二宮さんの綺麗な瞳がまっすぐ僕を見ている。

 

静かに僕の言葉を待ってくれている。

 

 

僕は太腿と、その上で親指以外をグッと握り込んだ拳に力を入れた。

 

 

「大変申し訳ないのですが、…お受けできません」

 

 

深々とその場で頭を下げた。

 

 

「………うん」

 

 

その声は存外優しかった。

 

僕の予想を遥かに上回る優しい、声。

 

 

ゆっくりと顔を上げて見た二宮さんの顔は、声と同じくらい優しい顔で、穏やかだった。

 

まるで、僕が断ることが分かっていたみたいに僕の答えを受け容れてくれた。

 

 

「い、いいんですか…?

 

 

返事を急かされないのをいいことに、保留にしたまま今まで連絡もせずにいたのに。

 

挙句、断って。

 

 

期待、させちゃったんじゃないかって、ずっと悩んでた。

 

 

「はははっ。いいか悪いかで言ったら良くはないよねえ。でもそれが相葉くんの出した答なんだから、こっちは受け入れるしかないじゃない」

 

 

二宮さんは乾いた笑い声をあげた。

 

そして、テーブルに片肘をついてコテンと顔を傾け左頬を拳に乗せた。

 

 

 

 

向こうにいる間中、ずっと考えてた。

 

 

他になにか方法はないかって。

 

 

大野さんの独立を止める方法はないか。大野さんがしたいことを出来るようになる方法はないか。

 

 

何よりしょーちゃんを悲しませないようにするのはどうしたらいいのか。

 

 

 

だけど、撮られている間、僕はずっと大野さんのことを考えていた。