『碧巌録』より 第六則 雲門十五日 / 雲門日日好日 (その4) | 作家の日記

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【句の跋】
若於此句透得、直得上下四維無有等匹。森羅万象、草芥人畜、著著全彰自己家風。所以道、 万象之中独露身、惟人自肯乃方親。 昔年謬向途中覓、今日看来火裏氷。

 

(中国語の発音・読み)
若 (ruò) 於 (yú) 此句 (cǐ jù) 透得 (tòu dé) 、直得 (zhí dé) 上下四維 (shàng xià sì wéi) 無 (wú) 有 (yǒu) 等匹 (děng pǐ) 。森羅万象 (sēn luó wà xiàng) 、草芥人畜 (cǎo jiè rén chù) 、著著 (zhe zhe) 全彰 (quán zhāng) 自己家風 (zì jǐ jiā fēng) 。所以 (suǒ yǐ) 道 (dào) 、 万象之中 (wà xiàng zhī zhōng) 独 (dú) 露身 (lù shēn) 、惟 (wéi) 人 (rén) 自肯 (zì kěn) 乃 (nǎi) 方 (fāng) 親 (qīn) 。 昔年 (xī nián) 謬向 (miù xiàng) 途中 (tú zhōng) 覓 (mì) 、今日 (jīn rì) 看来 (kàn lái) 火裏氷 (huǒ lǐ bīng) 。

 

(語釈)
・若(ruò)…もし~なら
・於(yú)…~において
・上下四維 (shàng xià sì wéi)…あらゆる邦楽
・等匹(děng pǐ)…匹敵するもの、等しいもの
・草芥人畜 (cǎo jiè rén chù)…生きとし生けるあらゆるもの
・著著(zhe zhe)…ひとつひとつ
・所以(suǒ yǐ)…そういうわけで
・道(dào)…いう
・謬向(miù xiàng)…あやまって~にむかう
・覓(mì)…求める
・看来(kàn lái)…みてみる

 

(訳)
もしこの句の意味に身をもって透徹できれば、この宇宙の中に並ぶものなく自己自身になれる。その時に、宇宙のあらゆる現象、生きとし生けるものが、その独自の存在をあらわにして自分の目の前に現れる。ゆえにこんなふうに古人は言っている。「現象世界のなかに真の世界が露わになる。これは自身が本当に納得して分かってこそ体感できること。私は昔、道の途中にその究極の姿を求めていた。今思えばそれは火の中に氷を探していたようなものだ」

 

(解説)
世界の中でモノ自体が本来を露わにしている。しかし、そこに親疎を立て分別するのが人間の認識。私たちの認識の閾値を低め低めて、モノ本来が露わになるようにしてやる。そこではモノがモノ本来の本然の姿で現れている。