※ネタバレあり

2024年8月11日(日)


舞鶴市総合文化センターにて


朗読劇READINGWORLDユネスコ世界記憶遺産

舞鶴への生還「約束の果て」という朗読劇を鑑賞しました


鑑賞の動機は、私の推しである佐久間大介が出演するからというものでしたが


それだけではなく、それを抜きにしても素晴らしい舞台でなんなら人生で最大の感動をしたのではないかと思って今、舞鶴市内のホテルにてレポートを書いています



お話の主軸は、第二次世界大戦終結後にシベリア抑留を余儀なくされた日本兵たちのお話です


出演は


緑川光さん(大森中尉役)

佐久間大介さん(島津秀雄.島津和彦二役)

岡本信彦さん(竹本役)※10日公演は下野紘さん

井上麻里奈さん(大森の妻シズコ役)

佐倉綾音さん(ナレーション)

岸尾だいすけさん(沢村役)


(すみません女性の出演者の方にあまり詳しくなく事前の配役発表もなかったので間違えていたらごめんなさい)


お芝居は、基本的に大森、島津秀雄、竹本の3人が中心になり進みます。この3人がマイクの前に立ったり座ったり、立ち位置を変えたりしてマイクの前から動いて芝居はしません。


他のたくさんの役者の方が動きの大半を担い、セリフのある人がその都度マイク前に立ちます。


衣装は全員が黒でそれぞれシルエットやテイストは違いますが軍服など場面に合わせた衣装はありません。


場面は、大森たち日本兵が列車に揺られるところから始まります。


戦争が終わり、ソ連から日本に帰るためです。


長く辛い旅の中で、厳格な大森の心を癒すのはこんな時でも明るく元気に話しかける島津の存在。しかしそんな島津に竹本は「減らず口をたたいていると敵にスパイだと思われる。まわりに迷惑をかけるのだ」と厳しく叱ります。


竹本は、日本が負けたのは情報操作であり嘘だと信じていました。


やがて、大森も気が付きます。

この列車は、日本への船が出るナホトカの港とは反対方向に向かっているのではないかと。


やがて列車から海が見え日本に向かう船に乗れるのだと騒ぐ日本兵たちに竹本は言います。


「あれが海に見えるのか」


日本兵たちが海だと思ってみていたのはバイカル湖、そこはシベリアでした。


列車をおろされた日本兵。


ラーゲリと呼ばれる収容所までの厳しい道のりに倒れる仲間たち。


しかし、倒れて死んでも埋葬されることもなくそこに置いていくしかないのです。


なぜなら、余計なことをすれば殺されるからです。


そしてその異様な状況に日本兵がひとり、ソ連軍の兵士に立ち向かおうとします。


そして銃声。


この朗読劇において、私が素晴らしいと感じたのはライティングです。


例えばこの日本兵が撃たれるシーン。


血は吹き出しません。


ただ、真っ赤な照明が当たって血が吹きでたように見せています。


それで彼は銃が当たって血まみれで死んだのだとわかります。


お話の内容については詳しくはここまでにしますが、このライティングは他にも、海や陽の光を表現したり、さきほど言ったように血に染まる場面は赤い照明があたりますが、亡くなった人には照明が消されて真っ暗になります。


舞台上にはいますが、照明に照らされなくなったことで死んだのだとわかります。


強制労働下でも変わらず明るく振る舞う島津や、芯の強い大森に感化され、竹本は変わっていきます。


しかし、やがて起こる悲劇。


観客は中盤から泣きっぱなしです。


正直に申し上げると、ストーリー自体はそこそこ予測がつくと言いますか…定番だなという感じ。


でも、そのお話を声の演技だけで観客を泣かせるのだから、どの役者さんも凄いと感じました。


自分の推しですから、そりゃ多少は贔屓目もあるかもしれませんが、声のプロの中で全く違和感がなく、たぶん私の記憶を消して見たら普通に若手の声優さんだと思っちゃうんじゃないかな


少年のような可愛い声ってアニメだと女性がやることが多いけど、佐久間さんはその声が出せる人で、尚且つ影を背負わせることが出来ると思いました。


パンフレットのインタビューで佐久間さんが「島津のような明るいキャラクターの中にある影をさがした」と言っています。


島津は、愛する家族を心配する気持ちを隠している。


それが島津の影だ。


自分も明るい性格ではあるけれどそれは後天性の性格で、どこかに影はあるんですと。


だからその少年のような無垢な声の中に、その影は確かに存在したと思います。


一番、お上手だなと思ったのは大森や竹本と離れたくないのだと言う場面です。


可愛らしいお願いだけど、彼の演技は迫り来る自分の運命を察していました。


「行きたくないのです」


このセリフで涙腺が決壊した人も多いのではないですか?


そして島津は大森と竹本を「家族」に見立てます。


その「行きたくないのです」には「家族ともう二度と離れたくない」という気持ちがこめられていたのではないでしょうか。


そしてその後、話は戦後となります。


緑川さんや岡本さんが年老いた演技をする一方、佐久間さんは島津秀雄の甥の和彦を演じます。


顔は秀雄にそっくりという和彦ですが、ここでも明るい人物ではありますが秀雄とは少し性格が違うと感じました。


秀雄はその明るさゆえに「出来損ない」と言われていましたが、きっと和彦はしっかりとした子だと思われます。秀雄の面影を残しつつ、別人でした。


例えるなら


秀雄は自分から走っていって抱きつくタイプ、和彦は抱きしめて貰うのを待つタイプでしょうか。


観客は、これまでずっと秀雄に泣かされ続け、最後には和彦と竹本にまた泣かされます。


そして「約束の果て」というタイトル。


そのタイトルの意味のほとんどを担う役柄を佐久間さんは演じました。


最高です。


そして私はあまり声優さんには詳しくないのですが、竹本役の岡本信彦さん、素敵でした。


可愛らしい印象の方でしたが、とても凛々しくてカッコよかったです。


語りたいことはまだまだありますが


とりあえずこの辺にしておきます笑


円盤化の噂も耳にしましたし、その時はその目でぜひ確かめていただきたいです。


そして、昨今は戦争教育もこどもたちにショッキングな映像を見せたり出来ないそうです。私の時代はかなりそれでトラウマになったので、その理由もよくわかります。


だったら


こういう朗読劇はどうでしょうか。


ショッキングな映像を目にすることはありませんし、それでいて戦争の悲惨さを伝えること、想像力を働かせることも出来ますし、良い教材になると思います。


教育関係者のみなさん、是非お願いします。


それでは、ご清聴ありがとうございました🙏








ありがとう舞鶴市


ありがとう肉じゃがコロッケ


ありがとう友人たち