「大阪にな、友人がおるのだ」
夕食時。
家族で東京都・月島の誇るもんじゃ焼きについて温かく談義していたときのことでございます。姉上が唐突に会話に割り込んできました。
ですが、それきり姉上は口を地蔵のごとく閉ざしてしまいます。
私は気づきました。姉上は沈黙をもって私に発言を促しているのです。
「姉上。その御友人はどのようなお方なのでしょうか」
「うむ、そうだな。大阪人だ」
それはもう知っています。
「お前も知ってのとおり、もんじゃ焼きとは東京の食べ物だ。無論、大阪では縁遠いものになる」
「不勉強ながら、それは存じ上げませんでした。原住民における砂糖のようなものでしょうか」
「だから私はその友人にもんじゃ焼きを勧めてみたのだが、見事に反発されてな。おかげで私もそやつの思考に染まってしまったよ」
それはそれは。私は失礼のない程度に笑みを作ります。
「では、姉上は今ではもんじゃ焼きのことをどう捉えておいでですか?」
「ふぅむ、そうだな…… ゲロ焼き?」
姉上姉上。
いけません。それは皆があえて考えまいとしている 禁忌 です。