「えー、皆さんにお伝えしていた今日のスケジュールですが、変更になりました。

情報解禁前にも関わらず、このホテルの周辺にマスコミの人間が確認されております。

本日予定しておりますように、グループ名及びメンバーはこの後マスコミ各社に通達することになっておりますので、現時点で情報漏洩は防止しなければなりません。

予定では早朝、全員でマリーナに移動して船舶に乗船することになっていますが、それを変更してこれより移動を開始致します。

またその際、全員での移動は危険と判断し、グループに分かれ、それぞれ別の場所から乗船し、最終的に本日会見予定のクルーザーにて合流という形を取ります」

 

 

田ノ浦さんが説明を終えるとオレたち以外がみんなざわざわし始めた。

 

 

なになに?なんでそんなざわついてんの?移動するのが早くなっただけでしょ?

 

 

田ノ浦さんが手を叩いた音ですぐにみんな静かになった。

 

 

「それでは、大野くんは松本くんと二宮くん、櫻井くんは相葉くんとグループに分かれて移動します。

それぞれスタッフが付き添いますので従ってください」

 

 

えっ!?グループってなに?なんでオレと櫻井くんなの!?

 

 

「カズ、なんでオレ櫻井くんとどこに行くの?」

 

 

隣にいるカズの袖をクイクイッと引っ張って小声で訊いた。

 

 

「は?おまえまた話聞いてなかったのかよ。

俺たちがここにいるのがバレてるっぽいから予定時間繰り上げて移動すんだよ。

子供が5人もいっぺんにうろついたら怪しまれるから別行動でクルーザーまで行くって田ノ浦さんが今説明しただろ」

 

 

声を潜めて教えてくれたけどカズが呆れてるのが分かった。

 

 

 

一緒に行動するメンバーを聞いて終わったと思った。

 

 

 

よりによってあの二人・・・。

 

 

 

あのスタッフさんが動いてこっちに近づいて来ただけなのに、オレの身体は緊張が走った。

 

まだ何もされてないし、一言もしゃべってないのに、オレの体は条件反射のように変な汗が噴き出した。

 

 

 

潤が組み合わせに文句を言ってる。オレも言いたい。出来るなら他の人と組ませて。スタッフさん違う人にしてって。どっちかしか無理ならその時は・・・。

 

 

チラッと横目でオレを見た櫻井くんが手を挙げた。

 

 

「あのー・・・、僕、多少英語は出来るんでこの人と二人でいいです。カズ、相葉くんと組んで」

 

 

マジで!?

 

 

櫻井くんの申し出により組み合わせが変わり、それによってスタッフさんも別の人がオレたちと一緒になった。

 

 

よ、よかった・・・!!カズが一緒だし、連れて行ってくれるスタッフさんは優しそうな人だ。

 

 

いつもは怖い櫻井くんがめちゃめちゃ良い人に見えた。

 

 

ありがとう!本っ当にありがとう!!神様、仏様、櫻井大明神様。

 

 

何やら潤とコソコソ話をしている櫻井くんの背中に向かって手を合わせた。

 

 

「まーくん、なにしてんの?」

 

「え、ううん。なんでもない」

 

 

 

 

エレベーターさえみんな同じではなく、いくつかのグループに別れて場所や時間をずらして移動を始めるほどの厳戒態勢。

 

 

ホテルの裏口に回された車に素早く乗り込んで出発し、船が待つ港を目指す。

外はまだ真っ暗で何も見えない。

 

 

「くふふっ。なんかオレたちスパイになった気分だね」

 

「何言ってんだか。呑気なもんだね相変わらず」

 

 

だって秘密の指令を受けて離れたクルーザーまで車で向かうとか、こんな経験なかなかないっしょ。

 

櫻井くんやスタッフさんと一緒なら地獄だと思った時間がカズとってだけで一気に楽しい時に変わる。