香耶はしばらく家から出られなくなった。


家出をした罰というわけではない。


父と母が香耶がいなくなった翌日には捜索願を出していたと聞き、そんなに遠くにいたわけではないのに警察というのはあてにならないなとも思ったりした。


まるで学校から帰ってきたみたいに、なんということなく「ただいま」と帰って来た香耶を母はお化けでも見たかのような顔をして驚いたかと思うと、息が出来なくなるほど強く抱きしめて声を上げて泣いた。


香耶もその母の反応に申し訳ない気持ちがやっと湧き出て、こんなに心配してくれていたことも嬉しくて、一緒になって泣いてしまった。


愛されていないなんてどうしてそんなふうに思って、死のうとまでしたのか。


あの時、雄星が死のうとしなければ、それを止めなければ香耶は家に帰ることも母から受けていた愛情を再確認することも出来なかった。


もし、香耶が理由もわからずバラバラになって死んでいたら、母はどうしていたのだろうか。


心配していたお金のことは一切なにも言われなかった。


けれど、そのお金の使い道は今となっては間違ってはいなかったと香耶は思う。


雄星と出会って、こうなっていなければ香耶はもっと歪んでいた。


香耶が家から出られなかったのは、母が心配するからだ。


また帰ってこないのではないかという不安があるのだろう。家からたった数分のコンビニに行く時ですら、心配そうな顔をして玄関まで見送るのだから、それが香耶には億劫になってしまったのだ。


だから、母が安心して香耶を置いて仕事に行くようになった頃、香耶もようやく自由に外出が出来るようになった。


「こんにちは」


香耶が一番先に向かったのは、部活でも塾でもない。


晴奈のバイト先のコンビニだ。


晴奈は香耶を見ると身構えた。当然だろう。


最後に会った時に、あんなことを言ったのだから。


「バイト、何時に終わる?」


「…なんですか?」


「そんなに嫌な顔しないでよ」


「するに決まってるでしょ…」


「とりあえず…ごめん」


「なんなの?気持ち悪いんだけど…」


「だから、それも含めて話したいの」


「…終わるのは8時だけど」


「じゃ、待ってる。わけあって私もうお金ないからさ、向かいのファストフードでね」


「まだ1時間あるよ」


「いいの」


今日は、晴奈を監視する必要はない。


飲み物を頼んで、ファストフード店の奥のソファ席に座って晴奈を待ちながら雄星に電話をかけた。


「なんだよ」


「生存確認。今、家?」


「今から出かける」


「そうなんだ…」


「香耶は?」


「友達と待ち合わせ」


「友達いるんだ」


「うるさい。出かけるんでしょ?じゃーね」


電話を切って、香耶は手元のアイスのカフェラテをストローで一気に吸い込んだ。


「…にがっ…」


今夜も雄星は仕事らしい。


例え、その命を助けても自分は彼にその仕事を辞めさせる大事な人にはなれないのだ。


香耶はカバンから塾の課題を取り出してテーブルに広げた。家出をしていたのと、その後に家から出られなかったせいで塾に通えていなかった分をこなさなければいけない。


「…勉強してるんだ、偉いね」


いつの間にかそれに没頭していて、その声に顔をあげると晴奈がトレイにハンバーガーのセットを乗せて立っていた。


「あぁ、ごめん片付ける」


テーブルいっぱいに広げていたテキストを閉じて端に寄せると、晴奈はそこにトレイを置いて座った。


「なにも食べないの?」


「金欠」


「マジ?じゃ、これ半分あげる」


そう言って晴奈が差し出したポテトを「ありがとう」と1本つまんで香耶は早速話を切り出した。


「遥斗に会いたいんだけど」


「…会えばいいじゃん。連絡先わかるでしょ?」


「だって…断られるの嫌だもん」


「だからって彼女経由って…どんな根性してるのよ…」


「いいでしょ?別に取ろうと思ってないから」


「…本当に?」


「そんなの…最初から無理なのわかってるに決まってるでしょ…でも…悔しい。こんなの。どうして私は誰の大事な人にもなれないの」


「…え?」


「なんでもない」


「…今から遥斗の家に行くよ」


「こんな時間に?」


「うん。花火するの。で、泊まる」


「自慢ですか?ご馳走様です」


「違うよ。一緒に来るかって言ってるの」


「なんであんた達のお泊まりの邪魔しなきゃなんないのよ」


「大丈夫だよ。だって、言ったでしょ?私に”何も無い”のかって。その通り、絶対なんにもないよ。だから安心して」


「…マジで言ってんの?なんもないの?え?なんで?」


「うるさい。来るの?来ないの?」


「…行く」


「じゃ、これ食べたら追加の花火買いに行こ」


「遥斗に聞いた?ちゃんと」


「大丈夫大丈夫」


香耶を遥斗に会わせることは、晴奈も考えていないわけではなかった。会わせないにしても話はさせるべきだ。


香耶の気持ちは、わからなくはない。


香耶は遥斗の負担になっているとは思ってもいなかったし、ただ純粋に助けたかった。好きな人なら尚更、一生懸命尽くしたかっただけだ。


それを一方的に負担だと感じて、勝手に香耶の気持ちを決めつけて自由にしてやったつもりで切り捨てた遥斗が悪い。


晴奈に対して、逆恨みをするのも仕方がない。


近くのドラッグストアで、もうシーズンも終わりかけなのか半額になっている花火のセットを買い込んだ。


「買いすぎじゃない?」


「いいじゃん。遥斗んちすっごい田舎だからしたい放題だよ」


遥斗の家の最寄り駅に着くと、香耶は辺りを見渡して「マジで山じゃん」と呟いた。


駅の外の空き地には遥斗と綾子が迎えに来ていて、香耶を見るなり「香耶ちゃん!?」と綾子が満面の笑みで出迎えた。


「ご無沙汰してます」


香耶がこんなに柔らかく笑うのを晴奈は初めて見た。


香耶はやはり、遥斗の母に慕われて信頼されているのだとわかる。遥斗の母にとって、香耶の存在は大きかっただろう。


家に着くまでの間、遥斗は無言でひたすら綾子と香耶があれこれと近況を語って盛り上がっていた。


「遥斗、怒ってる?」


買ってきた花火を庭で広げながら、香耶は隣でロウソクに火をつけている遥斗に聞いた。


「なんで?」


「…私、なんかストーカーみたいだよね」


「まぁね」


「ごめん」


「…晴奈に嫌なことしたのはちょっと怒ってる」


「だよね」


「でも、そうしなきゃいけなくしたのは俺だって思う。だからごめんなさい」


「私ね、知らなかったんだ…」


「なにを?」


「私って重い女なんだよね。最近やっと気づいたよ。…だから、遥斗が私から逃げたくなったのはわかった。今更なんだけど」


「……ちゃんと感謝はしてるけどね。こう見えて」

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「晴奈ちゃん、花火しないの?」


綾子が台所の片付けを終えて廊下に出ると、晴奈が玄関で花火用のバケツを隣に置いて玄関で座り込んでいた。


「ちょっとタイミング見計らってます」


「タイミング?」


「幼なじみトークが盛り上がってるんで」


「ヤキモチ?」

 

「……ちょっと」


開け放たれた玄関の扉の向こうを見つめる晴奈に、綾子は「まぁ、仕方ないわね」と笑った。


「本当に香耶ちゃんには助けられたのよ、私がね。遥斗が幼稚園や小学校にあがる度に、他の子と同じように出来るかとか、足のことをからかわれたりしないかって本当に心配だったから」


「…ですよね」


「でもそれって…私が遥斗はひとりで何も出来ないんだってバカにしてたのと同じよね」


「…こんなこと言うと叱られちゃうかもしれないですけど…遥斗の足が悪かったから、私は遥斗のこと好きになったのかもしれないです」


「どうして?」


「私、遥斗とゆっくり歩くのが大好きなんです。ゆっくり歩くから、何処へ行くにもたくさん話せるし、普段気づかないものも見つけられるし。遥斗はちゃんと私のこと守って歩いてくれるし、私が助けなきゃって思ったことないんです」


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晴奈が合流する頃、会っていなかった時間や気持ちのすれ違いが遥斗と香耶の中で少し埋まったように見えた。


晴奈がふたりの間に割って入って花火を選んで火をつけると、遥斗がふふっと笑って晴奈に「聞いてよ。俺、香耶にふられた」と言った。


「え?なにそれ」


「そうなの。私もう遥斗のこと好きじゃないの」


「なんで?」


「…まぁ…いいじゃん別に」


「え!なによ!教えてよ」


「なんでよ!好きじゃなくなったならいいじゃん!」


「だってさぁ!散々、私に意地悪言ってさ!待ち伏せたりしてさ!」


「……ごめんね」


香耶が突然素直に謝るので、晴奈はそれ以上なにも言えなくなった。


「…誰か好きな人でも出来たの?」


「わかんない」


「わかんないって何?」


「わかんないの。ただの情かもしれない。得意のただのお節介焼きなのかもしれない」


「まぁ、やりすぎないようにね」


「わかってるよ」


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「脅すつもり?」


「まぁ……単刀直入に言うと」


ガリガリに痩せこけた女はベッドから降りて、床に脱ぎ捨てた仕立てのよいワンピースを踏みながら窓際の小さなテーブルに置いたハイブランドのカバンから財布を出した。  


以前とは違うブランドだ。


財布を出して、テーブルに備え付けられた椅子に下着姿のまま足を組み、雄星を睨むように「いくら出せばいいの」と言った。


「それは…そっちの気持ちで」


女と雄星はホテルを出て、近くのコンビニのATMに寄り、女は口座の預金と、カードキャッシングを使って、ATMの上限まで現金を引き出し、封筒に入れて雄星に手渡した。


「これが限界」


以前、女が寝ているうちに撮った写真を見せた時、女は初め余裕を見せた。


「うちの主人、婿養子なの。彼はうちの父の会社を継いで社長になりたくて私と結婚したのよ。だから、そんなもの主人にばらされたところで…あっちは何も言えないのよ。残念でした」


「俺、あんたの旦那なんて知らないから。でも…あんたの子供と、通ってる幼稚園は知ってるよ」


雄星はスマホの画面をスクロールして、幼稚園の送り迎えをする女と制服姿の子どもの写真も見せた。


「これ、SNSに載せたらすぐどこの誰かわかるよね。さっきの写真とセットで」


「自分のことも晒すことになるじゃないの」


「いいよ。俺は別に今さら誰にどんな場面見られたってかまわない。失うもんとかないし」


雄星が受け取った封筒を肩から下げたカバンに突っ込むと女は「データは消すんでしょうね?もちろん」と雄星を睨む。


「俺、こういうの疎いからさ。写真はスマホに入ってるだけだよ。信用しないかもだけど」


そう言って雄星は女に自分のスマホを差し出し「ここで叩き割れば?」と言った。


女はまるで、腹立たしさをぶつけるように雄星から受け取ったスマホをアスファルトに叩きつけ、ピンヒールで粉々になるまで踏みつけた。


「大人を舐めるんじゃないわよ」


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窓を開けると、花火の後の火薬の匂いがまだ微かに鼻についた。


「ちょっと涼しくなったね。夏も終わるね」


そう言って窓の外を見ていた香耶が振り返ると、ベッドに寝転んでスマホでゲームをしていた遥斗がゲームの画面を開いたまま眠っていた。


「ちょっと…」


「まぁ、いいじゃんまだ夏休みだし」


「ねぇ私、晴奈と寝るの?」


綾子が持ってきてくれた来客用の布団のセットをベッドの下に敷きながら「文句ある?」と晴奈が不貞腐れて言った。


「いつも別に寝るの?」


「ううん。一緒に寝るよ」


「ムカつく」


「でもほんと何も無いよ。ほんとだよ。一緒に寝るだけ」


「なんで?」


「まだ健全なんで」


「健全…ね」


香耶はベッドに身を乗り出して遥斗の寝顔を覗き込みながら「ねぇ…足、大丈夫?」と晴奈に小さな声で言った。


「足?」


「遥斗、足が痛いって言わない?」


「…痛い?」


「うん」


「聞いたことないけど…どういうこと?」


晴奈が怪訝な顔で香耶ににじり寄り、香耶が答えようとしたその時「寝てるのにうるさいよ耳元で」と遥斗が目を開けた。


「その話、もういいから。寝るよ。ね、充電器取って」


部屋の隅に寄せたテーブルの上のスマホの充電器を手に取って、晴奈が遥斗に渡しながら「ねぇ、なんの話?教えてよ」と聞くと「いいの。今なんともないから」と晴奈のほうを見向きもせずにそれをコンセントに差した。


「なんでよ。気になるじゃん」


「知らなくていいの」


「…また…そうやって私の知らない話…」


晴奈は、花火を始める前のあの玄関の扉の隙間から見たふたりを思い出す。


自分のいない長い時間を過ごしたふたりが、会えなかったすれ違っていた時間を埋める場面のそこには、晴奈の居場所などなかった。


まるで、ふたりが自分の知らない言語を話しているような、そんな気にさえなった。


「晴奈ごめん、私が余計なこと…」


「ううん…いい。ちょっと喉乾いたからお水もらってくる」


もう時間は遅かったが、部屋を出た階段の下はほんのりと明るく、まだ誰かが台所にいるようだった。


そっと台所の扉を開けると、ダイニングに座って綾子が家に持ち帰った仕事を片付けているところだった。


「……すみません、喉乾いちゃって。お水もらっていいですか」


「お水でいいの?冷たいお茶があるけど」


「…じゃ、お茶で。ありがとうございます」


綾子は冷蔵庫に立っていき、氷を入れたグラスにカラカラと冷えたお茶を注ぎながら「遥斗に取りに来させればいいのに」と言った。


「遥斗もう寝ちゃいそうなんで…」


「どうしたの?喧嘩でもした?」


「そんなんじゃないです…私が勝手にすねてるだけです」


「香耶ちゃんのことでしょ?」


「…まぁ…」


晴奈は綾子の前に座り、テーブルに置かれたお茶を手にすると、仕事を再開しようとした綾子の視線が晴奈の背後に動いた。


晴奈が振り返ると、扉のすりガラスに人影が映り、間もなくそっと扉が開いた。


「晴奈ごめんね」


「…別に…香耶のせいじゃないし」


「香耶ちゃんもお茶飲む?」そう言って綾子はまた手を止めて冷たいお茶のグラスを晴奈の隣に置いた。


「遥斗は?」


「また寝た。だから話に来たの」


「……もういいよ。遥斗は知らなくていいって言うんだから…知らなくていいのよ」


「すねないでよ」


綾子はふたりのやり取りを聞きながらクスクスと笑って「なんだかうちの子がモテてるような気がして悪くないわね」とテーブルの上を片付けた。


「すみません、私たちもう部屋に帰ります」晴奈がそう言って立とうとするのを綾子は制して


「もう終わったの。あとはゆっくり仲直りしなさい」


そう言って部屋を出ていった。


「仲直りもなにも…別に仲良くないし」


「晴奈ってばもう…怒らないで」


「怒ってないの。寂しいの」


「……あのね」


「いいよ、もう。わざわざ教えてくれなくて。遥斗は嫌がってるんだし」


「だから教えたいの」


「…なんで?」


「遥斗は自分から言わないから。…あと…遥斗も知らないことがあるの…」


「…どういうこと」


「遥斗の足ね…生まれつきなんかじゃないんだよ」


香耶がその事実を知ったのは、まだ小学生の頃だったと思う。


確か、父と母がテレビを見ていた。


香耶は、少し離れてテレビを見ていたか、本を読んでいたか…とにかく香耶が両親から少し離れたところにいたために、香耶の存在を気にせずに両親は会話していたのだろう。


テレビのニュース番組は、小さな子どもが両親からの虐待によって殺されたと告げていた。


こんなニュースばかりだね。


怖いわね。


そう話しながらふと


「ほんと…殺されなくて良かったわね」


「障害が残ったのは可哀想だけど不幸中の幸いだよ」


そんな言葉が香耶の耳に聞こえて来たのだ。


その時のニュース番組も、アナウンサーが誰だったかも、自分が何をしていたのかも、香耶にとっては遠すぎる記憶でほとんど覚えていない。


けれど、その両親の声だけは今も鮮明に蘇る。


香耶は、小さい頃から察しの良い子だった。


この時ほど、香耶は自分の頭の良さと察しの良さを恨んだことはない。


遥斗に父親がいない理由と、それをまわりがなにも教えてくれないことと、遥斗の足が不自由なことと、全部が繋がってしまったあの時の気持ち。


そうだ。


今になって思う。


あの時から、きっと香耶は遥斗に尽くしたくなったのだ。


”尽くす”という意味すらわからないうちに無意識に。


こうして、なんの心配も不安もなく、両親との穏やかな時間を過ごす自分のなんと幸福なことか。幸福な人間が不幸を背負った人間にしてやるべきことがあるのだと。


香耶は、ほんの少しの思い上がりとともにそれを理解したのだ。


「その後…遥斗が時々、足が痛むと言って来ることがあったの。きっと心理的なものだと思う…怒らないで聞いて欲しいんだけど」


「なによもう…」


「そういう時に、私と話すと気が紛れるからって言うから…私はね、本当は苦しんでる遥斗は見たくなかったけど、でも一生懸命遥斗の痛みが治まるようにって馬鹿みたいな話をしたりして…だから余計に晴奈に嫉妬したの。私のその役目はもうおしまいなんだって」


「だったら、私にはまだそこまで心を許してないのかもね」


「違うよ」


「なんでよ」


「晴奈をまた私みたいにしたくないからでしょ?」


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晴奈は眠れなくて、香耶を起こさないように布団から這ってでると、ベッドに寄りかかって遥斗の寝顔をじっと見つめた。


遥斗を知る度に、遥斗の知らなかった部分を知る度に、晴奈は不安になる。


私は、このまま遥斗の隣で一緒に歩いていられるのか。


遥斗のことは大好きだけれど、いつか、なんとかしてやりたくて焦ってしまわないだろうか。焦って、晴奈だけが先走って歩きはじめてしまわないだろうか。


遥斗の手を引っ張りすぎて、遥斗のほうからその手を離されてしまうのではないか。


「遥斗」


遥斗の腕を揺すってみる。


「遥斗、起きて」


「…なに」


今度こそは本当に熟睡していたらしく、遥斗は苦いものを食べさせられたような顔をして目を開けた。


「一緒に寝ていい?」


「…いいよ」


遥斗は壁際のほうに身体を寄せて、晴奈はその空いたスペースに這い上がって遥斗の方を向いて寝転んだ。


「大丈夫だから」


「え?」


「足。大丈夫だから。その時はちゃんと言うから」


「…うん」


「あと、今日は香耶を連れてきてくれてありがとう。ちゃんと話せて良かった」


「…うん」


「もう夏休み終わるね」


「そうだね」


「晴奈と一緒で良かった。ありがとう」