二宮さんと大野さんは、何のためにここに来たんだっけ?と危うく当初の目的を見失うところだった。

 

 

結局、各々が秘密を抱えながら事を進めようとしたことが今回の要因だと結論付けられた。

 

 

 

誰一人、私益のためではなく純粋に人を想う気持ちでしかなかった。

 

 

 

みんな、誰かの大事な人。ただその人を守りたかっただけ。誰かを傷つけたかったわけじゃない。

 

 

 

想いは人を守り、時に人を傷つけるものなんだと気づけたのは幸せなことなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「・・・櫻井、俺が相葉くんに黙ってろって言ったんだ。ごめん・・・」

「うん…。俺も、みんなに言えなくてごめん」

「相葉ちゃん、ニノから聞いたから。落ち着いたら事務所に連絡入れさせてもらうよ」

「分かりました。連絡待ってます」

 

 

今後、大野さんと二宮さんは有休を消化しながら引き継ぎ業務をこなし、頃合いを見て退職してそれと並行して開店準備にかかるのだと言う。

 

大野さんが新しい事務所を既に用意していると聞いたしょーちゃんは、かなりビックリしていた。

 

 

大野さんは最後まで、自分がどうして早期退職勧奨対象者であることを知っていたのか話すことはなかった。

 

きっとそうすることでリスクを冒して自分に情報を洩らしてくれた人を守るためなんだろう。

 

その人の名を明かされた場合のしょーちゃんの立場も考えてくれたに違いない。

 

 

 

ここで見送りはいいからと玄関で断りを入れた大野さんと二宮さんが並んで歩く背中を2人で見送った。

 

大野さんが二宮さんの腰に手を添えると一度は嫌がって離れたけれど、しばらく言い合ったあと大人しく互いの腰に手を添えて歩き出した。

 

時折大野さんの腰の辺りがキラリと輝いたのは、二宮さんの指を飾る指輪が廊下の外灯を反射していたから。

 

 

2人の姿が見えなくなるまで僕はそれを見ていた。

 

 

「雅紀、俺たちも入ろう」

「あ、うん」

 

 

一足先に家に戻るしょーちゃんに声を掛けられ後を追った。