まだまだ続く

パリダカ編



第2レグ

1月7日(日)
ポルチマン(ポルトガル)~マラガ(スペイン)
リエゾン 15km SS2 67km リエゾン 463km
総走行距離 545km


ヨーロッパ大陸でのファイナルステージが終了
「チーム・レプソル三菱ラリーアート」勢はSS2~5位を占め
ロマ&ペテランセルが総合4位&5位に浮上、増岡は総合8位に



2007年ダカールラリー(正式名称:ユーロミルホー・ダカール2007)は1月7日(日)に第2レグを開催し、ポルトガルのポルティマンからスペインのマラガまで545km、うちSS(競技区間)67kmを走行。このSS2で59分26秒のトップタイムを刻んだカルロス・サインツ(スペイン/VWレーストゥアレグ2)が、総合2位と順位をひとつ浮上。SS9位のカルロス・スーザ(ポルトガル/VWレーストゥアレグ2)が合計タイム2時間21分57秒で前日からの総合首位の座を守り、SS6位のジニール・ドゥビリエ(南アフリカ/VWレーストゥアレグ2)が総合3位に順位をひとつ後退した。

 大会初日にVW勢にトップ5を独占され攻勢に転じた「チーム・レプソル三菱ラリーアート」では、ホアン・ナニ・ロマ(スペイン)が母国の英雄サインツから29秒遅れのSS2位と気を吐き、総合4位に浮上。また、前日は先頭スタートでコースの砂掻き役を強いられた上にパンクを喫して17位と出遅れたリュック・アルファン(フランス)は、ロマと同タイムのSS3位で総合12位にポジションアップ。この2人からわずか2秒差のSS4位となったステファン・ペテランセル(フランス)は総合5位、同じく55秒差のSS5位となった増岡浩は総合8位と、抜群のハンドリング性能を備えた新型『パジェロエボリューション』を駆る4クルーすべてが、ヨーロッパのテクニカルステージで早くもその高い実力を示した。

 SS2はカミオン(トラック)部門の走行を当初から行わない予定にされていたほど道幅が狭く、ツイスティで、起伏も大きなグラベルステージ。WRC(FIA世界ラリー選手権)のスペシャルステージを彷彿とさせるこのコースで一番の冴えを見せたのは、1990年と1992年の2度のWRCチャンピオン獲得を誇るサインツだった。前回大会に続いて同地でのステージを制覇。その後、463kmのリエゾンをこなし、母国スペインのリゾート都市マラガへと凱旋した。

 前日の競技終了後に「明日はいくらかペースを上げていくつもりです」と、三菱自動車チームのドミニク・セリエス監督は語っていたが、大会2日目はまさにその言葉どおりの展開となり、三菱自動車チームが2位から5位までを占拠。快晴に恵まれ、多数の観客が訪れたヨーロッパでの最後のステージで、そのパフォーマンスの高さを鮮やかに示してみせた。

 SSゴール直後の増岡は、「とにかく狭い! まったく気を抜けないコースでした」と語った。「濡れた赤土の路面もあって、すごく滑るんです。使用された山道にはガードレールもなく、一寸先は闇、ならぬ、崖下です。まずはアフリカ行きの切符を手にしないことには始まりませんから、用心深く慎重に攻めました」。ステージ中、何度か川を渡る場面があったが、その一カ所が思いのほか深く、直後に2~3分の間、エンジンの調子がすぐれなかったという。「でも、すぐに復調したので問題はありません。何より、今はマシンとの一体感を感じながら走ることができています。とてもいいフィーリングでドライビングできているので、アフリカが待ち遠しいです」と、得意とするアフリカンステージに向けて目を輝かせていた。

 セカンドベストタイムをマークしたロマは、「最初からアタックをかけていきました。ステージも僕に合っていたようで、とてもいい感じで走れました」と言う。ただし、ゴール手前12km地点でマーク・ミラー(VWレーストゥアレグ2)に追いついてしまうという不運もあった。「道幅が狭くとても抜きに行けなかったので、その後はゴールまで彼の後ろについて走らざるを得ませんでした。それがなければ、もっとタイムを縮められたことは間違いありません。とはいえ、総合4位でアフリカ入りできるのは悪くありません。ライバルのフォルクスワーゲン勢と同じ第1グループになるので、三菱自動車チームにとっても戦略の幅が広がることになりますからね」

 前日の順位に従って17番手の後方スタートとなったアルファンは、狭く短いステージにもかかわらず3台のライバルをパス。ロマと同一タイムでゴールに飛び込んだ。「昨日喫した出遅れを、いくらかでも挽回しておく必要がありました」と、ディフェンディングチャンピオンは言う。「ただし、アフリカに渡る前に万が一のことがあってもいけません。ある程度は自制してアタックをかけていったのですが、いいポジションでフィニッシュすることができ、昨日の鬱憤が晴れました。狭い山道で3台のマシンを抜いてきましたが、彼らが紳士的に道を譲ってくれたのもありがたかったです」

 2004年大会と2005年大会に続くダカールラリー3勝目を狙うペテランセルは、4番手タイムを刻んで総合順位を3つ上げた。「WRCのような今日のコースは、難しかった反面、ドライビングを楽しめました。無理にプッシュするつもりはありませんでしたが、アフリカ最初のステージでは6番手以内でスタートしたいと考えていたので、まさに狙いどおりの結果です」と、してやったりの表情を見せていた。

 三菱自動車のモータースポーツ統括会社MMSPの鳥居勲社長は、「いい一日でした。我々は過剰なアタックは仕掛けませんでした。ヨーロッパにいるうちにメカニックを疲れ果てさせることもしたくありませんでしたし。それでもいい位置につけてヨーロッパを離れることができます。アフリカ最初のステージで先頭スタートとなるのは決して得策でもないので、我々の『パジェロエボリューション』4台の位置は上々です」と語っている。

 なお上位陣では、4回のダカールラリー総合優勝を誇るアリ・バタネン(フィンランド/VWレーストゥアレグ2)が、SS2のゴール手前17km地点の川で、浸水によるエンジントラブルに見舞われた。54歳の大ベテランはリタイアこそ免れ、約1時間半を失いながらもステージをフィニッシュ。しかし、大会初日にトップ5を独占したフォルクスワーゲン勢の一角が早くも崩れることとなった。

 ポルトガルのポルティマン近郊で行われたSS2を終えた競技車両は、その後463kmのリエゾンを走行。スペインに入国し、アンダルシア地方に横たわるロンダ山脈を越えて、美しい「コスタ・デル・ソル」(太陽の海岸)に面したスペイン南部のマラガに到着。ここで大型フェリーに乗り込んで夜間に地中海を渡り、モロッコのナドールからいよいよアフリカ大陸へと上陸する。

 大会3日目となる1月8日(月)に行われる第3レグは、ナドールからアトラス山脈の北を行く205kmのリエゾンを走った後、252kmのSS3を実施。山脈の間を縫うように南下していくステージは、比較的フラットな土漠で行われるが、道筋の分岐が多く、精度の高いナビゲーションが要求される。また、全開で突っ込めばアクシデント必至の「ワジ」と呼ばれる干上がった川の窪みが無数に点在する。総走行距離は648km。アフリカンステージならではのダイナミックなロケーションでの戦いがついに始まる。

■「チーム三菱ラリーアート・タイランド」のポーンシリチャンがSS30位でフィニッシュ
 ラリーアートの全面的なバックアップを受けて2007年ダカールラリー出場を果たした「チーム三菱ラリーアート・タイランド」のマナ・ポーンシリチャンは、T1ガソリン仕様の『レーシングトライトンエボリューション』を駆ってSS2を総合30位でフィニッシュ。総合順位では、前日の92位から79位へとポジションアップを果たした。「今日はまったくのトラブルフリーで走れました。とても滑りやすく、難しいステージでしたが、母国タイの道にも似ていて、楽しめました」と語った。
 T1ディーゼル仕様の『パジェロ』で出場する「チーム三菱ラリーアート・チャイナ」のリュー・ビンは、ウォータースプラッシュでエンジンに浸水し、約10分をロス。それでもSS54位でフィニッシュし、こちらも総合順位を上げて64位に上げてきた。
 なお、三菱車プライベーターの最上位はロシアのアレクシー・ベルクート(『レーシングトライトンエボリューション』)で総合27位。初日は21位につけたブラジルのクレバー・コルバーグ(『パジェロ』)はSS2走行中に転倒。幸い、再スタートできたものの、総合29位に順位を下げている。

■『パジェロ』で出場の池町佳生が10台抜きの快走
 SS1ではゴール直前でのスタックに泣いた池町佳生選手(『パジェロ』)だが、SS2で一気に挽回。狭く短いステージで10台以上の先行車をかわしてSS32位でフィニッシュし、総合順位を51位に上げてきた。「道幅が狭いうえに滑りやすく、自分が走るだけでも大変だったので、先行車を抜くのはもっと大変でした。でも、これだけ走れて、気分はいいですね。それに『これでようやくアフリカへ行ける』という嬉しさでいっぱいです」と、充実した表情を見せていた。
 日本人プライベーター最上位は前日に続いて三橋淳選手(トヨタ・ランドクルーザー)で総合43位。2番手に51位の池町選手が上がり、山田周生選手(トヨタ・ランドクルーザー)はやや順位を下げて60位、元F1ドライバーの片山右京選手(トヨタ・ランドクルーザー)は109位、前日はメカニカルトラブルで大幅に遅れた大ベテランの篠塚建次郎選手(日産パスファインダー)はSS71位、総合134位まで浮上してきた。

■サポートカー『デリカD:5』もフェリーで地中海を渡る
「チーム・レプソル三菱ラリーアート」のサポートカーとして2007年ダカールラリーに登場した、今春発売予定のワンボックスタイプのミニバン、新型『デリカD:5』。チーム機材を満載し、チームスタッフも乗車して、APRC(FIAアジア・パシフィックラリー選手権)で活躍する田口勝彦(ラリーアート)のドライビングにより快調に走行を続けている。「ポルトガルのポルティマンからスペインのマラガまで、今日も400kmを越える移動ですが、『デリカD:5』は快調そのもの。視界がよく、運転が楽なので、ドライビングの負担が少なく助かっています」と田口は言う。「マラガの港でフェリーに乗り、『デリカD:5』も地中海を渡ります。もうすぐアフリカ。ダカールラリーの本当の戦いがいよいよ始まります。僕自身、とても楽しみでワクワクしています」



総合成績【大会2日目1月7日(日)第2レグ終了時】

順位 ドライバー   車両     タイム

                              2位以下はトップとの差

1 C・スーザ VW・レーストゥアレグ2 2時間21分57秒

2 C・サインツ VW・レーストゥアレグ2 45秒

3 G・ドゥビリエ VW・レーストゥアレグ2 2分12秒

4 J-N・ロマ 三菱パジェロエボリューション 3分29秒

5 S・ペテランセル 三菱パジェロエボリューション 3分55秒

6 G・シシェリ BMW X3 4分49秒

7 M・ミラー VW・レーストゥアレグ2 6分27秒

8 増岡 浩 三菱パジェロエボリューション 6分47秒

9 N-S・アルアティヤ BMW X3 8分33秒

10 C・ラヴィエイユ 日産ピックアップ 9分24秒

12 L・アルファン 三菱パジェロエボリューション 9分27秒

13 J-L・シュレッサー シュレッサー・フォード 13分02秒

18 R・ゴードン ハマー 18分08秒

27 A・ベルクート 三菱レーシングトライトンエボリューション 24分15秒

29 K・コルバーグ 三菱パジェロ 24分51秒

35 J・クラインシュミット BMW X3 32分54秒

43 三橋 淳 トヨタ・ランドクルーザー 37分27秒

51 池町 佳生 三菱パジェロ 44分21秒

60 山田 周生 トヨタ・ランドクルーザー 50分15秒

64 リュー・ビン 三菱パジェロ 53分45秒

79 M・ポーンシリチャン 三菱レーシングトライトンエボリューション 59分50秒

109 片山 右京 トヨタ・ランドクルーザー 1時間30分59秒

113 A・バタネン VW・レーストゥアレグ2 1時間37分14秒

134 篠塚 建次郎 日産パスファインダー 6時間50分59秒


1位のタイムは第1レグからのSS合計所要時間とペナルティーの合計


SS2・成績

順位 ドライバー   車両          タイム

                          2位以下はトップとの差

1 C・サインツ VW・レーストゥアレグ2 59分26秒

2 J-N・ロマ 三菱パジェロエボリューション 29秒

3 L・アルファン 三菱パジェロエボリューション 29秒

4 S・ペテランセル 三菱パジェロエボリューション 31秒

5 増岡 浩 三菱パジェロエボリューション 1分24秒

6 G・ドゥビリエ VW・レーストゥアレグ2 1分34秒

7 G・シシェリ BMW X3 1分50秒

8 M・バルボサ プロト・ドスード 1分50秒

9 C・スーザ VW・レーストゥアレグ2 1分53秒

10 C・ラヴィエイユ 日産ピックアップ 3分06秒

12 J-L・シュレッサー シュレッサー・フォード 3分53秒

14 M・ミラー VW・レーストゥアレグ2 4分24秒

15 N-S・アルアティヤ BMW X3 4分28秒

16 J・クラインシュミット BMW X3 6分58秒

22 A・ベルクート 三菱レーシングトライトンエボリューション 7分59秒

30 M・ポーンシリチャン 三菱レーシングトライトンエボリューション 9分25秒

32 池町 佳生 三菱パジェロ 9分25秒

54 リュー・ビン 三菱パジェロ 11分57秒


1位のタイムは第1レグからのSS合計所要時間とペナルティーの合計