連続ドラマ『失楽園』(97年)
【日本テレビ系/
毎週月曜よる10時放送】

[登場人物]
久木祥一郎:古谷一行
松原凛子:川島なお美
久木文枝:十朱幸代
久木知佳:菅野美穂
松原晴彦:国広富之

芸能人の実際の不倫もだが、不倫ドラマも昔から多く、それもヒットしてるものも多数。

特に最近だと連ドラのヒット後、
映画にまでなった上戸彩と斎藤工が主演した
フジテレビ系『昼顔』が代表的だ。

2014年の連ドラの放送後、たまたま芸能人の不倫報道が加熱し、
「不倫=悪」という正義を手にした人たちは、
まるで今も姦通剤があるかのように不倫をした人をバッシングした。

2017年に公開された、
映画の『昼顔』のラストは、その世間の声に迎合したのかと思うほどに悲劇的だった。

不倫をした男女が結ばれないだけではなく、男が死亡してしまった。
一部では、ここまでどん底のラストでなくても良かったのではという声もあるほど。

それほどまでに今の世間の不倫への目は厳しいのか、だから…という思いがまだ私の中にある中、CS放送されていた
97年の連ドラ『失楽園』を見た。


役所広司と黒木瞳の映画の方が有名だが、
日テレの月曜よる10時に、
古谷一行と川島なお美という豪華な組み合わせて放送されていた作品だ。

原作は渡辺淳一なので、
古谷一行と川島なお美の絡みのシーンが毎回で、出せない部分以外、ゴールデンタイムの地上波のTVなのに全て脱いで見せていたことに非常に驚かされた。

だが、登場人物の関係性に捻りがあったのが私が一番に評価したいところ!
普通の不倫ドラマならば、愛人と闘うのはもちろん正妻だが、
本作はまさかの、愛人 VS 娘 、といえる

これができたのは、主人公の久木祥一郎の家庭に謎があったから。
妻は、過去に自分が書いた記事のせいで自殺したある男の妻であった人で、
知佳はその男の娘で、自分とは血縁関係がなかった。

もちろん祥一郎は知佳を実の娘だと思い愛情たっぷりに育て、知佳も父親が大好きな女性に成長するのだが、
知佳の心には、昔から、なぜこんなに父を好きなんだろう…?というある種の疑問があった。

父の不倫を知り、自分と父との秘密も知った
知佳は鳥肌ものの驚くべき行動に出る!

これは、知佳役が、『イグアナの娘』でブレイクした翌年で、まだ19歳でありながら既に大女優としての貫禄と実力の持主であった菅野美穂だからできたのでは…、
としか私には言いようがないのだが、

父である祥一郎に抱いてと迫るのだ…。

もちろん、父にはなだめられ未遂に終わるのだが、知佳の狂気と執念…。

(上矢印『イグアナの娘』の菅野美穂さんと川島なお美さん。まさか、2年続けて共演なさっていたとは💦本当に演技派の美しい女優さん同士。)

もちろん、一番悪いのは不倫をして自分の家庭を壊した祥一郎だが、

愛人の凛子から父を取り戻したいからといって、母親のことも大好きで味方でいたいと思っているはずの知佳の思考も常軌を逸したものがあると思う。

それ以外にも知佳は、
凛子の夫(職場が同じ)から暴行を受けそうになったりと、
楽しい年頃の若く可愛い女性がこんなに苦しまなくてはならないのか…と見ていて大変可哀相に思う辛い描写が続く。

反面、知佳の母親であり、祥一郎の正妻の文枝は最後まで凛としていていて、静かに耐えていたのが印象深い。

タイトルからも想像できるように、
禁断の果実を食べてしまった祥一郎と凛子は死を選ぶ。失楽園への追放だ。

「私たちが死ななくてはならないのは、淫蕩に生きたから。死んでいくのはごく自然だ」

といって、
二人は肉体的に繋がりながら青酸カリを飲むのだ。 

まるで、イエス・キリストがアダムとイブも罰するかのような描き方!
不倫を題材にした作品でここまで愛し合う者達を厳しく、そして激しく描いた作品があるだろうか?

その頃のヒットした不倫ドラマといえば、
96年フジ『AGE35』
98年TBS『SWEETSEASON』は華やかに、
実にTVドラマ的な盛り上がりをみせて描かれていたように思う。



この二作は、どちらもハッピーエンドだった。

その間に挟まれて、
日テレが問題作を放送していたことを令和になって知った!

が、

失楽園は他の不倫ドラマとは違い、
男女の愛を描くといっても、

肉体的な繋がりのみに重点を置き、
人間を原始レベルに、ごく動物的に描いたからこその、この滅びるしかなない、といった結末なのだと思う。

主題歌はZARDの名曲『永遠』
詩の始まりが、「朱い果実」なのが、
まさにアダムとイブの世界!!