二宮さんは僕の隣に布団を敷いて、掛け布団の上に寝転がった。
僕はうつ伏せで枕を抱え、顔だけを横に向けた。
「あの…、大野さんも二宮さんも食事、まだ…ですよね」
会場を出て、スタジオに入って撮影して、の帰宅だと思うんだけど、その間二人とも食事をしていないと思う。
僕は食欲ないけど、この2人は違うからお腹が空いてるはず。
もしかして僕が食べ物の匂いで気分が悪くなることを気にしてくれているのなら、それは申し訳ない。
「僕、匂い大丈夫なんで気にせず食べてくださいね」
「俺たち向こうで軽食つまんでたから大丈夫だよ。2人とも普段からそんなに量食わねぇし、もし腹が減ったならあの人も何か取りに来るでしょうよ」
そう言って体を横にして片肘を起こし上に向けた掌に頭を乗せて、さっき大野さんが出て行ったドアの方を見た。
「…そうだ。そのメシ食ってる時に櫻井が血相変えて俺たちのところに来てさ、今すぐトイレ行ってくれって言われて最初は何のことか分からなくて面食らってたら、行きゃわかるつってペットボトル渡されて会場から追い出されたのよ。何ごとかと思ったら相葉くんがげぇげぇ吐いてるから焦ったよね」
「あ…っ、そ、その節はどうもお世話になりました」
「いえいえ。どういたしまして」
あの時僕がしょーちゃんを全力で拒否したから、わざわざ二宮さんを呼びに行ってくれてたんだ…。
口の中が吐いたモノで気持ち悪くなってたからゆすぐことが出来てありがたいと思ったけど、あれもしょーちゃんが。
二宮さんのタイミングの良さは、偶然じゃなかった。
あんなにひどいことを言ったのに、しょーちゃんは心配してくれたのかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
僕を冷たく突き放そうとしていたんだから、そのままにしておくことだって出来たのにしないところがいかにもしょーちゃんらしいと言うか。
そういう人だって、十分分かってたはずなのになぁ…。
ぽふん、と枕に顔を埋める。
「………」
しょーちゃんのこと、分かってたつもりだけど、それはあくまでも『つもり』だっただけで、本当のしょーちゃんをほとんど分かってなかったんだな。
だから大野さんはあんなに怒ったんだ。
「相葉くん?」
「…大野さん、怒って、ました…ね」
枕に突っ伏したまま声を出す。
怒られて当然のことを僕はしたんだけど。
あんなに温厚な大野さんを怒らせるぐらいだから、しょーちゃんに愛想つかされるのも仕方のないこと。
「…大野さんはああ言うけど、俺はちょっとだけ相葉くんの気持ち分かるよ。俺も相葉くんと同じ側の人間だから」
二宮さんの柔らかい手が僕の髪をさらりと撫でた。