アベノミクスは大成功!

―成功の真相―


 まあまあ、そう言わず最後まで読んでみてください。
アベノミクスを良く思っている人、あなたはアベノミクスの意味するところを本当に知っていますか?

アベノミクスを毛嫌いしている人、なぜ嫌いなのか合理的に説明できますか?

私はアベノミクスが嫌いです。これまでは何となく、でした。でも紙と鉛筆でアベノミクスのやっていることを計算していくと、とんでもないことが分かってきました。それをこれから書いていきます。アベノミクスの好きな人、嫌いな人、アベノミクスの意味を知るというのは実に楽しいことです。さて、紙と
鉛筆を用意したら、さっそく始めましょう。             


<目次>
1 為替マジック
2 円安政策のおかげで株高になったのか
3 円安と異次元緩和の組み合わせは泥棒の七つ道具
4 アベノミクス錬金術

1 為替マジック

 借金で苦しんでいる男が金を盗んで捕まりました。どこにでもありそうな話です。捕まりさえしなければ盗んだ金で借金を返せたでしょうね。

今、日本という国でこの事件と同じことが行われています。


 ドル/円が最も円高になったのは201110月に75.54円だそうです。

 さてあなたの資産が100万円あったとしましょう。その時点でドルを買うと、13,238ドルになります。

 今日(718日)のドル円は、当時とはだいぶ円安になっていて、104.80円です。今日、その13,238ドルを円に換えると1,387,342円になります。実に38%以上の儲けになります。

 絶対的な尺度とは言えませんが、今、最もまともな金利政策を行っているドルを貨幣の価値の基準として考えていきます。

 そうすると38%以上の儲けに見えてもドルで考えれば同じ13,238ドルになります。ドル建てならば海外との物の売り買いをしても全く変わりがないことになります。

 これは簡単な原理です。円で換算した時には増えたように見えても、円安になっているのでドルに換算すると変わらない、ということです。

 為替は変動するので、一見増えたように見えても、実はそうではないこともあり得るということです。これが為替で起こるマジックの一つです。

 さて、当時あった資産の100万円をずっと円で持っていたとすると、当時のドル換算の価値は13,238ドルでしたが、今では9,541ドルにしかなりません。実に28%も減っています。円安になったのだから仕方がない、のでしょうか。でも円安に誘導したのは日本政府です。自然にそうなってしまったのならば仕方がないとあきらめるのもうなずけますが、この円安は人為的に起こされたものです。

 あなたが損した分は何処に行ったのでしょうか。消えたのでしょうか。でもお金って消えませんよね。あなたが千円使うと、誰かが千円の収益を得ています。あなたの損失分は、誰かの利益になっています。


<あなたへの第1の質問>

 10万円だった給料が20万円になった。10万円も給料が上がったと喜んでいたら、実は物価も2倍になっていて、実質賃金は上がっていなかった。

 アベノミクスのおかげで給料が上がったと言うあなた、実は給料の額だけ見ていて、物価の上昇を考慮していないのではないですか?


 2 円安政策のおかげで株高になったのか

 円が安くなると同時に日本の株価は上昇しました。

  日経平均株価

   2011/11  8,434円(ドル円 77.57円)

   2015/07  20,585円(ドル円123.24円)


 安倍政権が登場するころは異常な円高の状態にあったということになっています。その円高を是正するために円安誘導の政策が始められました。しかし、その内容は是正というより、通貨切下げとまで言われるような状況でした。50%を超える円安になったのですからそれも当然のことです。

 私はその頃海外に出かけることがあったのですが、円レートは悲惨な状態でした。とにかく日を追うごとに安くなるのですから誰も円を持ちたがらない。まるで紙屑のような扱いでした。円安政策は間違っているのではないかと疑問を持ったのです。

 さて、円安になったら株価が上がるのは当然なのです。

 何故って、1ドル80円が120円に円安になったとします。株式は世界中で取引されています。その世界中のマーケットで1株の価値が1ドルと思われていれば、円価格は80円から120円に上昇します。これは見かけの上昇で、ドル換算すれば同じ1ドルです。

 これに加えて、円安になれば輸出が増え企業業績が上がるという期待と、政府によってデフレからの脱却、2%インフレ(右肩上がりに上昇)政策への期待を与えられたわけですから、株価が上昇しないわけがありません。8,434円だった日経平均値は20,585円まで、実に2.44倍に上昇しました。これをドルベースでみても、108.7ドルから167.0ドルへ、53.6%上昇しています。

 こと、株価の上昇という点においてはアベノミクスは成功したと言えます。

 しかしながら、これは株式という商品だけの話で、円安になったのですから紙幣の価値は下がっているのです。


<あなたへの第2の質問>

 あなたは株式を持っていますか。

 80円だったあなたの株が120円になっていても価値は変わっていません。そうなっていれば株式の価値は目減りしていません。少し儲けが出ているかもしれませんね。

 80円くらいの時にドルを買っておけばだいぶ儲かったなと思っていますか。実は買っておいたとしても価値は変わらないのです。そして、当時と同じ1万円札は同じ1万円の価値ではなく、50%も下がっているのです。

 気づいていないでしょうね。それが為替マジックです。


3 円安と異次元緩和の組み合わせは泥棒の七つ道具

 空前の円高の中、円高の是正(円安への誘導)、金融緩和、デフレの克服=2%成長を謳ってアベノミクス政策が始まりました。

 円安と金融緩和は、市中に回っているお金の量を増やせばできます。これを行うのに日銀による国債の購入が始まりました。国債は信用度が高いのでお金と同じに流通はしますが、お金とイコールではありません。そしてお金と根本的に違うのは、国債は政府に貸したお金(借金)の証書である、ということです。

 さて、国債を買い取るために日銀は紙幣印刷機をフル稼働させます。刷り上がった日銀券で国債を買い取っていきます。金融緩和という名目で借金の債券を買い戻していたのです。

 しかし、例えば経済の実態の裏付けがないままに、日銀券の発行量が2倍になったとしたら、日銀券の価値は変わるでしょうか。絶対尺度の問題はありますが、価値は1/2になるでしょう。こうして国債の買い取り=市中への日銀券流通増、を行うことによって、金融緩和と円の価値が下がっていく円安が同時並行的に起こります。

 日銀による国債の買い上げ額は年間80兆円になります。日本の税収は40

50兆円ですから、いかに異例のスピードと額かがわかります。こうして買い上げられた国債は2016年初頭には1/3を超えてきたそうです。額にすると300兆円以上でしょうか。

 国債は、国の債務、借金です。お金を貸しているのは、国民、企業です。国債なんか持っていないという人もいるでしょうが、銀行にお金を預けて(貸して)その銀行が国債を買っていれば、直接ではないにしろ、銀行はあなたのお金を国債を買うことによって運用(国に金を貸す)しているわけです。

 ところで、政府と日銀は同じ側の同じ組織です。日銀が国債を買い取っているというのは、政府が国債を買い戻しているのと同じことです。

 ここで問題なのは、その資金のことです。政府が正当な税収の中からきちんと返済しているのならばいい(円安は起こらない)のですが、日銀の紙幣印刷機を回して返済しているとなると話は違ってきます。

 国債の買い上げと同時に急激な円安現象が起きているということは、経済実態の裏付けのない、印刷機を回しているだけの紙幣で国債を買い上げている(返済)ということであり、国債の返済に使われているお金は、円安になることで国民の財産が目減りしている分から支払われているということ、すなわち、非常に巧妙に仕組んだ罠で、国民の財布から抜き取った金を、自分(政府)の借金の返済に充てているということになります。

 日銀が印刷機を回しただけの紙幣で国債を300兆円買った(返済した=借金が消えた)ことによって、300兆円が市中に出回り、円の価値が落ちて円安が起こる。そして、円安による円資産の目減りが300兆円分起きる。

 この部分はちょっと分かりにくいかもしれませんが、紙と鉛筆でじっくりと理解を進めてください。この巧妙な部分こそがアベノミクスを理解する肝心な点なのです。

 というわけで、円安によるあなたの資産の目減り分は、ちゃっかり政府がいただいていたのです。


<あなたへの第3の質問>

 冒頭に書いた「借金で苦しんでいる男が金を盗んで捕まりました。どこにでもありそうな話です。捕まりさえしなければ盗んだ金で借金を返せたでしょうね。」とアベノミクスはどう違うのでしょうか。

 巧妙ゆえにばれずに盗み、その金で借金を返している、のでは?

 借金は、収入の中からちゃんと返さないと無くならない、という大原則を念頭に、考えてみてください。


4 アベノミクス錬金術

 アベノミクスの成功、不成功の議論の中で、いつも不思議に思っていたことの一つに、「アベノミクスが成功というのならば、何故ほかの国は同じことをしないのか?」という疑問がありました。

 ここまで解いてくるとやっと分かりました。空前の円高という“時期”と国内保有率の高い国債、経済力の強い日本、為替マジックの理解できない国民という“条件”でしかできない方法だったのです。

 アベノミクスは、この千載一遇の機会を得て、膨大な政府の借金を国民に肩代わりさせることに成功しつつあります。

 円高は“悪”、円安は“善”キャンペーンを張り、政府の借金を国民一人あたりの借金と換算するダマシ術を駆使し、見事に消えないはずの借金を消しつつあります。

 もしこれが他の国で実施され、その実情が暴露されたら、おそらく政府もその支持者も皆殺しにされてしまうでしょう。方法が間違っているということに加えて、ほかの国では恐ろしくてとても実施できないのがアベノミクスです。独裁者と独裁政権でしかできない暴挙ということです。

 まあ考えてみれば当然のことでしょう。自国の通貨が安くなる、弱くなるのを喜ぶ国民はいません。強い日本を取り戻すというのは冗談でしょう。

 金利をマイナスにまで落としておいて、2%インフレはないでしょう。銀行をはじめとする金融の仕組みが崩壊してしまします。

 しかし、膨大な政府の借金を国民に肩代わりさせてしまうということについては大成功です。いまだに全く気付かれずに済んでいるおかげで、この選挙では大勝しました。まったく無知の民、アホの民のおかげです。

 消費税増税の延期や、たかが1%程度の賃金引き上げなど糞よりも価値がない。あなたの財布から膨大なお金が抜き取られていたのに気づいていないのです。