10分でわかる妹背山婦女庭訓
人形浄瑠璃文楽、歌舞伎の時代物の芝居「妹背山婦女庭訓」は大化の改新の時代の物語です。
中臣鎌足(藤原鎌足)や息子の淡海が主となって物語が進み、ロミオとジュリエットのように敵対する勢力の子供同士の恋愛に焦点が当たります。
初段から五段目まであり、ここでは初段のあらすじをご紹介します。
01
初段
大序 大内の段
時代は天智天皇の頃。都は奈良でした。天智天皇は目が見えませんでした。
左大臣は蘇我蝦夷子。右の座には阿部中納言行主。
側近に大判事清澄。
大臣である藤原鎌足が宮中へ参上しないため、蝦夷子は野心を持っているのか事をただすと言いました。
それに対して中納言は鎌足に限って野心を持つはずがない、と反論しました。
そこへ現れたのは、先刻命を失った太宰の少弐の後室、定高でした。子供は娘、太宰の家を相続させる聟を貰い受けたい相談に来たのでした。
大判事清澄の家と太宰の家は仲がよくありません。
大判事清澄は蘇我蝦夷子の家来の宮越玄蕃にこの件を取次ぐよう命じました。
宮越玄蕃はちょうど太宰の娘の雛鳥に恋慕を抱いていたところでした。自分が聟の申し出を受けたいと言い始めました。
思いもよらない申し出に、定高は言葉を失ってしまいました。
中納言はそんな定高に、それは別の話として改めて家名相続について話し合い連絡をすると言いました。
定高は礼を言うと、その場を去っていきました。
帷の向こうから鎌足の娘采女の局が出てきました。
鎌足に裏があるのかどうか明白にさせるため父鎌足を召すよう天智天皇からの勅諚を伝えにきたのでした。
鎌足が宮中へ参上すると、病気ということでしばらく参内していなかったことに野心があるのではという疑いがあると説明がありました。
蝦夷子は家来に五日ほど前に春日神社に奉納されていたという一つの箱を持ってこさせました。
そこには鎌が入っていて「天上天下」と書き付けられていました。鎌足の娘の采女は局として天智天皇の側におり、男子が誕生すれば自然と天智天皇の外戚となります。天上天下と書いているのは天下を乗っ取る心からであると言いました。
鎌足は全く身に覚えがなく、自分のことを陥れるための工作で、本当の反逆者がいるのだろうとしながらも、その疑いが晴れるまではしばらく宮中から離れていようと言いました。
そうして鎌足は宮中から出て行ったのでした。
02
とよたけ・さきじゅだゆう:人形浄瑠璃文楽
太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
公演に主に出演。
その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
オリジナルLINEスタンプ販売中
豊竹咲寿太夫
オフィシャルサイト
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