読書の秋 | 日常録

日常録

気になることなど

ちょっと遠出しようかと直前まで迷ったシルバーウィーク。真ん中3日はワーケーションにしようかなーなんて思ってたものの、台風じゃな悲しいと断念。


代わりに?この3日は読書してました。本を読むのも久しぶり!

自分の記録ように残してみますニコニコネタバレありまくりなので、嫌な方は読まれませんように…。


1冊目 春にして君を離れ/アガサクリスティ

ミステリ界の大御所、アガサクリスティが別名義で出した長編小説。人から面白いと勧められて読みました。

よくできた妻であり、よくできた母であると自負する40代の主人公。バグダッドからイギリスへの帰路で旧友に出会ってから、足止めされたトルコ国境の駅で自分について初めて深く考え、良き妻良き母という自己像に翳りが見え始める。

ほぼ主人公視点の話なのですが、面白い。あれ?あのときこんなだったかしら?と過去の出来事を思い出すシーンが何回もあるのですが、その度にゾワゾワする。え?あれ?そうだっけ?と狼狽える主人公と一緒に、読んでるこちらの気持ちもザワザワ。特に中盤の砂漠の真ん中のシーンはドキドキしますね。主人公のジョーンが記憶をたぐるのと同じように、読者も早く先を読みたいと、ページを繰る手が止まらない。

エピローグの前の一文のガッカリ感と、そうだよね、そんなものだよね、という淋しい納得感。

でも、こんなに自己愛の激しい主人公が、よくもここまで内省できたなぁというのも少し不思議です。記憶改竄とかしちゃいそうだもの。

英国人、というのもどこか日本人と考え方・振る舞いが似ていて、現代でもこういう人いるよなーって思いました。定期的な内省と、他者評価は大事ですね。痛いおばさん化しないように気をつけないと。

Kindle版だとあとがきが読めないのが残念悲しい


2冊目 噛み合わない会話と、ある過去について/辻村深月

これは上記の「春にして君を離れ」の読書評を読書メーターで読んでた時に、「この本を読んで春にして君を離れを思い出した」と記載していた方がいたので、読んでみることにしました。

こちらは四篇の物語からなる物語ですが、確かに「自己像と他者評価の乖離」、「自分にとっての過去・価値と、他者から見た過去・評価の乖離」は、春君(一気に携帯小説風になる略し方。笑)に通づるものがあり、こちらもさっくりと読了しました。

特にお気に入りは「パッとしない子」。昔はパッとしない少年だったが、今は人気絶頂のアイドル?である青年が小学生の時、教科担当をしていた女性が主人公。周囲から彼の小学生時代を知ってるか?と聞かれるたびに、パッとしない子だったけどね〜とかわしつつ、ちゃっかり一部自分アゲを忘れない主人公。彼の弟の担任だったことや、学祭での振る舞いなど、自分は彼にとっていい先生であったことに何の疑いも抱いてない。ところが彼から直にこんこんと当時の話をされることで、自己評価であるすてきな先生とは全く思われていなかったことを知る。

自分はここが認められてるはず、きっと私に感謝してるはず、って思ってる人って、結構いるんじゃないかと思う。というか私はわりとそのけがある。笑 異動とか引退とか退職の時に、挨拶に来てくれた人がプレゼントとか寄せ書き持ってきてくれたんじゃないか?とか期待する派ですしね。実際は五分五分ですが笑い泣き

話がそれた。そんな感じで、私にきっと感謝してるんだわ〜ラブって思ったドギマギからの、彼からの冷酷な言葉は、私まで冷や水かけられた気分。笑

で、主人公から見た過去と、彼から見た過去は全く異なってるのです。こっちは春君と違って、完全記憶改竄してたようですが、本当のところは分かりません。

あとは「ナベちゃんのヨメ」は主人公に同意しかない。むしろその周囲の友達はお節介か!って思いました。当人同士が幸せならそれでいいじゃん。誰にも迷惑かけてないならね(一部被ってるけど)。異性を感じない、誰の1番にもなれない存在ってのが現代っぽいなぁ…って思いました。


3冊目 幸福な生活/百田尚樹

こちらは、昔漫画版の方を読んでいて、コミカライズされてない話も面白そう!って思って、いつか読もうと思っていたものでした。


ちなみに漫画版はこちら。


小説は19篇、漫画は6話で、コミカライズされてないものが沢山あって満足。どれも短いお話で、こちらも最後の1ページ(なんなら最後の一行)で、小説の世界観がぐるっとひっくり返ります。叙述トリック好きさんは好きだと思う。

最初読んで???となったのは「賭けられた女」。最後の一行で、?え?なんで??となり、もう一度読み直し&読書評読んで理解しました。わかったから読むと、所々の表現の面白さに気付きます。

あと、読書評読んで、こんな捉え方もあるのか!!って思ったのは「催眠術」。普通に妻側におちょくられてるだけでしょ?って私は思ってたのですが、どうやら催眠中の独白により信頼関係がなくなったから、という読み方もできるそう。ほぉ!ってなりました。


改めて漫画版とも比較してよんだのですが、「そっくりさん」と「幸福な生活」は漫画版の方が好きです。「そっくりさん」は、主人公の友達の絵面が好き←なのと、夫が同性愛者ではないと気づくのは漫画版のタイミングの方がスッと来たから。

「幸福な生活」は、とにかく主人公が気持ち悪くて。笑 特にネタバレ後。娘の運動会で娘が結婚する時のことを想像するのはまだいい。息子が好青年になるといいな、と思うのもまだいい。しかし!娘の幼稚園の先生に惹かれて、いずれあんな人といい関係に…とまで妄想しただろうな(だから夢の中ではそっくりな新人から迫られる)と思うと、やはり気持ち悪い。

こんな父親、家族からも疎まれてしまえ!と思いますが、漫画版だとしっかり疎まれてるからよいです。笑 娘も主人公の妄想だと美しく優しく成長してるものの、現実は美しくも厳しそうな女性。息子は妄想では爽やか好青年だけど、実際は根暗風な気遣いできないマン。妻は植物状態の夫の面倒は見るものの、素敵な人と再婚予定。主人公である父親が、妄想の中で自分に都合よく想像したものが、現実は全然違うというのが後味良いです。1番気持ち悪いのは、妄想の中で好みの美女と過ち()を犯したことまで美化された過去としていることですが…。

小説版だと、妻と子供は亡くなってて、あの父親の記憶は綺麗なままかぁ…と思うとなんとも…な気持ちになります。


というわけで軽めのものばっかりでしたが、久しぶりに読書は面白い!うちの会社はカフェテリアプランでアマギフもらえるので、いくらか換金して、もうすこしKindleに落として色々読みたいと思いますニコニコ