こんにちは。
タオさきです。お久しぶりです。
長いことご無沙汰しています。
さて、突然ですが、まだ出していなかった
小説をブログにUPしてみようと思いますー!
何日かに渡って、アップします。
よかったら読んでみて下さい♡
小説「本当のこと」1
葵は二〇一五年、十一月、三十二歳を目前にして
「ぽっちゃり」ではなく「ぼてっと」してきた自分の身体のために事務のパートがお休みになる週四日のうちの二日は、散歩しようと決めた。
初めの頃は、近所の神社を歩いてお参りをして、戻ってくる二十分ほどのコースだった。が、それを三週間ほど続けるうち歩くのが、どんどん気持ちがよくなって、そこから少し山手にあるお城まで行ってみようと足を延ばした時、初めて通る細い道で見つけたのが、ヨーガ教室だった。
小さな寺の入り口の木製の車止めに、黒いひもで長方形の板がくくりつけられていて
「毎週土曜日、ヨーガ禅、どなた様もどうぞ」
とだけ、筆で書かれてあった。
その文字がそこまで達筆ではなかったことに親近感を覚えた葵は、家に帰って、ネットで調べてみた。
ヨーガ禅の創始者は、すでに亡くなっていたが、かなりその道では有名なひとのようだった。そして、その弟子が寺を借りて、毎週、教室をしているらしかった。葵は夫と二人暮らしだったから、パートが休みの日は、ゆったりと自分のペースで家事をして、土日は、好きな小説や本を読んだり、テレビを見たり、夫と映画に行ったりしていた。翌週の土曜は、特に予定はなかったので、早速、あの寺にいってみることにした。
寺の境内の赤く染まりつつある楓の葉が揺れているのが、よく見えた。二十帖ほどの畳の部屋に入ると、住職だろう、お経を唱える低く太い声が奥の本堂の方から漏れ聞こえてきて、始まる前から身体だけでなく心まで整う気がした。
奥には、先生と思しきグレーのスエットの上下を着た人が胡坐をかいて座っていた。若い頃から彫りが深かったであろう精悍な顔立ちが、歳を重ねてより皺が深くなり、耳の下まで伸びた白髪とあいまって(下界にも、時々は、降りてくるのですよ)とでも言いそうな仙人のようにみえた。
葵と目が合うなり微笑んで低く柔わらかな声で
「どうか、マイペースに続けてください」と言った。
(つづく)
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