あの別れから帰ってきた理佐は、

まるで影が抜け落ちたみたいに真っ白な顔で部屋に入った。





扉を閉めたあと、

理佐はベットの端に座ったまま動けなくなる。





__嫌いなんて......嘘に決まってる......

だって、泣いてた.......由依.......





思い出すたび胸が裂ける。

涙は止まらない。

何度拭いても、すぐ頬を伝って落ちてくる。





時間の感覚が消えて、

気づけば夜になっていた。





ノックの音がした。





「理佐、夕食よ。......入るわね?」





返事をしないのに、扉がゆっくり開く。

心配そうな母親の顔が覗いた。





「......どうしたのその顔。泣いて......」





理佐は枕にまたれたまま、俯いて声を出せない。





数秒の沈黙の後、母が言った。





「......由依さんと別れたの?」





その瞬間、理佐の目が大きく開く。





____どうして知ってるの?





胸の奥がざわっとした。





「.......なんで、そのこと.....知ってるの?」





声はかすれていたが、明らかに怯えと困惑が混じっていた。





母は動揺したように視線をそらす。





「そ、それは.......あなたの様子を見れば、わかるわよ。」





理佐はベットの上で身体を起こし、

涙の跡が残るまま母を見つめる。





「様子でわかるレベルじゃないでしょ.......

まるで......最初から知ってたみたいに......

聞くじゃん.......」





母の肩が一瞬、強張った。





その反応を見て、理佐の胸の奥で何かが嫌な形を成し始める。





「.......ねぇ。

本当に.......どうして知ってるの?」





わずかに掠れた声。

でも言葉の奥には確かな疑念があった。





母の答えは、少しの間を置いてからだった。





「.......理佐、落ち着きなさい」





誤魔化すように微笑む。

その嘘くさい優しさが、逆に理佐の胸に冷たいものを流し込んだ。





__お母さん......何を知ってるの......?





そして理佐は、

部屋の中で初めて震えた声で、母に問いかける。





「.......ねぇ、言ってよ。

何か知ってるんでしょ?

私の知らないところで.......何があったの?」





母は返事をしない。





その沈黙が、由依の涙とつながり始めるのが、理佐にははっきりわかった。


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