披露宴会場から更衣室に戻る途中、しょーちゃんの姿を見かけた。


今朝の出来事のその後が知りたかったけど、周りには他にも人がいてとても話しかけられる雰囲気ではなかったので先に帰り支度をすることにした。
 

 

午前中と違い残っているモデルも少なかったので慌てて着替える必要もなく、広々と場所を使って着替えられた。
 

 

「おつかれさまでーす」
「お先に失礼しまーす」

 

 

先に着替えていたモデルたちが続々と部屋を後にして行く。    
 

僕も手早く着替えを済ませ、残っている人に挨拶をして部屋を出た。
 

 

もう一度しょーちゃんの姿を確認してみても、やっぱりまだスタッフと打ち合わせをしているようだった。
 

しょーちゃんが身振り手振りで指示を出し、それを受けたスタッフが設営された会場内をウロウロしているのが見えて、このまま待ったところですぐにしょーちゃんの体が空くとも思えず、このまま帰ることにした。

 


エレベーターに乗ってバッグにしまっていた携帯をチェックする。
 

 

明日の連絡事項と、数件のお知らせや広告と、しょーちゃんからも届いていた。
 

先に連絡事項を確認して、次にしょーちゃんのを見ようと指を動かしたら指先がブルブル震えてた。
 

たかがメッセージなのに妙に緊張している自分がなんだかおかしくて笑える。
 

深呼吸をして改めて内容を確認すると、おつかれさまですと労いの言葉から始まり、マリエさんの様子が記されていた。
 

マリエさんは切迫流産とかいうやつらしく、しばらく安静が必要と診断されたとのことで、大事な日に僕に迷惑をかけたことを申し訳なく思っていると伝えて欲しいと言付かったと書かれていて、僕の方が申し訳ない気持ちになった。
 

切迫流産がどういうものかよく知らないけど、流産という言葉を使うぐらいだから赤ちゃんやマリエさんの体に良くないことだろうというのは想像がつく。
 

だけど今のところ、マリエさんもお腹の子も大丈夫だったってことだよね。
 

僕には無事に生まれて来れるように願うしか出来ないけど、願わずにいられなかった。
 

 

だって、大事なしょーちゃんの赤ちゃんだよ?
 

 

しょーちゃんの大事な、…大切な、赤ちゃんだから。
 

 

しょーちゃんの命を受け継いでいく、大事で、大切な、命。
 

 

 

どうか、無事に、生まれて来て…。
 

 

 

本気で、心の底から、思い、願った。
 

 

祈るみたいに携帯を握りしめて。
 

 

明日も宜しくと締め括られたしょーちゃんに、僕も同じようにおつかれさまですから始め、マリエさんの身を案じ、元気なお子さんを生んでくださいと続け、明日も宜しくお願いしますというメッセージを返して携帯をバッグに戻した。