時間もないせいかカズとスタッフを残し、少しだけ汚れてしまった船内を掃除するとあっという間に人だかりは消え、それぞれ持ち場に戻って行った。

 


「おーい、翔くーん。大丈夫かー?」
 

 

頭の上から声がして、顔を上げると身を乗り出して見下ろしている智くんと潤がいた。
 

二人はこの騒動の前に上部デッキに上がったので下りて来なかった。
 

 

「あー、ちょっとカズが吐いちゃったけど、もう大丈夫ー。もう少し待っててー」
 

「分かったー」
 

 

見上げると眩しくて手で影を作り、反対の手で手を振れば同じように振り返され二人の姿は見えなくなった。
 

 

 

そして・・・。
 

 

キョロキョロとデッキを見回して、あることを確認する。
 

 

「しょ・・・ちゃ」
 

 

腕組みをして仁王立ちで一点を見ていると消え入りそうな声でカズに呼ばれ、そっちに顔を向けた。
 

 

「どうした?」
 

「まーくん・・・おねがぃ・・・」
 

 

涙目で訴えかけるカズ。
 

 

おいおい。こんな時でも自分の心配じゃなくてそっちの心配かよ。
 

 

本当にこいつらお互いが大事なんだな。周りが、てかジャニーさんがこの二人をニコイチ扱いするのも分からなくはないと思った。
 

 

俺だってさっき二人が一緒にいたところ見てて思ったもん。まるで兄弟みたいだなって。
 

 

片時も離れようとせず、弱ってるカズを一所懸命守ろうとしてた。
 

 

「しょーちゃ・・・」
 

 

もしかして、カズも気づいてる?
 

カズも『相葉雅紀』を守ろうとしているような気がした。
 

 

「ん。分かった。行って来るからそんな心配すんな」
 

 

ぐったりして汗で湿った髪をクシャっと撫でて笑ってやると、カズも弱々しいながらも安心したように笑顔を見せた。
 

 

そして俺は『相葉雅紀』がいるであろう部屋へ向かった。