『朱理ー。お父さーんは?ほら、この向こうにお父さんいるよ?』

 

『おとぉしゃー』

 

 

小さな画面の向こうで雅紀に促されて、我が愛息が俺に向かって満面の笑みを向けて、手を振ってくれている。

 

一歳を迎えた朱理は、言葉を覚える時期に入ったのか、爆発的に単語を習得し始めている。

 

記念すべき最初の一語は、『とーしゃん(父さん)』だった。

 

初めて俺の事を呼んでくれた時のことは、今でも忘れられない。

動画で残しておきたかったのだが、残念なことにそれは不意に呼ばれたので記録として残すことが出来なかったのは一生の不覚だが、俺の脳内にはしっかり記憶された。

 

 

携帯電話越しの相好が崩れ切った俺の顔を見たニノが、ものすごい胡散臭そうな顔をしている。

 

 

「翔くん、顔えらいことになってる」

 

 

ニノの隣にいる智くんも若干引き気味だ。

 

 

「え?」

 

「どうせ相葉さんか、朱理絡みなんでしょ」

 

 

至って冷静にニノがそう分析するけど。

 

 

「いやぁ、だって、これは、ねえ?」

 

 

にやけるなと言う方が無理ってものじゃないか?

 

そう言って二人に画面を見せて、動画をタップして今まで俺が見ていたのと同じものを再生してみせる。

 

 

「わ~、朱理だ。しばらく見ないうちにでかくなったなー」

 

「これは、翔ちゃんの顔も崩れるわ」

 

「翔さん、俺、これ生で見たい」

 
 
鶴の一声で、この後の予定が決まったも同然だった。