アメリカでビジネスをするということは、常に訴えられるリスクがあるということだ。日本酒の輸入業者や製造会社で20年以上働いた僕の経験から、いくつかの実例を紹介しよう。


消費者から訴えられる場合:

米国産酒メーカーに勤めていた時、「商品の容器に有害なペイントを使用している」として、カリフォニア州法違反で訴えるという通知を受け取った。差出人はサンフランシスコ在住の弁護士で、通知には「カリフォルニア州民を代表して訴える」などと書いてある。


問題になったペイントは、日本では普通に使われているプリント瓶用のペイントで、鉛が含まれていることから、カリフォルニアではその年から、使う場合は、発がん物質を使用しているという表示をしなければならなくなったのだ。結局、こちらも弁護士を雇い、訴えを取り下げる交渉をしたのだが、弁護士に支払う費用等2万ドル(約280万円)近くかかった記憶がある。


アメリカ人の消費者から、日本酒のキャップを開けようとして指を負傷したという苦情が来たことがある。日本酒のキャップには「矢印の方向に回してください」などと日本語で書いてあるものが多く、日本人にとっては当たり前の開け方だ。が、アメリカ人の場合には、キャップと瓶の間にツメを差し込んで開けようとしたり、予想できないことが起きることがある。幸いケガは軽微で、見舞いに持参した数本の酒で喜んでくれ、訴えられることはなかったが、訴訟になってもおかしくない事例だ。


他にも、酒を開栓しようと思ったら、「瓶が爆発して服やベッドが汚れた」という苦情を受けたことがある。ただの純米酒で瓶が爆発とはありえないが、実際に損害が出たというので、クリーニング代を支払ったことがある。


「味がおかしい」という問い合わせには、問題の商品を回収し、成分分析して報告することが大事と思う。


次のコラムでは、従業員から訴えられる場合、他の会社から訴えられる場合について説明しよう。