今後の全体スケジュールを確認した後は各チームでミーティングとなり、俺たちも再び自室に戻ることになった。

 

そんな中『相葉雅紀』だけが半べそ顔で、社長に連行されていった。

 

重要なセリフを任されたあいつは、社長直々に個人練習をしてもらえるらしい。

 

 

先に部屋に戻った俺たちは各自で資料を読んだり、ゲームをしたり、絵を描いたりして過ごしていた。

 

俺は、休み明けの試験に備えた勉強で空き時間を過ごしていた。

セットしていたタイマーが鳴ったことで一息ついて三人がいる隣の続き部屋を覗いた。

 

ベッドの上にうつ伏せで寝そべりながらゲームをするカズの背中に、横向きになって頭を乗せた潤が一緒にゲーム画面を見ている。

 

智くんは、床に直座りしてベッドを背に唇を尖らせながら漫画を読んでいる。

 

まだ『相葉雅紀』は部屋の姿はなかった。

 

 

「あれ・・・?相葉は?」

 

「あれからまだ帰ってきてないよー」

 

 

俺の問いかけに、カズがゲームから目を離さず答える。

 

 

「なに?まーになんか用事?」

 

「違ぇよ。いねぇから聞いただけ」

 

 

潤と言葉を交わした後、また部屋に戻った。

 

次の勉強をしようとペンケースに手を入れたら、あるはずのものがないことに気づき、そう言えばさっきの全体ミーティングの時に出しっぱなしだったことを思い出し、部屋を出た。

 

 

 

廊下を進むうちにどこかから複数の人の話し声が聞こえてきて、スタッフの誰かだと思っていたら、聞き覚えのある声だった。

 

 

 

 

 

今の…、『相葉雅紀』の声じゃね?

 

 

少し鼻にかかった甘い声は特徴があるから、恐らく聞き間違いということはない。

 

 

なんだよ、あいつ。もう練習終わってんじゃん。さっさと帰ってくりゃいいのに。

 

 

極力表に出ないように言われているのに、さすが滝沢のお気に入りともなるとやりたい放題が身に染みついてんだな、などと心の中で毒づきながらミーティングルームの方に向かう。

 

 

「・・・あの、っ。だ、大丈夫ですから。ぼ、ぼく一人で部屋に戻れますか

ら・・・っ」

 

「でも今、曲がる場所間違ってたよ?ほら、俺が部屋まで案内するから」

 

「~~~~~~~~っ」

 

 

チラッと見えた姿はスタッフらしき大人に手首掴まれてっけど、嫌がってる・・・よな?

 

人気のないところで何やってんだか。

 

 

このまま十字路の廊下を真っすぐ行けばミーティングルーム、左側に行けば困ってるらしい『相葉雅紀』。

 

 

 

 

 

女じゃねんだから、自分で何とか出来るだろ。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

そのまま直進して、数歩先で足を止めた。

 

 

「・・・あ~~~っ!!もうっ。」