今日は久々の一日オフで、朝から晴天に恵まれて、大量の洗濯物を干した。
布団も干して、シーツやカバーなんかの大物も干したりして、気持ちが良い。
掃除も済ませて、まったりコーヒーブレイクなんかもしちゃったりして、
かなり満喫してる。
翔ちゃんは朝から仕事でいなくて、帰宅は夕方になるって言ってたし。

あー、すごい解放感。

なんなんだろうね、この解放感は。
時間に縛られることもなく、自分のペースで過ごせる日ってたまには必要だよね。

さっきお昼も適当に済ませて、リビングのラグに寝転がってゴロゴロしてる。
カーテン越しのベランダから聞こえるのは、色んな人たちがここに生活していることを示す
様々な生活音。

車の走行音。誰かの話し声。自転車のベルの音。子供の笑い声。鳥の鳴き声。

どれも心地よく耳に響いてくる。
時折柔らかい風がレースのカーテンを揺らして、体をぽかぽかと暖かな陽射しが包む。

あー、気持ち良い・・・。

翔ちゃんが時々、こんな風にリビングに転がってることがあるけど、翔ちゃんも感じてたのかな。
掃除したい時とかにやられると邪魔だなぁなんて思ってたんだけど、今ならちょっと気持ちがわかるかも。
何気ないことなんだけど、チョーしあわせって思う。

背中があったかくなってきて、だんだん瞼が重くなって、そのうち視界がブラックアウト。





「・・・さき。・・・ま、さ・・・。まさきー」


ゆさゆさと身体を揺さぶられる感触で、うっすらと目を開けるとまだ仕事中のはずの翔ちゃんがなんか言っている。


「おーい、このまま寝ると風邪ひくぞー。まさきー。おーい」







・・・んあ?翔ちゃん?なんで、翔ちゃんの声がするんだろ。まだ帰って来る時間じゃないはずだよね。
夢見てんのかなぁ?

・・・夢?

ゆめ?ってユメ!?
え!?なんで夢見てんの!?寝ちゃった!?


慌てて起き上がると、やっぱり翔ちゃんはそこにいて、寝起きの頭はなかなか働いてくれなくて、口をついて出たのは。


「いま、何時!?」


昼なのか、もう夜なのか、瞬間的に時間の感覚が分からなくなる。
外はまだ明るいから、夜ってことはないと思うんだけど。


「今は14時過ぎですけど?」


翔ちゃんはクスクス笑いながら、寝ぼけてるだろ、って乱れた髪を直してくれた。

良かった。寝落ちてから30分ぐらいしか経ってない。
日が暮れてたらどうしようかと思った。だって、せっかく干したシーツがふかふかじゃなくなっちゃうから。
とりあえず、起き上がって壁に寄りかかって座り、頭の中を整理する。






「随分、気持ちよさそうに眠ってたみたいだけど?」


ミネラルウォーターを入れたグラスを手渡されて、ありがと、って言って受け取って喉を潤す。


「あー、なんかね。気持ちよくってついついうたた寝しちゃったみたい。ここ、特等席だね」

「だろ?俺がよくここに転がる理由わかった?」

「うん」


なんか、しあわせな気持ちになったよ、って言うと、わかるわー。って同意してくれた。

翔ちゃんは思いのほか仕事が早く終わったらしく、今日はもうあがりなんだって教えてくれた。
じゃあ、この場所は翔ちゃんに返さなきゃね。
そう思って、立ち上がろうとしたら翔ちゃんに腕を引っ張られて、再びラグの上にコロンと転がった。
受け止めてくれた翔ちゃんの腕の中に抱きしめられて、お互い向かい合って顔を合わす。


「くふふ。しあわせだねぇ、翔ちゃん」

「しあわせだね、雅紀くん」


自然とおでこをくっつけて、次に鼻先をくっつけて、最後は唇が重なって。


何てことはない、日常の一コマだけど、こんな風にしあわせを感じられるのってとてもしあわせなことだと思う。

また明日から頑張ろうって思えるから。

腕枕をしてくれてる翔ちゃんは早くも夢の世界にお出かけしちゃったみたいで、穏やかな寝息が聞こえてくる。

翔ちゃんの背中に腕を回して、少し力を入れると眠っているはずの翔ちゃんからもぎゅっと抱き返される。

日が暮れる前には布団取り込まなきゃな、なんて思いつつもあたたかくて癒されるこの空間をもう少しだけ味わわせてもらおうと、再び目を閉じた。