二宮さんの運転する車で連れて来られたのは、2人の職場でもあるスタジオ。

 

 

意外だったのは大野さんが助手席で二宮さんがドライバーだったこと。

 

大野さんに聞いたら免許持ってないからって答が返って来てびっくりだった。

 

免許取らないんですか?って聞いたらニノが持ってるから必要ないって言って、それに対して二宮さんは常にニコイチで動かなきゃならないから面倒くさいってぶちぶち文句を零すんだけど、後部座席を独り占めさせてもらって横になりながら見上げた二宮さんの耳がほんのり赤く染まっていることに気がついた。

 

 

 

ふふ。

 

 

 

本当は嬉しいんだよね。

 

 

 

二宮さんが必要とされてるってことだから。

 

 

 

大野さんがいつでも隣にいたいって二宮さんの気持ちを汲んでるのが伝わってくる。

 

 

 

 

変わらない二人に心が温かい気持ちで満たされて自然と微笑みが洩れる。

 

 

それをルームミラー越しに二宮さんに見られていて、怪訝な顔をされた。

 

蒼白い顔をして微笑んでる僕はさぞ不気味に見えたことだろう。

 

 

前に座る2人が時折会話する声を聞きながら、道路を走る程よい振動にあっと言う間に僕の意識は沈んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相葉くん、起きて」

 

 

ホテルからスタジオまではそんなに遠くないから僕が眠っていたのはそんなに長い時間ではなかったけど、体調はだいぶ良くなった気がする。

 

 

スタジオに着いてすぐに案内された場所には床にシーツが広げられ、その上には鏡。

 

 

軽くアイラインを引かれ、マットな紅を唇に乗せるとそれでメイクは終了。

 

 

顔は塗らなくてもいいのかなと思ったけど、セットの上に寝そべるように指示されたのでそれに従った。

 

 

すぐに撮影が開始され、どうやら僕を起こす前にセッティングを終わらせてくれていたみたいで、全ての準備を終えてから僕を迎えに来たようだ。

 

 

「出来るだけ短時間で終わらせるようにするから」

 

 

そう言ってカメラを構えるのは、大野さんではなく二宮さん。

 

 

大野さんに時々指示を出しながら何枚も撮っていく。

 

 

 

途中で上から大量の花びらが投下され、一気に幻想的な雰囲気になった。

 

 

 

真っ赤な花。

 

 

 

赤。深紅。緋色。

 

 

 

降ってくる花びらに手を伸ばす。

 

 

 

…しょーちゃんの色だ。

 

 

 

僕の体に降り注ぐ花びらが幾重にも重なり僕に覆い被さる。

 

 

 

降り積もる花びらを優しく抱きしめる。

 

 

 

 

 

しょーちゃんには本当に悪いことをした。

 

 

僕の体を気遣ってくれたのに、あんなに邪険にして。

 

 

今度会った時はちゃんと謝ろう。

 

 

あの時はごめん、って。

 

 

本当は祝福しなきゃいけなかったのに、おめでとうも言ってなかったな。

 

 

それも言おう。

 

 

幸せになってね、って。

 

 

 

幸せ…。

 

 

 

しょーちゃんの、幸せ。

 

 

 

今まではしょーちゃんが幸せなら、僕も幸せだったんだけどな。

 

 

 

しょーちゃんの笑顔を見ているのが幸せだった。

 

 

しょーちゃんとするキスが幸せだった。

 

 

しょーちゃんを感じられる体を繋いでる時が幸せだった。

 

 

 

 

 

しょーちゃんといる時間が何より幸せだった。

 

 

 

 

 

あの時間が宝物だったよ。

 

 

 

ありがとう、しょーちゃん。

 

 

だいすきだよ、しょーちゃん。

 

 

 

体を反転させてうつ伏せになると鏡に僕の顔が映る。

 

 

映っているのは僕なんだけど、しょーちゃんが見ていたしょーちゃんを思ってる時の僕はこんなだったんだな、と思った。

 

 

最後に見た僕はどんな風に映っていたのかな。

 

 

もうどれくらいしょーちゃんとキスしてないんだろう。

 

いつだって出来るって思ってたから、毎回しなくてもいいなんて思ってたな。

 

こんなことになるなら、毎回ちゃんとしとけば良かったな。

 

 

 

さよなら、しょーちゃん。

 

 

最後にって思いながら、顔の下に敷いていた自分の手をしょーちゃんに見立てて口づけた。