時間としてはそんなに長く眠ってはいなかったようで、オレが目を覚ました時はまだ外は暗いままだった。夜明けまではまだ時間がある。
オレの腕を掴んでいたカズの手は外れてだらんと垂れている。
少しずつ体をずらしてカズの体を寝かせてやり、向かい側で腕と脚を組んで座ったまま眠るスタッフさんの体にずれた布を掛け直してオレは外の空気を吸いに出た。
季節的にもまだまだ夏みたいなもんで、海の上でも寒さを感じる事はなかった。
その時、何気なく見上げた頭上の景色に言葉を失った。
見渡す限り広がる闇に煌めく満天の星。無数の輝き。一億の星。
「・・・う・・・っわぁ・・・」
日本では見た事のない初めて見る景色に圧倒される。
周りに何も建物がないから、月と星の明かりだけがすべての世界はものすごく美しいものだった。
「カ・・・っ」
急いで中にいるカズを呼んで来ようと思ったけど、気分悪そうにしていたことを思い出してやめた。
「・・・すげーいいもん見ちゃったな」
もう一度夜空を見上げる。
気が付けば両目から涙が零れ落ちていて、人は感動した時もこんな風に泣くことがあるんだと知る。
この景色を忘れずにいよう。
しっかりこの目に焼きつけよう。
不思議とそんな気持ちになって、涙で濡れた目尻を拭った。
ふたたび船内に戻り、カズが眠っている場所より一段低い床の部分で自分ももう一度眠りについた。
夜明け前にクルーザーに着いて起こされ、寝ぼけ眼で小船から乗り換えた。
大野くんと潤と櫻井くんは既に到着していて、オレたちが最後だった。
みんな先に部屋で眠っていると言う。
案内された船内は小船のそれとは明らかに違い、揺れもあんまり感じない。
穏やかに眠る三人の姿を確認後、カズと二人空いてるベッドに倒れ込むようにして眠った。