「しょーちゃんて、マジメだよねぇ」

 

「…は?」

 

「マジメにふざけるよね」

 

「…褒められてる気がしないんだけど」

 

「褒めてるよ?」

 

「そうなの?」

 

 

複雑だわ~、てビミョーな顔してしょーちゃんは部屋を縦断していった。

 

俺が畳んだバスタオルを持って。

 

 

 

 

しょーちゃんは、何事にもマジメという印象が強い。

 

それはたぶん誰に聞いても同じだと思う。

 

5分、10分前行動は当たり前だし、礼節を欠く人間は嫌いだと公言するし、

感情を公私混同することもないし、仕事中は割り切ってるし、準備に余念はないし、何をするにしても俺みたいに行き当たりばったりなんてことはあり得ない。

本人曰く、下地がないと不安でしょうがないらしいけど。

 

 

しょーちゃんのイメージは几帳面とか、キツそうとか言われるけど、

実際は結構おっちょこちょいだったり、可愛いところだってたくさんある。

 

書類なんかはファイルごとにきっちり分けてあるし、

台本もしっかり書き込んであるけど、

分けたファイルの山が雪崩起こしたり、台本に書き込みすぎて時々自分で見ても何書いてるか分かんなくなっちゃったりもする。

 

そういう時、困ったように眉を下げて笑う顔はチョー可愛い。

 

 

キツそうに思われるのにも理由はあって、

真剣に仕事に取り組まない人に注意したり、

言動に難ありの人を窘めたりする部分ばかりがクローズアップされてるせいだし。

 

そういうとこばっかり見せるから誤解されるんだと思う。

 

しょーちゃんが言ってることは正しいのにね。

 

 

 

実際のしょーちゃんは、優等生な部分だけじゃなくてこないだは一緒に歩いてたらなぜか突然側溝に落ちてたし、

 

 

「あーーーーーーーっ」

 

 

ああ、ほら今も何もないところでつんのめってバスタオルぶちまけた。

 

情けない声で俺を呼んでる。

 

 

「ま″さ″き″ー」

 

 

あー、ハイハイ。

 

まったくしょーちゃんは世話がやけるなあ。

 

こういうところが可愛くてたまんない。

 

ギャップ萌えってやつ?

 

歩くだけで段差のないところでつまづくって、どんだけ足上がってないんだよ。

 

疲れてんのかな?

 

後でマッサージしたげよ。

 

 

綺麗に畳み直したバスタオルを、二人で半分ずつ持って一緒に片付ける。

 

ふかふかのタオルに顔を埋めて微笑んでるしょーちゃんが天使に見えた。

 

 

「しょーちゃん、マッサージしたげよっか」

 

「ふぇ?なに?いいよ、別に」

 

「なんで、遠慮しなくていいから」

 

「いや、遠慮じゃなくて、ホントに…って、オイ」

 

 

ぐだぐだうるさいから、無理矢理手を取ってリビングのフローリングに寝そべらせた。

 

 

「うおっ、ちょ、雅紀。ホントにいいって…、いっ…!痛ぇ!!雅紀、痛いからっ!」

 

 

しょーちゃんは痛がりだから、俺がちょっと力を入れるだけで大げさなんだよね。

 

そんなに力入れてないんだから痛いわけないんだって。

 

 

「ま、まさきぃ~。やるならもうちょっと優しいのがイイ…」

 

 

上目遣いの涙目で俺を見るしょーちゃんはズルい。

 

 

「ハイハイ。…これでいいでしょ」

 

 

ほぼ力の入ってない肘で腰のあたりをぐりぐりすると、うっとりしながら目を瞑った。

 

 

「はぁぁぁ~。気持ちい…」

 

 

完全に脱力してぐで~ん、と体を伸ばしてるしょーちゃん。

 

 

ドラマに歌番組の生放送に、24時間テレビにとまだまだ多忙なしょーちゃん。

 

死にものぐるいでやっても実際死にゃしねーとか言ってんだろうけど、俺と家にいる時ぐらいはありのままのしょーちゃんでいていいんだよ。

 

エルサだって歌ってたでしょ。

ありのままって。

 

 

他人に厳しくて、それ以上に自分に厳しいしょーちゃんも、

どんくさいしょーちゃんも、

全部しょーちゃんだから、まるごと俺はすきだよ。

 

 

「…ありがと」

 

 

俺の心の声に答えるみたいなタイミングの良さでふんわりと笑ったしょーちゃんが半身を起こして綿菓子みたいなキスをくれた。

 

 

知ってる?

しょーちゃんの飾らないその笑顔が俺には一番のご褒美なんだよ。

 

 

 

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