「……すげぇ」
村人の誰かがぽつんと呟く。
それもそのはず、ついさっきまで歓迎会のメインだった少年が今目の前で化け物とまるで踊っているかのように戦っている。
「あいつ…一体何者なんだ?」
だいぶ化け物共の動きも読めてきた。
めちゃくちゃなようできちんと統率が取れている。
何処かに操っている奴がいるのだろうか…
「いっ!?」
考えすぎか頬をかすってしまった。
「いってぇな………え?」
再びフラッシュバック。
見えたものは…………
「久しぶりだな、ユウ…」
我に返り、声のした方へ視線を向けると髪をオールバックにした俺と同い年くらいの青年が立っていた。
「………ユウ?」
「覚えてないのか?自分の名前すら…?」
「……おまえがこの化け物共を操ってたのか?」
彼は少し悲しそうな顔をすると俯き、言う。
「あの時俺が封印しちまったからか………まさか記憶まで抜け落ちてるとは…」
「おい!きいてんのか!?」
化け物共は彼が出てきた途端おとなしくなった。
ってことは単順に考えてこいつが操っているのだろう。
「…そうか、本当に忘れたんだな。ならば」
マントらしきやつをバサっと翻し、彼は化け物と一緒に何処かへ消えた。
「………なんだったんだ?あれ?」
胸に違和感は残るものの、ひとまずは終わったみたいだ。
「……おわった、のか?」
村人が呟く。
「なんとなくだが、あいつはもう来ないと思うぜ」
しばらくの沈黙の後、わあああああっと村人たちが俺に駆け寄ってくる。
「えっ。ちょ、うわぁ!」
真っ先に駆け寄ってきたのはアルカだった。
「シオン!大丈夫?怪我、手当するね!」
「いやーよくやってくれたよ!あんたはこの村の救世主様だな!!!」
されるがままになっているがここで一つ疑問が浮かぶ。
「…あんたらさ、さっきの奴らが俺を狙ってきたのは明白じゃないか。なのになんでこんな…」
俺の質問がおかしかったのか皆キョトンとした後爆笑した。
「なーに行ってんだ、たとえお前を狙ってたとしても村を救ってくれたのは事実だろ?」
逆にこっちがキョトンとする。
やっぱりこの村の人はいい人ばかりだ。
「…………アルカ。俺決めたよ」
「…………本当にいくの?」
翌日、俺はアオイさんが包んでくれた荷物を手に村の入り口にいた。
「またあいつがいつ襲ってくるかわからないし何より俺は自分がなんでここにいるのか知りたい。あいつなら、何か知ってそうだったし」
「そう、気をつけてね」
アオイさんが見送ってくれる中、俺は世話になった村に一礼し歩き出す。
「おっそいなぁ、待ちくたびれちゃったよ」
「…え?なんでお前その格好」
目の前には明らかに旅に出ますよという格好をしたアルカが立っていた。
「私も一緒にいくよ。もっとあんたのこと知りたいし、新しい伝説が生まれるかもしれないから…ね!お姉ちゃん!」
笑顔で頷くアオイさんにしてやられた顔の俺。
「仕方ねぇか…んじゃ、行くぞアルカ」
「うん!」
「じゃぁね!お兄ちゃん!」
後ろからわあああああっと村人達の声が聞こえる。
「いつでも帰ってこいよー!お前の家、作っといてやるから!」
「気をつけろよー!二人ともー!」
自然と頬が緩む。本当にいい村だ。
「じゃぁいってくる」
「いってきます!!!!」
声援に応え、今度こそ歩き出す。
自分の探す、記憶を求めて。
「ん…」
朝、起きるといつもの見慣れた天井がそこにはあった。
まぎれもない自分の部屋である。
「………なんか最近寝落ちが多い気がする」
昨日実香ちゃんのケータイをとりにいったところまでは覚えている。だがそのあとが思い出せない。
「あれ?咲まだ寝てたの?」
珍しく姉の小夜が部屋をのぞいてきた。
「まだって今何時?」
「もうお昼の1時だよ」
「…マジ?」
今日が土曜日でよかった。心のそこからそう思った。
