うちの事務所と大野さんが正式に契約を結び、晴れて僕は大野さんのスタジオで撮影モデルとして大野さんに撮ってもらうことが出来るようになり、さっそく何度か撮影をしてもらった。

 

 

着々と開店準備が整い、いよいよ開店も間近となり関係各所へのお披露目をするタイミングが決まった。

 

 

約束通りそれよりも早く僕としょーちゃんを招待してくれて、しょーちゃんはワインを、僕はブリザーブドフラワーを持ってお祝いに行った。

 

 

 

 

 

お店の雰囲気は温かみのある柔らかい感じで、僕の中の大野さんのイメージと少し違っていたけれど、やっぱり大野さんらしい感じだった。

 

お店の名前が書かれたオシャレなプレートは綺麗な青色で、そこはすごく大野さんぽかった。

透明感のあるグラデーション。

 

キラキラと輝くウエディングアイテムを引き立たせるようにだけじゃなく、色んな用途で訪れることを考えられた優しい空間。

 

 

 

 

ここでの記念撮影はきっと想い出に残るだろう。

 

 

 

ここで写真を撮った人がいつか出逢って夫婦となり、親になり、最期の時を迎えるまで、家族の成長過程に寄り添うようなスタジオになりたいと大野さんは語った。

 

 

 

二宮さんが大野さんを見つめる姿は誇らし気だった。

 

 

 

この2人ならきっと叶えられるだろう。

 

 

 

僕達もいつか大野さんたちのように、堂々と胸を張れるような関係になれたらいいなと思った。

 

 

 

しょーちゃんの手が僕の指に触れ、握り返してそちらを向けばしょーちゃんは微笑んで頷き、僕と同じ想いなんだということが分かり嬉しかった。

 

 

 

 

 

後日行われたレセプションの際には、ホテルを円満退社したこともあって近隣のホテルや結婚式場など、新規の提携契約はスムーズに行われたと聞いた。

 

大野さんがフリーになったと言うこともあり、ブライダルフォト以外の依頼もあって初めの頃は二宮さんがスケジューリングに頭を抱えていたけれど、それもその内に落ち着いて事業は軌道に乗った。

 

僕も大野さんに撮影してもらうことで評判が上がり、以前より仕事が増え指名される機会も多くなった。

 

しょーちゃんは相変わらず多忙だったけど、それでも仕事をすることが楽しくて仕方ないようだった。

 

 

 

 

 

後になって思う。

 

 

 

 

 

この頃が僕にとって一番幸せな時期だったんだと。

 

 

 

 

 

この頃が一番しょーちゃんを近くに感じて、これから先、僕らはずっと一緒なんだと信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

だけど。

 

 

 

 

 

だけど、そうじゃなかった。

 

 

 

 

 

僕の行く先を照らし続けるはずだった光を、その輝きを、

 

 

 

 

 

僕は、

 

 

 

 

 

失ってしまった。