今年の本屋大賞は『舟を編む』やったね。
うちも、この本いいと思うよ。
おもしろかったよ。
タイトルもめっちゃいいし、
言葉が大事にされていて
読んでいると、言葉は明日を照らす光だなぁって思えてくる。
そういうところが好き。
ちょっとクセのある登場人物たちも
好感が持てて、がんばれ!って応援したくなる。
作者の三浦しをんさんは、読者をそういう気持ちにさせて
物語に引き込むのがうまいなぁと思う。
そうですか。『舟を編む』が本屋大賞か。
ノミネート作品を全部読んでへんのに
こんなん言うのもなんやけど
もしも私が書店員なら
大島真寿美さんの『ピエタ』を推したかった。
まぁ、単純に
今の私の気分が
日本の現在の話より(『舟を編む』)
外国の18世紀の話(『ピエタ』)だったのかもしれないけど。
なんか異国のね、
ロマンチックなね、
雰囲気に浸りたいときってあるやんか。
その点、『ピエタ』は素晴らしかった。
これでもかって言うくらい
物語要素が詰まっていて
私を遠い遠いところに連れて行ってくれた。
捨て子
ヴェネツィア
貴族
カーニバル
仮面
高級娼婦
ゴンドラ
海を渡る棺
楽譜の行方
ですよ!奥さん!
ここに挙げただけでも
物語の匂いがぷんぷんするやんね。
カーニバルのときって
だいたい仮面をつけんねんて。
顔もわからない、名前も名乗らない、
男と女に芽生える愛って
もう!なんやの。
外国や。異国じゃ。異国じゃ。
それに要所要所
移動がゴンドラなんです。
ゴンドリエーレっていう漕ぎ手がいて
ゴンドラに乗って
川を行くんです。
はぁ。ほんと、なんかその場面を想像するだけで
うっとりしちゃうなぁ。
中でも一番、私が
うわって思ったのは
ゴンドラに棺をのせて
墓地のある島まで
海を渡るところ。
なんていうか、圧巻やね。
一冊の本の中に
カーニバルがあって、葬送があって
どちらもゴンドラにのせられてるわけです。
カーニバルも葬儀も生も死も
同じ熱量で
一冊の本の中に溶け込んでいる。
ほんと、良かった。
そして、これだけ色々な要素を繋ぎ止めているのが
楽譜の行方っていう縦糸で
『ピエタ』には、その謎を主人公と一緒に追っていく楽しみもある。
大島真寿美さんの本を読んだのは初めてだったのだけど
物語の進め方のスピードが新鮮だった。
ときどき、不意を突くように
ぱっと場面が変わるところがあって
その、自分の感覚との違和感みたいなのも
おもしろく思えたよ。