家に着いて

ともすればボーっとしてしまいそうな自分を
叱咤激励し荷物をほどく

スグに洗濯に取り掛かる

しばらく広島を思い出さない様に
社長クンを思い出さない様に
ひたすら片付けて旅行の事実を消したかった。
日常を取り戻そうとした

だけど荷物の中から
社長クンとの初めての
プリクラが出てきた時
どうしようもない寂しさと不安と喪失感に襲われたアタシは
その場に座り込んで
泣いた
大きな声をあげて
子供みたいに泣いた

淋しいよぉ
社長クンに会いたいよぉ

声に出して泣いた

あんな時間は
もう二度と訪れないって
わかってるのに…
泣いたって
どうしようもないって
わかってるのに…

その時 電話が鳴った

社長クンだった。。。

アタシは精一杯の明るい声で話した
広島空港で泣いたアタシをからかう社長クンにアタシは聞いた
『社長クンは泣かなかったぁ?淋しくならなかったぁ?得意げ
冗談めかして聞いたら
『帰りの車の中で泣いちゃったよ…』
と真剣な返事。

アタシは社長クンが恋しくて
社長クンから嬉しい言葉を
聞きたかったけど
結局 聞けたのは
『北海道に帰ったら美味しい物でも食べに行こうね』
という どの角度から見ても
『社交辞令』
なセリフ。。。

『何か』を期待してたアタシの完全ひとりよがりが決定…。。。
座席に着いて深呼吸。。。

飛行機が離陸の為の滑走を始めた

いよいよ思い出の広島とも お別れ…

もう泣きやまなきゃ
と思うのに
色んな事を思い出す

観光してたらテンション上がって子供みたく はしゃいでる社長クン

大好きなビールをもの凄く美味しそうに飲む社長クン

初めてのプリクラにハマって真剣に落書きする社長クン

カラオケで北島三郎 歌った後にEXILE歌っちゃう社長クン

運転が上手な社長クン

アタシに向ける優しい笑顔

仕事の話 する時の真剣な表情

数え切れないくらいのキスや繋いだ手の大きさ


アタシの頭ん中
社長クンでイッパイ

我慢できず
また泣いた

座った時から訝しげに
アタシを見てた隣の女性が
『あなた大丈夫?』

と優しく声を掛けてくれた

『すみませんあせる大丈夫です。。すみませぇんしょぼん

ハンカチで涙を拭い続ける動きと鼻をすする音が
さぞかしウザかったに違いない…

鼻をすするのも
泣きじゃっくりも
我慢していたが
涙だけは落ちる

…と その時

『あの~大丈夫ですか?もし良かったらコレ…』

通路を挟んで斜め左後ろから差し出された物は…

『クレヨンしんちゃん本

臼井先生が亡くなったから!?
追悼の意を込めて買ったんですか!?

なんだか余計に寂しくなりそうな気がしたので

お気持ちだけ いただく事にして丁重に断った。

現実逃避しようと

少し目を閉じる…

気がつくと着陸態勢に入っている所だった

千歳空港に着くなり
喫煙所に駆け込んで
手紙をチェック…

広島での思い出が
たくさん詰まった手紙
1通。。。

すぐに社長クンに電話をかけた
2時間前までは
目の前に居て
手を伸ばせば触れる事も出来たのに
今は『声』だけでしか
繋がれない。。。
この繋がりだって
あと何回 続くの…?

電車に乗り自宅のある駅で降りても
気持ちの切り替えが出来なくて
カフェに入った

このカフェは
広島に行く前
沢山のパンフレットや観光ガイドを持ち込んで
社長クンと電話しながら
アレコレ計画したりして
楽しい時間を過ごした
アタシの大切な場所
その場所から
社長クンに手紙を書いた


『沢山の楽しい時間をありがとう
シアワセな気持ちをイッパイありがとう
アタシは広島が大好きになりました
社長クンのコトも大好きになりました
広島で見た景色
手を繋いで歩いた道
一緒に食べたもの
ずっと忘れないよ

アタシと出会ってくれて
ありがとう』

まとまらなくて
3通になっちゃったケド…
そしてアタシは重たい荷物を引きずって家に向かった。
9時にホテルを出て

社長サンの運転で広島空港へ

帰りたくないな…

もっと 一緒に居たいな…

もう会えないね


社長サンの姿を

たくさん たくさん

目に焼き付けたいのに

目が合ったら

泣いちゃいそうで

アタシは助手席で外ばかり
見てた。

2人とも昨日までとは

うって変わって

口数 少なめ

小雨も降り出してきた。

広島に行く前

『やっぱ四国ドライブの時に聴く歌が必要だよねぇ音符

って話になったから

自分の好きな曲や

社長サンと聴きたい曲を集めて作ったCD

4日前に聴いた時は

楽しくて嬉しくて

CDと一緒に歌ってたのに

今は全部 悲しい歌に

聞こえるよ。。。

ふと気配を感じて横を見ると

社長サンが左手を出して

アタシを見てた

アタシは右手を重ね

指を絡めた

力強く握られた時

我慢してた涙が落ちた…

ウザがられちゃう
重たいって思われちゃう

そう思って また窓の外を見てた

『泣いてるの?』

『泣いてないよ』

『目から何か こぼれてるよ?』

『雨だよ』

『窓 閉めてるのに?』

そんな会話してる間に

空港に到着。

出発時刻まで少しだけ

余裕があったから

コーヒーを飲んだ。

何か話すと泣いちゃうから

顔を見たら泣いちゃうから

やっぱり外ばかり見てた


時間になったから

ゲートに並んだ

社長サンも手を繋いで

一緒に並んでる

『一緒に帰ろ?ニコニコ

精一杯 笑顔で話し掛ける
最後は笑顔で別れたい

笑ってるアタシを思い出してほしいから

『一緒に帰りたいニコニコ

笑顔で答える社長サン。

手荷物検査とボディチェックの順番が来た時

繋いでた2人の指が

離れた。。。

社長サンは列から離れた

ゲートに入る直前もう一度

社長サンを見たくて振り返ると誰かに手紙してる様子

ああ…忙しいんだね…
アタシが帰ったら次は誰との約束が待ってるの?

たまらなく悲しくなった

…とアタシの携帯手紙が。

『着いたら着信してニコニコ

社長サンからの手紙

ゲートをくぐってから後ろを見たけど搭乗者の列で社長サンの姿が見えない
背伸びしたりキョロキョロしてみても見付からない

帰っちゃったんだ…

『社長が見えないしょぼん

手紙を送ってみた

涙が次から次へと落ちてくる

歩き出そうとした時

ゲート横の大きなガラスに

くっついてアタシを見て笑ってる社長サンを発見

嬉しくて寂しくて泣きじゃくるアタシの顔は

もうメチャクチャだった。。。

口パクで
『早くビックリマーク乗り遅れるよ!!笑』
と言われ
泣きながら何度も頷き

もう一度 社長サンの目を見る
社長サンの姿をアタシの目にも焼き付ける

『…バイバイ』

手を振って歩き出した。

涙は止まらないまま。。。