ぷ。
しょーちゃんてば、服脱ぐ時掴みそびれたのかな?後ろぐしゃぐしゃになってる。
くふふ。
ガバッと男らしく一気に脱いで露わになった背中はやっぱり男らしくてかっこよくて、色気のある背中だった。
大好きな人の、大好きな背中。
僕だけの…。
「…うお?!なに!!?」
背中から抱きつかれてびっくりしたしょーちゃんが首だけで振り返る。
「くふふ。僕、しょーちゃんの背中大好き」
お腹の前に腕をまわして背中に顔をぴったりくっつける。
目を閉じて耳を澄まして、とくんとくんと背中越しに感じるしょーちゃんの心臓の音を聞くと安心する。
「…背中だけ?」
「え?」
「雅紀が好きなのは俺の背中だけなの?」
上から降ってくる声の方に顔を向ければ、拗ねた顔したしょーちゃんが僕を見てた。
「そんなわけないでしょ。しょーちゃんの背中だからに決まってるじゃん」
笑ってそう言うと、ホッとしたようにしょーちゃんも笑った。
バカだねえしょーちゃん。自分の体にヤキモチやいてどうすんのさ。
「ずっとそこにくっつかれたら着替えられないんですけど」
しょーちゃんが困ったように笑うから仕方なく離れる。
いつもならここでキスが来るのにな。とちょっと物足りなさを感じながらもしぶしぶリビングに戻った。
「おまたせ」
着替えを終えたしょーちゃんが寝室から出て来て、後ろ手に扉を閉めた。
「雅紀も今日は疲れてるみたいだし、送るよ」
「え…」
「どうした?」
「え、や、僕、何しに来たんだっけと思って」
「雅紀さんよ…。だいぶお疲れ?」
しょーちゃんが僕の両肩に手を置いてがっくりと項垂れた。
「え…えへ?」
「つーか、掃除させた俺のせいか。マジごめん」
笑ってごまかしたけれど、本当に僕は何をしにここへ来たんだろう。何か大事な用があった気がするんだけど…。
そこらへんだけスコンと綺麗に記憶が抜け落ちてるような気がする。
結局、思い出せないまま送ってもらって降り際にいつも通りのキスをして、帰って行くしょーちゃんの車を見送って僕も家に入った。
「ただいまー」
真っ暗な誰もいない家。
母さんはまだ帰って来ていない。
「あ、今日はばあちゃんの付き添いか…」
なんだか今日はひどく疲れた。
風呂入んなきゃとか、二宮さんに連絡しなきゃとか、しょーちゃん家に何しに行ったのか思い出さなきゃとか思うことは色々あったのに、よろよろしながら階段を上がって自分の部屋に辿り着いた僕は、しょーちゃんの帰宅の連絡を待たずにそのまま眠ってしまった。