WOWOW,ドラマW(2010年)
『なぜ君は絶望と闘えたのか』

【原作】門田隆将『なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日』

99年に起きた
山口県光市母子殺害事件
を追っていた記者の記録を元に、
何度も挫折を繰り返しながらも周りの支えにより闘い続けた遺族をフィクションで描いたヒューマンストーリー。

北川 慎一:週刊誌の記者(江口洋介)

町田 道彦:妻子を18歳の少年に殺害された被害者遺族。(眞島秀和)

遺族に不服な判決を出した後、
裁判官自らが遺族に頭を下げた行為
についての主人公の記者・北川の一言。
司法に人間の匂いがしてきたってことだ」

一方の弁護士側は……
「数々の冤罪を暴いてきたのも弁護士だ。
世論が裁判を動かしてはならない

難しすぎますね…

裁判官も検事もみな人間…
それぞれに家族がいるだろうし、ご遺族の思いへの同調が激しくなってしまうのは無理はない。
我々の言葉=世論、に影響されててしまうだろう。

公平な裁判があるのかどうかすら疑問になってくるし、被告人と遺族の間には深い海のようなものがあると思う。
なので、公平な裁判の、その意味すら…??

本裁判では、被告の文通相手の手紙が次々と証拠にされていた場面に見ていて、戸惑いを感じた。

死刑制度については、本事件とは関係なく常に個人的に思うのは、冤罪というものがある以上、恐ろしい制度であるとも思う。

実際にあった事件であり、被害者の方々とご遺族がいらっしゃるので、
本村さんを演じた眞島さんは相当の覚悟で役を引き受けたんだろうなあと。

二人三脚で闘っておられた江口さんとのシーンは、どれも非常に良かった。
特別な戦友のような絆が芽生えていって…。

時々、ホッとするような場面が作られていたのは江口さんのお持ちになられる熱のエネルギーが陽の印象が強いのもあるかなあと。

妻子の記憶がなくなってしまうのか…と呟いた町田に北川が、「記憶は薄れていく。それは仕方のないことだ。でも思いは残るんじゃないかな」と答える場面があり、「思い」という言葉の愛の強さに泣きました!
報道もドラマも同じテレビであり、マスコミ。

報道では伝わりきれない、
というか私が頭に入れて流してしまっていた、
それぞれの事件関係者の思いを想像することができて、私は大変勉強になって良かった。

闘い続けるご遺族の姿を北川と一緒に見てきた後輩の記者(美村里江/ミムラ)が、
「守るひとがいるのは人生を何倍にも充実させると思う」と家庭を持つことに憧れ、優秀な記者に成長しながらも、幸せそうに結婚式を挙げたのも、救いの場面だった。美しかった。


永遠はない、
どころか、実は私達は、明日すらも分からない毎日を生きている。
それゆえに、永遠になれば良いと思うほどの瞬間だった…

ミムラさん、前向きでガッツがあり素敵な役でしたチューリップ赤当時の彼女は20代半ばですが、この頃から社会派が似合っていらしたのだなあとおねがい

9年前のドラマで、
事件からは20年が経ちますが

あの悲惨な事件を風化させない為にも、今一度、少年法61条(加害者が未成年の場合、実名報道はされない、犯した事件の詳細まで曖昧に報道される事かある)
について考えるきっかけとなると思うので、多くの人々に見て頂きたい作品です!!

この新聞記事にて、
加害者に死刑判決がくだされた時の、
ご遺族の本村洋さんのお言葉で特に印象深く思った部分を下記に記す。

『勝者なんていない。
犯罪が起こった時点でみな敗者なんだと思う。

被告は眼前に死が迫り、自分の死を通して感じる恐怖から自ら犯した罪の重さを償い、かみしめる日々がくるんだと思う。
そこを乗り越えて胸を張って死刑という刑罰を受け入れて欲しい。』

事件が起きた時、本村さんの年齢は22歳。

私は当時まだ中学生だったので、
その年齢についてピンとはきてませんでしたが、
22歳をとうに過ぎたいま考えてみると、
当たり前のことですが、22歳はとてつもなく若い。

その若さで、深い絶望と怒りを抱えざるを得なくなり、社会の様々なバッシングにあいながらも長年に渡り司法と闘ってこられたことに言葉が出なくなる…。

死刑判決が出たのは彼が35歳の時。

私は未婚ですが、現在、35歳。
亡くなられた奥様と娘さんはもちろん、
彼自身のかけがえのない若い季節も永遠に失われたのだと、改めて思った。