陽が昇り、残りのスタッフも起き出し、潤たちも起きて来て静かだった船内がだんだん賑やかになって会見の時間が刻一刻と近づいてきた。

 


朝食は俺たちが最優先され、スタッフも順番に食べては交代していく。

 


「えー、皆さんおはようございます。田ノ浦です。食事中の方は食事しながら、仕事中の方は仕事をしながらで結構ですので聞いて下さい」

 


田ノ浦さんの声に一瞬みんなの動きが止まったけど、食べながら、仕事をしながらで良いと言うので再び動き始めた。

 


「まずは深夜の移動、お疲れさまでした。嵐の五人を始め、付き添ったスタッフ、全員が無事に合流出来て何よりです。

本日未明、予定通りマスコミ各社へ向け記者会見の最新プレスリリースが送信されました。現在のところ参加確認者数に変更は無く、定刻通りに会見場所に向け出航予定となっております。

本船もこの後同所に向け移動を開始しますので、各自配置に付き次第業務にあたってください。その際ですが、各責任者に最新資料を預けておりますので受け取り、最終確認を怠る事のないよう細心の注意をお願いします。以上」

 

「はいっ」

 


最初と最後に田ノ浦さんが頭を下げ、俺たちも含むその場にいた全員が同じように頭を下げ、スタッフは声を合わせた。

 

 


食欲がないと殆ど何も口にしなかったカズと、食事を終えた『相葉雅紀』が先にヘアメイクにかかり、その後に俺、智くん、潤が続いた。

 


用意された衣装に着替えヘアメイクが終わったはずのカズの顔色が一向に冴えない。

 


一番に準備を終えたカズはずっと横になっていた。今は背中を向けて丸くなっている。

 


『相葉雅紀』は心配そうにずっと傍らで寄り添っている。


時々カズが小声で話しかけているようで、その度に『相葉雅紀』はカズの口元へ耳を近づけては頷いて返事をしていた。

 


「あと20分ほどで目的地に到着いたしまーす。それまでに最終チェックを行いますので皆さん所定の位置に着いて下さーい。嵐の五人もカメラチェック入りますので上部デッキに集まってくださいね」

 


若いスタッフが声を張って伝達して回る。

 


『相葉雅紀』がカズの耳元で何かを囁き、しばらくするとカズがモゾっと動いた。

 


ゆっくり起き上がろうとするカズを支えるように『相葉雅紀』の手が背中に添えられている。


抱えられるようにしてそのまま何とか一階の後部デッキまで移動してきた二人を確認して、俺が上部デッキに上る階段に足をかけたのとほぼ同時に大きく船が傾いだ。