「・・・・・・・・・まーくん、・・・、・・・?」
「ん?」
何もすることがなくて、雑誌ぐらい持ってくれば良かったななんて思っていたら、不意にカズに呼ばれて聞き取りにくかったから耳を近付けた。
「・・・あと何分?」
「あと?分かんないけど、30分とか40分ぐらいなんじゃないの?」
「マジで・・・」
そう言って両腕を胸の前で組んでそれぞれの手を両脇に突っ込むと、くるりと背中を丸めて黙り込んでしまった。
あーあー、カズがこの寝方する時はヤバいんだよなあ。
よっぽど調子悪いんだな。
少し顔を覗いてみると、やっぱり辛そうに眉間に皺寄せて目を閉じていた。
「あと20分ほどで目的地に到着いたしまーす。それまでに最終チェックを行いますので皆さん所定の位置に着いて下さーい。五人もカメラチェックに入りますので上部デッキに集まってくださいね」
しばらく経った頃、スタッフさんが声をかけに来たのでカズを起こさなきゃいけなくなった。
さっきやっと寝たっぽいから、もう少し寝かせてあげたかったんだけどしょうがない。
「・・・カズ。・・・カズ、起きな」
軽く肩を叩いて声をかける。
まだ夢の中にいるのかオレの声に全く反応しない。
「カズ。起きなって。もうすぐ始まるよ」
大声は出さないように耳元で話かけてみる。
二、三回肩を揺すると、やっと少しだけカズが動いた。
「・・・な、に?」
左の脇から抜いた右手で目を擦りながら、まだ頭はぼんやりとしたままで体を起こそうとする。
「時間だよ。カメラチェックするからデッキに出てだって。行けそう?」
ソファから落ちないようにその背中に手を添えて補助する。
「ん・・・」
カズがゆっくりと体を起こし部屋から出るのを横から支えるようにして手伝う。
潤たちはもうとっくに移動していて、櫻井くんが何度も振り返りながらオレたちの少し前を行く。
きっとカズが心配なんだろうな。部屋にいる時もずっとこっち見てた。
一歩を歩くのがやっとのカズをなんとか階段を最後まで上がらせて一階に出た時、バラララララ・・・とすごい音がしたと思ったら船がすごい揺れた。
みんなが一斉に音のする方を見て、音の正体を探る。
ヘリが船の真上を飛んでいて、そのせいで船が揺れているみたいだった。
「うわうわうわっ」
めちゃめちゃ激しく揺れるので、カズの腕を掴んで抱き寄せて、近くにあった壁に背中をくっつけてしゃがみこんだ。
ヘリの音が小さくなると、船の揺れも治まって安心したのも束の間。
後ろから広げた脚の間に抱きしめていたカズが突然俯いて両手で口を押さえた。