通話をして、子供たちにもどんな影響が及んでいるのか聞くことが出来た。
 

 

雅紀とは毎日電話やラインでやり取りをして過ごした。
 

外出することもないので手入れもサボって無精ひげを放置している話をしたらやたらと雅紀がそれを見たがり、ボッサボサの寝癖全開のむさ苦しい写メを送ると、秒で電話がかかってきて、『ヤバいしょーちゃん。めっちゃ興奮する』と鼻息を荒げた。
 

冗談半分で「変なことに使うなよ」と言ったら、『………え?………ツカワ、ナイ、ヨ?』と突然カタコトの日本語で言われて、リアルすぎるその間(ま)にも若干引いた。
 

 

雅紀。こんなオッサンのすっぴんに興奮する雅紀が、俺ニハ分カラナイヨ…。
 

 

愛しい恋人の相変わらずぶっ飛んだ思考回路に、危うく今日は天気がいいななんて温かい春の日差しに遠い目をして現実逃避の旅に出そうになった。