弟は野球少年でした。
中学でも高校でも野球部、高校では仲間の推薦で部長になりました。
わたしの主観ですが、母は昔から弟への愛情がすごく、明るく活発な弟を可愛がりました。
野球の試合も欠かさず応援へ行きます。
弟が高校2年、夏の最後の大会のことです。
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わたしは大学生になり、家を出て一人暮らしを満喫していました。
その頃の実家のことはほとんど気にもせず過ごしていました。
-----------------弟は部長でしたが、その推薦は人柄によるもの。
つまり、レギュラーではなかった、ということです。
そしてそれは、自分の力でチームに点を入れることはできないことを意味していました。
夏の大会が終われば野球部生活も終わってしまう。弟は仲間を信じて自分にできることを精一杯やるしかない…そんな思いだったのではないのでしょうか。
そして、いよいよ試合の日が近づくころ。
祖母、母、弟で夕食を囲んでいました。
母「次の試合〇〇高校かー。さすがに〇〇高校は厳しいかもね。」
この母の何気ない一言。
でも、とてつもなく無神経な一言。
弟はブチギレました。
弟「ふざけんな!もう試合に来るな!!!」
そのまま2階の自分の部屋へ行ったそうです。
当然です。
これまで頑張ってきた仲間を侮辱されたように感じる一言。
母は、その後どうしたのか…
弟の部屋へ行き、土下座して謝ったそうです。
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わたしはこの話を聞いた時、母の無神経さに怒りが湧きました。
しかし、同時に弟が少し羨ましくもありました。
それは、
怒りをぶつけて表現できた羨ましさ
母に謝ってもらった羨ましさ
なのだと思います。
わたしも母にそうやって感情をぶつけてみたかった。
母が間違ったときに謝ってもらいたかった。
そんなことをふと思い出した一日でした。