かくん。
一瞬。
そう、ほんの一瞬だけ、視界がズレたのが分かった。
次の瞬間、下半身に力が入らなくなってその場にへたり込んだ。
「………」
新しいCM撮影での中での出来事。
ジャンプでトロッコに飛び乗った瞬間、着地する時にしくじった。
「にの、どうした?」
「ニノっ!?」
「すいません、とめてください」
「ニノ、立てるか?」
最悪だ。
フォーメーションで一番遠いところにいた翔さんがすぐに声をかけてくれて、
右隣にいた相葉さんは驚いた顔をしていて。
俺と相葉さんの前にいたJが指示を出して、翔さんの隣にいた大野さんが近くに来てくれて手を差し出してくれる。
最悪だ。
よりによって、このタイミング。
「や、何もな…」
へらへら笑いながら、立ち上がろうとしたら、右腕をものすごい力で掴まれて無理矢理立たされた。
そっちの方向を見たらものすごい形相の相葉さんがいる。
「あ、相葉さ…」
痛いから離して。とは言わせてもらえない雰囲気。
「いつから?」
「…………」
いつもは柔和な相葉さんの目が細く鋭く光る。
「いつから!?」
「…………」
言いたくなくて、ぷいっとそっぽを向いたら、どんどん語気が荒くなってく。
「いつから痛むんだって聞いてんだろっ!?ちゃんと答えろよっ!!」
怒鳴られた。
「…一週間前」
「聞こえない!!」
「一週間前」
「え…っ」
翔さんが息を呑んだ。
「すいません、30分時間ください」
Jがスタッフに声を掛けて、休憩をとった。
大野さんは腕を組んで事の成り行きを見守ってる。
「とりあえず、控室行こう。相葉くん、にの連れて来れる?」
「うん」
「え、ちょ、や、待っ…」
翔さんの提案に、相葉さんが相槌を打って俺を抱きあげた。
文句を言おうとする俺を目で制するので、言葉は途中で飲み込まれた。
「俺、先行ってドクター呼んでくる」
Jが別室で待機しているドクターを迎えに先に走り去った。
大野さんは無言で最後尾を着いてくる。
廊下を移動している間は誰一人として口を開かなくて、ものすごい気まずかった。
控室につくと、先に到着していたJとドクターが衝立やら何やらを準備していて、
衝立の向こうに設置されたソファーにそっと降ろされた。