千秋楽
昨日、文楽2月公演は千秋楽を向かえました。
この2月の文楽東京公演は外苑前駅から近い日本青年館ホールで上演していました。
非常にデザイン性の高い内装で、ロビーはまるで現代美術館かと思うほど。
ホールの隣は学校が並び、向かいは明治神宮外苑で、秩父宮ラグビー場や明治神宮野球場、国立競技場が建ち並びます。
国立劇場がむこう何年の閉場となり、都内の劇場をお借りして行う文楽公演。
文楽劇場や国立劇場は、文楽座の演者約90名が全員入れるような作りになっています。
その上で、個人持ちの舞台道具(本公演で使われる太夫三味線の舞台道具は9割方個人持ちの道具)を収納しておくことができます。
畳の楽屋ですし、人数の面など和の芸能に向いた造りになっているのです。
ただ、そのような劇場は特殊で、現代においてひとつの演劇を上演するためにそれほどの人数と道具を持ち込む必要があるのは、文楽・歌舞伎、日本舞踊、などの和の芸能を除けば、宝塚やOSK、劇団四季などに限られてきます。
一般的な劇場で、フルの設備や人数で公演を行うことは、舞台裏関連や楽屋関連において非常に難しいことです。
そのため、12月から始まった代替劇場の文楽公演では楽屋割も難しく、指定された楽屋で指定された全員が一同に入るスペースはないために、自分に関連する出番の着替えなどの時以外は基本的に廊下にいたりします。
また、舞台道具も全て収納しておくスペースはなく、太夫でいえば見台を全員ぶん持ち込むことは不可能という判断となり、メインの切り場語りの方以外は見台を共有で使うことになりました。
他にも持ち込めるハンガーの数の制限や、楽屋で使う私物の量の制限などもシビアに行っています。
それほどまでしても、東京の公演は大阪の公演と同じく、文楽座全員で芝居を打つ「本公演」である意義を持ち続けることを大切にしています。
9月公演が長かったこともあり、今回の2月公演は短い日程でした。
公演直前の身辺の大きな出来事から頭を整理する暇なく引き続いての公演だったからか、普段の公演よりも身体と脳が感じている負荷は大きいものに思えます。
文楽は世襲制ではなく、お家や系譜・系統というものは基本的に存在しないため、師弟関係のみの狭い関係ではありません。
文楽座に多数あるそれぞれの一門全てが、親密に関わり合う、家族のような関係です。
芸のことも師弟間のみの直線的なベクトルのみならず、他の一門の諸先輩方や師匠方からも教えを受けます。
注意を受けた時に、それが違う一門の方からの注意だからと受け入れないような狭い考え方では非常に勿体なく、様々な手法・考え方を柔軟に頭に入れていく容量の大きさを膨らませていく必要があります。
今後はとくに顕著になります。この2月公演の五条橋の段でも多くの方から教えを受けました。
リスタートの舞台人生。
これからもよろしくお願いいたします。
お越しいただき誠にありがとうございました。
豊竹咲寿太夫
人形浄瑠璃文楽
太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽公演に主に出演。
モデルとしてブランドKUDENのグローバルアンバサダーをつとめる。
その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
オリジナルLINEスタンプ販売中
豊竹咲寿太夫
オフィシャルサイト
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