「そうか。兄さんはそう思ったんだ。
…まあそれで言うと俺の、再開はあるとか断言しちゃったのも事後承諾になっちゃったんだけど、…どんな形であれ、最後は、最後まで俺らは5人だから。
休止後、最初に人前で集まるのがたとえ解散の為になったとしても、それは、その瞬間も俺らは『嵐』のままだからね。
他の3人がどう考えてるかは知らないけど少なくとも俺は、そう思ってる」
智くんの気持ちを聞いて俺の気持ちを答える。
「うん…」
散々話し合って、厳密に休止期間をいつまでという期限を設けなかった。
それは一度はこのグループを畳みたいと覚悟を決めた智くんに休止期間を設けることで精神的なプレッシャーを与えない為と、いざ再び5人でという決意が固まっているのに休止期間を設けることで身動きが取れなくならない為に。
そして、休止期間中にやはり誰かがこれ以上5人で活動していくことは難しいと判断した時にやはりその時間が枷になり、期限を決めることで待たされる側にとってもその後について期待する気持ちが大きくなってしまいがちになる。怪我の治療などの理由での休止であれば期限を定めることが出来るが今回はそこには該当しないということで、今回のような形をとるに至った。
だからこそ、再開が世間の希望に副うかたちになるとは言い切れない。だけど、解散を明言するまでは自分たちは5人のグループであって、いきなり誰かを一人を欠いておきながら何事もなかったかのように『嵐』と名乗る気は毛頭ない。
再開であろうと、解散であろうと、その時は必ず5人でいること。それは絶対に譲らない。
「俺、兄さんが絵が描けないって聞いて、ヤバいって思ってた。
あなたは精神的にゆとりがないと作品を作れないって知ってるから、それだけ追い詰められてるんだって。
どんなに仕事が立て込んでてもノッてる時はそれこそ睡眠時間削ってやってたじゃん。
それが出来ないって、相当メンタルやられてるってことなんじゃないか、ってすげぇ心配してたの。
それが今年の24時間テレビでチャリティーグッズのイラストを一人でやるって聞いて、すごいインスピレーションが湧いたって聞いて、めっちゃくちゃ嬉しかったのよ」
今回の件についてまだ智くんから打ち明けられる前から危惧していたことだった。
だからこそ最初に智くんから連絡が来た時、これはただ事ではないと瞬時に察知できた。
何度も話し合いをしている最中も、智くんの創作意欲が湧いてくることはなくて、芸術活動がいかに精神面に左右される繊細なものであるか思い知った。
長い付き合いの中で、いつもは飄々としている智くんの内に秘められている感情を表現してくれるものを踊ることとこれ以外に俺は知らない。
それだけ何年もの間、智くんは一人で苦しんできた。話し合い当初はそれに気づけず寄り添えなかった自分を不甲斐ないと責めたこともあった。そうすると、智くんやあとの3人がそんなことはないと励ましてくれた。