二宮さんが指定した日はお店の定休日だったらしく、自宅の方へ招かれた。

 

 

「いらっしゃい。あがって」

「こんにちは。お邪魔します」

 

 

丁度お店の真上にあたる階の角部屋が2人の家で、玄関で迎え入れてくれた二宮さんに手土産を渡し、中へ通されると大野さんは奥のリビングのソファーで寛いでいた。

 

 

「空いてる場所、好きなところ座ってて」

「おー、相葉ちゃん。ひさしぶり」

「こんにちは。お邪魔しまーす」

 

 

僕をソファに座るよう勧めてお茶の用意を始める二宮さんと、主らしく悠然と構える自然体の大野さん。

 

きっとこの人たちは普段からこういう形で成り立っているんだろうなあ。

 

陽当たりも良くて、家全体を包む落ち着いた雰囲気が温かく2人らしくて、見ているこちらの気持ちを柔らかく和ませてくれた。

 

 

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「大野さんもコーヒー入ったよ。ほら、邪魔。そこ詰めてよ」

「おー」

 

 

僕の前にコーヒーが置かれ、大野さんの分と二宮さんの分もテーブルに置いて、二人掛けのソファを寝転んで独り占めしている大野さんのところに無理矢理お尻を落として隣に座ろうとする二宮さん。

 

大野さんは嫌がる素振りもなくもそもそと体を起こして2人で長ソファにすっぽり収まり、こぢんまりとした2人のサイズ感が丁度良い。

 

 

「はいこれ。忘れないうちに渡しとく」

 

 

ソファの陰から紙袋を出してきた二宮さんが僕の前にそれを置いた。

 

 

銘菓と書かれた紙袋の商品名は見覚えがあり、その地方と言えばこれ。というぐらい有名なものだった。

 

 

「わあー。ありがとうございます。ここにはなにかの撮影で行かれたんですか」

「………」

「んにゃ。完全プラべ」

 

 

テーブルからソファの足元の方へ頂き物を移動させながら尋ねてみると、二宮さんが無言であからさまに僕から目線を逸らし、代わりに大野さんが答えた。

 

二宮さんのちょっとクセのある行動には耐性がついてきたのか、何かありそうだなと思ったけど、以前ほどその意味を悪く捉えることはなくなっていた。

 

 

「ああ、旅行ですか。いいですね」

 

 

プライベートでの土産だからそう言っただけなのに、次の大野さんからの返事で僕はなぜ二宮さんがそんな行動をとったのか理解できた。