いよいよ明日は会見と言うことで最終打ち合わせを終え、早めに就寝するように言われたけど続き部屋からは遅くまでキャッキャッとはしゃぐ声がして、

智くんは相変わらずのマイペースでいつの間にか寝てるし、俺は俺ですぐには寝付けなくて部屋の電気を消してベッドサイドのライトをつけて単語帳を捲っていた。

 

 

「・・・・・・。さく・・・いくん、櫻井くん。起きて」

 

「・・・んあ。・・・あ、え?」

 

 

肩を揺すられ、振動で起こされた。

 

胸の上に置かれた手は単語帳を握ったまま、いつの間にか眠ってしまったらしい。

 

 

「・・・あれ、俺寝坊しました?」

 

 

もう起床時間かと思ったけど、起き上がって見た智くんの向こう側はまだ真っ暗闇。

 

 

「いや、まだだけど、予定が変更になったので今から説明するから起きて下さい」

 

 

寝坊じゃなくて安心したのも束の間、すぐに動けるように言われるけど頭と体がシンクロしない。

 

俺を起こした田ノ浦さんは隣の3人組を起こしに向かい、既に姿はない。

 

 

「あー・・・」

 

 

寝起き特有のがっさがさの声で呟き、少し間を置いて動き出す。

 

 

「智くん、おはよ」

 

「ん、おはよ。翔くん」

 

 

ふにゃふにゃの智くんもモソモソと動き出していて、隣の部屋からも人の動く気配が感じられた。

 

ベッドから離れる時に時計を見ればまだまだド深夜の時間帯。

 

何なら俺がベッドに入って最後に時間を確認してからそんなに経ってない。

 

 

 

 

 

「おはようございます・・・」

 

「お、おはよーございます・・・」

 

 

隣の部屋からカズと『相葉雅紀』がこちらへ移ってきたけど、潤の姿がない。

 

奥の方では田ノ浦さんや他のスタッフの声がしている。

 

 

「潤は?」

 

 

カズに尋ねると、肩をすくめてお手上げのポーズで応えた。

 

 

 

・・・やっぱりか。

 

 

 

はあ、と溜息をついて洗面所で顔を洗ったその足で潤がいる場所へ向かった。

 

 

 

 

 

「松本くーん。起きてよー。頼むよー」

 

「松本くん。松本くん」

 

 

もこもこの塊の周辺に集まる大人たちの背中から焦りが見える。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

ぐわんぐわん揺らされても大きな繭は起き出す様子は全くない。

 

むしろ、更に身を小さくしようとさえしている。

 

 

 

あ~あ~、それじゃ逆効果だよ。

 

 

 

「松本くぅ~ん」

 

 

大の大人が潤一人相手に情けない声を出す。

 

 

「田ノ浦さん、どうしましょう。このままじゃ出発に間に合いません」

 

「うーん・・・」

 

 

別のスタッフが田ノ浦さんと時計を見て顔を顰める。

 

 

 

そろそろタイムリミットか・・・。

 

 

 

しばらく離れた場所から事態を見守っていたが、悠長なことは言ってられなさそうだ。

 

 

 

俺は集団に向かって歩き始め、ベッドの上で繭と格闘するスタッフの肩を引いた。

 

 

「え・・・っ?」

 

 

突然のことに驚いたスタッフが振り返り俺を見た。

 

 

「そんなんじゃ駄目っすよ」

 

 

スタッフを退かせて、俺は大きく息を吸い込んだ。

 

 

 

そして。

 

 

 

「潤っっ!置いてくぞ!!」

 

「やだっ!!待ってしょおくんっっ!!」

 

 

腕を組んだ体勢で声を張り上げると、目の前に大きな布の塊が宙を舞い、中から凄い勢いで潤が飛びついてきた。

 

 

「・・・起きたか?」

 

「起きた起きた起きたっ!!だから置いてかないでっ!」

 

 

抱き留めて顔を見ないままそう言えば、ぶんぶんと首を振る潤の髪が頬をくすぐる。

 

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

「うんっ」

 

 

ポン、と背中を叩いて体を離せば潤は自分の足でしっかり立ち上がった。

 

それを確認してからみんなが待つ部屋へ戻ろうと身を翻すと、田ノ浦さんをはじめその場にいたスタッフ全員がフリーズしていた。

 

 

「・・・なんすか?向こう行かなくていいんすか?時間ないんでしょ」

 

 

俺の言葉で止まっていた時間が一斉に動き出した。

 

 

「あ・・・っ!そっ、そうだね。行こう行こう」

 

「そうだ、時間!急いで!!」

 

 

バタバタと忙しなく動くスタッフをよそに田ノ浦さんは、いつも持ってる大きな手帳を開いてペンを走らせていた。