インタビューを終え、帰港するまでの間にもインサート用や明日の新聞に掲載用の撮影をするとかで、デッキをあちこち連れ回された。
逆光だからこっちからとか、見栄えだとか、とにかく気にするところがたくさんあって、他社よりも一歩でも抜きん出たい彼らは隙あらば、と言った感じだった。
時間が経つにつれ日射しも強くなり、気温も上がり始める。
最初に異変が起きたのは、やっぱりカズだった。
ひどく船酔いをして吐いた後とは言え楽にはなれず、絶えず体を動かしていた。
「二宮くんはちょっと緊張しているのかな?」
記者からはそんな質問も出たぐらいだから、傍から見れば少し落ち着きがないように見えたのかもしれない。
だが、こんな状況だからと誤解されたのは有難い誤算と言える。
それでなんとか誤魔化せていたけど、さすがに睡眠不足と緊張と船酔いのトリプルパンチはキツかったんだろう。
後半になるとさすがに足が小刻みに揺れて、体がふらつきだした。
それでも弱みなど見せてたまるかと記者たちの要望に応えようとカズは笑う。
「はーい、では次はこちらのカメラに向かってお願いしまーす」
全員で声のする方へ向きを変えるタイミングで、俺はさり気なく後ろからカズの腰に右腕を回した。
ほぼ同時に反対側から『相葉雅紀』の手がカズの左肩に伸び、背中からも支えられた。
「・・・しょっ、」
「いいから。キツかったらこのまま寄り掛かってろ」
「・・・・・・・・・」
驚いたカズの声を遮り、顔はカメラの方を向いたまま早口で言えば、カズは黙って身を預けて来た。
それでだいぶ楽になったみたいで、なんとか最後までやり切ることが出来た。