理仁がそれに気づいたのは、柚月の部屋に住み始めて1ヶ月ほど経った頃だ。


いや、初めからそうだったのかもしれないが、初めは自分が記憶を失ってしまったことへのショックが大きく、それどころではなかったのかもしれない。


正直、柚月について来たのは正解だったのかどうかはわからない。


いなくなった恋人の名前を与えられた時は、気持ちが悪いとすら思った。


けれど、理仁が誰ひとりとして知っている人間の存在しないこの世界で、自分に興味を向けて、その存在を必要としてくれているのは今は彼ひとりだけなのだ。


身を寄せる場所が出来ただけではなく、自分の存在が必要だと感じられることに安心した。


どうせ自分は何も持っていないのだから、嫌になれば逃げ出せばいい。


そう思って暮らしていたけれど、誰かの身代わりであるとはいえ元恋人の名前を呼び、日々その愛情を注いでくれる柚月との生活はとても居心地が良かった。


すっかり、ここで暮らすことに安心を得た頃だ。


夜中、理仁が目を覚ますと背中にザワザワとした気配を感じた。


そう、まるで強い風に木々が揺すられるような感覚が理仁の背中を撫でた。


理仁の背中側には柚月が眠っているはずだ。


けれど、柚月が理仁に触れる感触とは全く違う。


理仁は気味が悪くてもう一度目を瞑って眠ろうとしたけれど、柚月のことが心配になり、恐る恐る寝返りを打ってみた。


すると、その途端にザワザワとした気配はなくなった。


す……っと何かに吸い込まれたかのように。


だから、理仁は夢だと思うことにした。


夢うつつで目覚めて、夢と現実の境界線がわからなくなっていたのだろう。


目の前には、柚月が理仁のほうへ顔を向けていつものように少し口を開けながら眠っている。


けれど、その現象はその日から何度も現れた。


夜中に理由なく目覚めてしまう時は、たいていそうだ。


だから、理仁は目を開けた瞬間に「またか」と諦めて背中を這うザワザワとした気配に耐える。けれど、そのまま耐えていてもその気配は消えてくれない。


意を決して振り返り、柚月の寝顔を確認するまではその気配はずっと理仁の背中を撫で回し続ける。生温い手に触られているような気もするし、動物に擦り寄られているようにも思える。


そしてそれは、柚月の寝顔が目に入ると共にすっ…と消える。


当の柚月はなにも感じていないようだ。


なんだろう


なんだろうと思いつつも、なにもわかっていない柚月を無駄に怖がらせるのも気が引けるし、ただ少し気持ちが悪いくらいで特に害もない。


だからきっと、自身の日々の不安が見せている夢か幻覚のようなものだと思うことにした。


でも、今になってそれを柚月に話そうと思ったのには理由があった。


そのザワザワとした気配が、数日前からついに形を持ったのだ。


形…と言っても実体は感じられない。


黒いもや、すすの塊のようなもの。


それがザワザワと風に揺れるように形を変えながら、柚月の肩から腰のあたりにまとわりついている。


そして、それはいつものように理仁が柚月の寝顔を確認するとすぅっ…と天井に向かって渦を巻くよう上って消えた。


昨日にいたっては、ぼんやりと人の形を成しているようにさえ見えた。


人の四肢が、柚月の背中にしがみつくように見えた。


「…ええ…なんだよそれ」


理仁の話を聞いて、柚月の首筋に鳥肌がたった。


その時だ。


部屋の電気が突然消えた。


思わず柚月は「うわ!」と声を上げた。


「停電だ」


理仁は冷静に携帯の電気をつけて、柚月を照らす。


「…タイミング最悪じゃんか」


「良かったね、お風呂もごはんも済んでて」


「まあな…」


柚月は携帯のライトを片手に隣の寝室へ行って、ベッドにあった充電式のルームライトを手にして戻った。


「お前があんな話するから怖かったよ」


「柚月はほんとに何も気づいてないんだね」


「当たり前だよ。そんなの知ってたら怖くて寝てられない」


理仁はそれを聞いて笑いながら、テーブルを片付け始めた。


「どうせお湯も出ないし…洗うの明日にするね」


「明日、俺が休みだからやるよ 」


「ありがと」


「それより、今日またそんなことあったら起こしてよ」


「起こして欲しい?」


「だって気持ち悪いだろ何も知らないのも」


その夜、停電はなかなか復旧しなかった。


かなり広範囲で停電しているらしく、まだ時間がかかるようだ。


「あ、忘れてた」


柚月はリビングの大きな掃き出し窓から、外用のサンダルを履いて外に出た。


柚月の部屋はマンションの1階で、窓の外にはごく小さな庭のようなものがあり、それを囲って部屋を目隠しするくらいの高さのコンクリート製の塀がある。


足場さえあれば、外の道路から入ってこれるので防犯上は良くないが、その分家賃が安いし、なにせ男のひらしだからおかしな人間も入ってこないだろうと、柚月はその庭を気に入って長くここに住んでいる。


コンクリートの地面よりも土の方が夏は涼しいし、冬は暖かい。根拠は無いが柚月はそう思っている。


天気の良い日は洗濯物もそこに干しているので、柚月は洗濯物を干している竿が風で落ちないように、ビニール紐でしっかりと結んだ。


「冷蔵庫のもの傷まないかな」理仁は部屋の中からその背中に話しかける。


「まぁ、仕方ないよ。早く直ってくれればいいけどな」


「手、洗ってね」


「わかってるって」


そして、ふたりはその日は早々に寝ることにした。


どうせテレビも見られないし、パソコンや携帯も充電が気になる。


けれど、エアコンもつかない部屋はやや蒸し暑く、仕事で疲れていたのかすぐに寝息を立て始めた柚月に対して、理仁はなかなか眠りつけずにいた。


そんな時は、ついいらないことを考えてしまう。


思い出せないのだから仕方ないのに、自分は何者なのだろうとか、どうして記憶を失くしたのだろうかとか、仕事はなにをしていたんだろうとか、恋人はいたのかとか。


親や友人がいたとしたら、いなくなった自分のことを探しているのだろうかとか。


それとも


いなくなって良かったと思っているんじゃないだろうかとか。


夜中の考え事は、どんどん悪い方向へ導かれていってしまうものだ。


せめて、名前だけでも思い出せないものだろうか。


そうやって不安ばかりが募って、つい目の奥が熱くなって、それを誤魔化すようにゴソゴソと何度も寝返りを打ってみる。


「理仁。寝れないの?」


「ごめん、起こした?」


「オバケ、まだ出ない?」


「今日は出ないね」


「そっか…おいで、理仁」


柚月は目を瞑ったまま、理仁のほうに腕を伸ばして理仁を抱き寄せて、またすぐに寝息をたてた。


理仁は、自分でも単純だと思う。


さっきまで、自分が何者なのか。


本当の名前はなんなのか。


そう思って泣きそうになっていたというのに、柚月が「理仁」と呼ぶならそれでいいんじゃないかと思ってしまう。例え、違う誰かの名前だとしても、柚月がそう呼ぶなら自分は「理仁」なのだ。


その名前で生きていくしかない。いや、今はそう呼ばれて生きることが幸せなのだとすら思う。


そう思って理仁が目を瞑った時、突然あのザワザワとした感触が現れた。


しかも、今日は背中ではなく、理仁の顔を撫でる。


目の前にいる。


そう思うと、恐ろしくて仕方がない。


けれど、目を開けて理仁を見なければこれはいなくならないのだ。


理仁の心臓は、音が聞こえるくらいに波打った。


二度、三度、理仁は大きく深く呼吸をしてから、意を決して目を開けた。


それは、こっちを見ていた。


顔のすぐ側で。


理仁は、それと目が合った。


目とは呼べないかもしれない。


それを目であると認識したのは、ただそこにふたつあるからだ。


黒いモヤの中に、ちょうど理仁の目と同じような高さで、ふたつの小さな空洞がある。


それが、こっちを見ているのだ。


「うわぁ!」


流石に、驚いて理仁は悲鳴をあげて、理仁の腕を振り払って飛び起きた。


そして、それはその声に弾かれるようにまた渦を巻いて、天井へと上って消えた。


「理仁、どうした?」


それが消えると同時に、柚月は目を開けた。


あまりのことに、理仁はそれに返事が出来ず、ただそれが消えていった天井を見つめるだけだった。


「理仁?大丈夫か」


柚月は理仁に駆け寄って身体を揺すったが、返事はなく、突然その身体から力が抜けて、理仁はベッドの上に叩きつけられるように倒れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


柚月には、何が起こったか全くわからなかった。


なかなか眠れずに布団の中でゴソゴソと落ち着かなかった理仁に気づいて声をかけて、またそのまま眠ってしまった。


そして、柚月の悲鳴で再び目を覚ますと、理仁が崩れ落ちるように目の前に倒れた。


「理仁、理仁」


その身体を揺すると、じっとりとTシャツが湿っていて、汗をかいているようだ。額やこめかみのあたりには玉のような汗が浮かんで髪を濡らしている。


なのに、唇が青く小さく震えていた。


胸に耳を当ててみると、やや鼓動は早いように思えたがしっかりと音が聞こえて、眠っているようにも思える深い呼吸をしていたので、とりあえず柚月は胸を撫で下ろした。


理仁の顔の汗を拭きながら呼びかけ続けていると、突然理仁が目を開いて、しばらく無言で柚月の顔を凝視した。


「大丈夫か、理仁」


「…怖かった」


「出た?」


「出た…目が合った」


「マジか…」


話すうちに、理仁の唇も色を取り戻した。


柚月はベッドサイドに置いてある部屋の電気のリモコンを押した。


すると、いつの間に復旧したのか天井の電気がついて、部屋は明るさを取り戻した。


「良かった。汗気持ち悪いからシャワーして来る」


理仁は立ち上がって、部屋のクローゼットを開けて着替えを手に取り、部屋を出ていった。


柚月は、また理仁がひとりで倒れていてはいけないと思い、脱衣場までついて行って外から様子を伺うことにした。


そもそも、そんな気を失うほど怖いことがあってひとりで風呂に行けるなんて柚月からすれば信じられない。


「目、覚めちゃったからさ。ちょっと仕事するね。柚月は寝ててよ」


「ひとりで?そんな怖い話聞いて?」


「子供じゃないんだから…大丈夫だよ。柚月には見えないんだから」


「…まぁ…そうだけど」


渋る柚月を寝室に追いやり、理仁はリビングのテーブルでノートパソコンを開いた。


仕事といってもアルバイトのようなもので、出版社から送られてくる小説や、雑誌の記事などの文章の文字の間違いなどを校正する。


なにせ身分を証明することが出来ないので、身元がはっきりしないといけない仕事が出来ない。それに、理仁はあまりひとりで外に出たがらない。


ひとりで出かけて、また全てを忘れて戻って来られなかったらどうしようと、いつもそんな不安に襲われる。


柚月にとってもそうだ。


もし、帰ってこなかったらどうしよう。


だから、理仁は一日のほとんどを部屋にひきこもっている。


その変わり、どうしても得意にはなれない料理以外の家事は毎日理仁が全て担っている。それでも、まだ柚月が自分のためにしてくれていることに足りないと思う。


養われている状況が、時にとてつもなくむず痒くなる。


そんな理仁のために、柚月は友人のツテを頼ってこの仕事を貰ってきてくれた。


たいした儲けにはならないが、几帳面な理仁には最適だと柚月は思った。

生活の足しになどならなくて良いのだ。柚月にだってそれなりの稼ぎはあるから贅沢をしなければそんなものをあてにする必要はない。


ただ、理仁の居心地が少しでも良くなるためだ。


本当なら、警察など頼るべきところを頼って、理仁の家族を探したり、身元を明らかにしてやることが一番なのだが、それは柚月にとって理仁を失うことになる。


理仁が、自分と一緒にいてくれるのはそれ以外に方法がないからなのだ。


この世のどこかにいるであろう、愛する家族や恋人や友人に出会ってしまったら、その記憶を取り戻してしまったら、きっと理仁はもうこの家には帰っては来ないだろう。


初めは、身代わりだった。


突然ひとりになった寂しさを埋めたかっただけだ。


けれど、この長い時間の間にいなくなった「理仁」ではなく、自分の目の前にいる理仁のことを愛してしまった。離れがたくなってしまった。


理仁のいないこの家など、今では考えられないのだ。


カタカタと、隣の部屋から聞こえるキーボードを叩く音を微かに聞きながら、柚月は電気をつけたまま眠った。


柚月は知らない。


理仁にだって、同じような不安があることを。


時々、理仁は思う。


ある日突然、玄関のドアを叩いて本物の「理仁」が帰ってくるんじゃないかと。


柚月が本当に愛している理仁が帰って来た時、柚月はきっと自分を追い出すだろう。


優しい言葉を選んで、この家から出て行けと言うだろう。


その時には、また理仁はその名前を失くすことになる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


柚月が目を覚ますと、部屋の電気は消えていた。


そして、いつの間にか理仁が隣に眠っていた。


あれからは、例のものは出てこなかったようだ。


理仁を起こさないように柚月は起き上がり、リビングのカーテンを開ける。


どうやら台風は直撃はせず、遠ざかった様子で、まだ風はあったが空は青々と透き通っていた。


昨日の夜、タイマーをセットしていた洗濯機が止まったのでこの爽やかな空気の中に洗濯物を干すのは気持ちがいいだろうと思い、やや浮かれた気持ちで柚月は洗濯カゴを持って小さな庭に出た。


湿り気のある土をサンダルで踏みしめると、その匂いが鼻先まで立ち上る。


まだ、夏の匂いがする。


それにしても


昨日の夜の出来事は、何だったんだろう。


理仁の言っていた通り、”何か”が起こった。


いや、何かが”居た”。


柚月がこの部屋に越してきて数年が経つが、おかしな経験は一度もない。


”理仁”はどうだったんだろう。


もしかして、彼も柚月には言わなかっただけでおかしなものを見たことがあるのだろうか。


今となっては確かめる術もない。


「ありがとう。ごめんね」


その声に振り向くと、いつの間にか理仁が窓のそばに立っていた。


「おはよう。いいよ休みの日くらい」


「もうひとつサンダル欲しいね」


「あぁ、そういえば…」


庭に降りるサンダルは、ひとつしかない。


狭い庭なので、せいぜい洗濯物を干したり取り入れたりする時くらいしか出る用もないので、まずふたりで庭に出ることもない。


「でも、もうすぐ干し終わるから。これ終わったら出かけようよ。買い物とかあるだろ?」


「うん。じゃ、出かける用意する」


「朝ごはん、どこかで食べよう」


理仁がひとりで出かけなくて済むように、休みの日には一緒に買い物に行くことにしている。


食料品や日用品などもあるし、あてもなく服や本なども見たりする。


もしかしたら、理仁が見たものは理仁にしか見えない幻覚なのではないだろうかと柚月は思う。


こんな狭い部屋で、もうかれこれ1年もほとんど外に出ずに過ごしているのだ。もはや、軟禁されているようなものだ。


その上、常に未来の見えない不安があるはずだ。


心を病んでいたとしても仕方がないのではないか。


「天気いいね」


柚月は普段、仕事に行く時は電車を使うが休みの日は車を使う。


駐車場代がもったいないとは思うが、やはり車の方が行動が自由だ。とくに今のように日用品などを買い溜める必要のある時には車が便利だ。


理仁の気分転換になればと、街の中をはずれて景色の良い山手の方へ車を走らせる。


「うん、晴れてて気持ちいいね」


理仁のその返事にホッとする。


「どこで朝ごはん食べる?」


「でももう昼だよ。お昼ご飯だね」


大きな国道沿いのファミレスに入って、時間ギリギリで間に合ったモーニングセットを頼んだ。


山型の厚切り食パンをふたつに切ったものと、ゆでたまご、サラダがワンプレートに乗っていて「絵に描いたみたいなモーニングだよね」と理仁は笑いながら、テーブルに備え付けられた砂糖を3本コーヒーに溶かす。


いつも、そんなに甘くしないと飲めないならコーヒーなんて飲まなければいいのにと柚月は思う。


出会った時からそうだ。


コーヒーを飲む時は必ず砂糖を3本。冷たいコーヒーを飲む時もシロップを3個、なんの躊躇いもなく手に取る。


それを、柚月は不思議に思う。


コーヒーには砂糖を3つ入れる。


その記憶はあるのだ。


言葉や日常の動作と同じレベルでそれが身についているのだろう。


しかも理仁はそれを自分で理解していないようだ。


「理仁。俺と暮らしてて何かストレスある?」


「へ?」


我ながら突然、突拍子もない質問をしたと柚月も思った。


「いや…もしかしたらさ、その……変なもの見る原因とかそういうのもしかして俺へのストレスとかあるかなって思って」


「全くなくはないけど。すぐ散らかすし」


「…すみません」


「でも、そもそも柚月の生活に横はいりしたのは僕だからね。ストレスがあるとしたら柚月のほうじゃない?僕じゃないよ」


「……あのさ」


「あげる」


理仁は綺麗に剥いたゆでたまごを柚月のトーストの横に置いて、柚月が殻を剥きかけている手の中の卵を取り上げた。


「下手くそ」


殻がボロボロになったゆでたまごを綺麗に剥いて、理仁はニコッと笑って見せる。


「深刻な顔しないでよ。ごめん、怖がりすぎた。あんなのタダの夢だよ」


「疑ってるんじゃないんだよ。でも俺には見えないからどうしてやったらいいかと思って…」


「事故物件とかじゃないよね?まさか」


「そんなの聞いてないけど……」


その時、思いがけず「柚月!」と頭上から声をかけられた。


その声の主は、柚月が顔をあげるより前に理仁と柚月の間に割って入るようにテーブルに両手を置いて柚月の顔を覗き込んだ。


「……迅か」


「そうだよ、久しぶり!え、何年ぶり?」


赤い柄物の派手なシャツに、肩までの髪をハーフアップにして、さらにそのシャツから伸びる腕にはぎっしりとタトゥーが刻まれていて、柚月はそれが幼なじみの迅だと気づくまでやや時間がかかった。


ただ、その人懐っこい笑顔は変わっていない。


「中学卒業して以来だな」


「そっか!卒業式から会ってないっけ」


迅と柚月は幼稚園からの腐れ縁だ。


何故か中学を卒業するまでずっと同じクラスだった。


当時から、明るく社交的な性格ではあったがそれでもあの頃は中学生だったし、とくにグレていた印象もない。


「こんにちは」


迅はその人懐っこい笑顔で理仁にも挨拶をした。


「……こんにちは」


「ごめんね、邪魔して!懐かしかったもんだからつい。悪いな、柚月」


「いや、会えて嬉しいよ」


「そう?だったらちょっと連絡先交換しようよ。今度ゆっくり会おう」


迅の少し後ろには、肌の露出の多い若い女が立ち尽くして迅を待っていた。


迅と連絡先を交換し、迅が若い女と奥の席に案内されていくのを見送った。


「友達?」


「うん。中学以来だけどこんなとこで会うと思わなかったよ」