ひとしきり泣いて、涙も声も涸れ果てた。
疲れ果てた体はひどく重く、頭も痺れてるみたいにボーっとしてどこか白く霞んでいる。
あれ?何してたっけ、僕。
「雅紀…?」
僕の様子を窺うように心配げなしょーちゃんの顔が見えた。
「…あ。しょー…ちゃ…?んん…んっ…?」
重い瞼を抉じ開けて、怠い体をどうにか動かしてしょーちゃんの腕の中から抜け出る。
発した声が掠れていてのどがカラカラに渇いてる。
「ちょっと待ってて」
そう言ってソファに僕を凭れ掛けさせて立ち上がったしょーちゃんは水の入ったグラスを持って戻って来た。
「これ飲んで」
「ありがと」
口に含むと潤いを求める体が一気に欲しがって、あっと言う間にグラスが空になった。
その様子を見守っていたしょーちゃんがもう一杯いるかと訊いてくれたので、おかわりを頼んでそれも飲み干してようやく干上がった体が生き返った心地がした。
「大丈夫か?」
「あー、ありがと。うん大丈夫」
「俺がやるから座ってて」
「え…。あ、」
飲み終えたグラスを洗おうと腰を上げると僕の手からグラスを取ったしょーちゃんが立ち上がり代わりに洗ってくれた。
仕方なく僕はもう一度ソファに座り直し背凭れに体を預けた。
お腹の前で手を組んで長く息を吐いた。
なんだかひどく疲れたような気がする。なんでだろ。何したっけ…。
ここに来て、しょーちゃんと一緒に部屋を掃除して、それから…。
それから何かしたっけ?
頭の中に靄がかかったみたいに先が思い出せない。
洗い物を済ませたしょーちゃんが隣に戻って来たのでしょーちゃんに聞いてみた。
「あのさ、しょーちゃん、僕さ、ここに来てしょーちゃんと掃除したよねぇ?その後、どうしたっけ。何したんだろう」
一瞬。
「覚えて…ないの?」
本当に一瞬だけ。
「あ…、僕、なんかやっちゃった?なんかちょっと頭ボーっとして、て言うか、なんかよく思い出せなくて」
しょーちゃんがものすごく傷ついた表情をした、気がした。そしてホッとしたような表情にも見えた。
「あ…っ、ごっ、ごめん!ごめんねしょーちゃん。僕、なにかしちゃったんだよね。忘れちゃってごめんねっ」
顔の前で手を合わせて慌てて謝る。
「…いや?何もしてないよ?掃除して、一休みしてる間に疲れて寝ちゃっただけ。こっちこそ悪かったな、手伝わせて」
ぽん、と頭に手を置いて額を合わせてきた。
至近距離で見るしょーちゃんの顔はやっぱり綺麗で、誰よりもかっこいい。
「…あれ?しょーちゃん、目赤い…?」
「そう…?俺も雅紀につられてちょっと転寝しちゃったからかな?」
顔洗ってくるわ、と洗面所へ向かったしょーちゃんが戻って来たと思ったらそのまま寝室の方へ行ったので、僕もそこへ行くと着替えようとしているしょーちゃんの姿があって、丁度背中の両方の肩甲骨の辺りがくしゃくしゃになっていた。