BAR 人生のカラクリ

BAR 人生のカラクリ

バーでマスターと人生の謎について議論してみた。

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「ここまでのところ、消化できてますか?」
マスターが聞いてきた。

神が、時間と空間と人間を作り出した。

これは、なんとなく消化できる。

人間は、自分が誰なのか忘れた存在。

これがいまいちピンとこない。

マスターは言う。

「違う言い方をすれば、人間は、自分が神であることを忘れた存在です」

「いつかは必ず自分が神だったことを思い出します。必ず」

つまり、人間=神ということ?

「いえ正確には、すべて=神。ですね」

僕もいつかは自分が神だと思いだすのだろうか?

「そうです。でなければ神は存在することが出来ませんから」

僕は神?

日々の生活だけでアップアップしている、こんなちっぽけな僕が神なんですか?

スティル・クレイジー


マスターは言う。

「最初に結論から言います。疑問な点は後から質問してください。」

「神は存在します。白い服を着て白い髭を生やした老人のような神ではありません。姿、形はありません。意識だけが存在しています。」

「表現に矛盾がある場合もありますが、わかりやすい表現を使ってお話しします。」

「最初に時間も空間も何もない世界に『自分が存在している』という意識だけがありました。」

「自分しかいない。比べるものが何もないと自分というものも存在することが出来ません。そこで神は時間と空間と人間を作りました。正確にはそういう概念を作ったということになります。」

「自分しかいない世界で、自分を意識するために神はミラクルな手法を編み出しました。それは無理やりに自分を分割して、自分が誰なのか忘れた存在を作り出したんです。」

「それが人間。つまりあなたになります!」
ヴィーナス・ジャズ


マスターは言う。
「超能力、幽霊、UFO、これらの疑問を解くためには、まず最初に神の存在について解明する必要があります。逆に言うと、神の存在を解明できたら、これらの疑問は全部解明できます」

神は存在するのだろうか?
もし存在するとするなら、疑問なことがたくさんあります。

世界のあちこちで絶え間なくある戦争や紛争。

犯罪や災害などで何の罪もない多くの人が亡くなったりする。

もし神が存在するのなら、どうしてこれらのことを放置するのだろうか?

そもそも神がこの世界を作ったのなら、どうして最初から平和で安全な世界を作らなかったのだろうか?

人間が堕落したから神は怒って世界を水没させたというノアの方舟伝説があるけれど、その人間を創造したのは神ではなかったのか。

自分で作っておいて、気に入らないからと破壊するのなら、そんなのまるで子供の気まぐれと同じじゃないか。

と、僕は常々思っていた。

オトナJAZZ


僕は幼いころから、自分のいる世界が不思議でならなかった。


太陽はどうして落ちてこないのだろう?

犬や猫は、どうして自分を犬や猫だとわかるのだろう?

蝶々は誰から飛ぶことを教わるのだろう?


こういったことを大人に質問すると、必ず「大人になればわかる」と言われ、その場では教えてもらえなかった。

僕は、大きくなればだんだんとそういった疑問がわかるようになるのだと思っていたけれど、そうではなかった。

むしろますます不思議なことが増えていくばかりだった。


超能力は本当にあるのか?全部インチキなのか?

幽霊はいるのか?いないのなら、怪談話は全部作り話なのか?

UFOは本当に飛んでいるのか?宇宙人はいるのか?写真や動画は全部インチキ?

死んだらあの世に行くのだろうか?来世は本当にあるのだろうか?全部空想の話?

そして究極の疑問。神は存在するのか?


本で調べてみても、いろんな人がいろんなことを書いているばかりだった。

そして、こういった話題を真剣に話し合うのは、友達でも何となく抵抗があった。

「お前はバカか?そんなもの、本気で信じてるのか?そんなものが存在すればおもしろいなっていうジュークだよ。みんな本気で信じてるわけないだろ!」

そう言われるんじゃないかって思ってた。


でも知りたかった。本当のところはどうなんだと!

JAZZ ME NY!



マスターは、カウンターに赤のカクテルと青のカクテルを並べた。

「ここから先の議論は、ちょっと覚悟がいります。これまでの価値観を根底から覆すことになりますからね。」

マスターは得意のニヤリ顔で言うと、2つのカクテルに手を添えた。

「覚悟があるなら赤のカクテルを、そうでないなら青のカクテルを一気に飲んでください。」

どこかで見たような状況だと思ったら、「マトリックス」だった。
モーフィアスがネオに決断を迫る場面だ。

僕はマスターに赤を選んだらどうなるのかと訊いた。

「真実をお話しします。青を飲んだらこのお話はここまでです。後は当たり障りのないお話をします。」

僕は迷わずに赤のカクテルを一気に飲み干した。
当たり障りのない話はもう飽きた。

僕はずっと真実が知りたかった。

ゆったりJAZZ



マスターがまたまた言い放つ。
「もうひとつ言いますとね、あなたは生まれてもいないんですよ」

いやいや、そんなことないでしょ。
僕は間違いなくお袋から生まれてますよ。
顔だってお袋そっくりだっていつも言われますよ。

「じゃあ聞きますが、あなたは生まれた瞬間の記憶ってありますか?」

いや、それは覚えてないですけど、生まれた直後の写真はありますよ。
親父が撮ったやつ。

「それはね、フェイクなんです。あなたの感覚を聞いています。」

感覚ですか?

「気が付いたら生きていた。そうじゃないですか?」

確かに。気が付いたら僕という存在がいたっていうのが実感かも知れない・・・

SLOW JAZZ



死は存在しないとマスターは言う。

僕は祖父母の葬儀に参加し、人の死というものを知っているつもりだ。
小学生の頃は、虫を殺した経験もある。
生き物は、いつか必ず死ぬ。

そうではないのか?

マスターが僕に聞く。
「あなたは死んだことがありますか?」

ないない。あるわけない。死ぬかと思ったことは何度かあったけど。

「でしょ?あなたは大切な事実を見落としてる。あなたはこれまで一度だって死んだことがない。死ぬのは全部、あなた以外だ」

いや、それはわかりますよ。でも、だからといって死が存在しないということにはならないのでは・・・

「あなたは、心のどこかで自分だけは絶対に死なないって感じていませんか?」

たしかにそういう感覚は、あるっていえばある。

自分だけは絶対に癌にならないとか、健康診断で引っかからないとか、根拠もなく思ってる部分がある。

あと、自分だけは歳を取らないとかの感覚も・・・

「主人公は、どんなピンチでも絶対に死なないんですよ。主人公が死んじゃったらドラマはそれで終わっちゃいますからね」

マスターの言わんとするところがわからない。でも新鮮で楽しい。

レミーマルタン ルイ13世



マスターは言う。

「幽霊はなぜ服を着ているのかという問題は、幽霊が存在するという前提が必要。幽霊が存在するためには、死が存在するという前提が必要。だから、この問題を解くには、我々がどの位置に立って議論をしているかということをハッキリさせないと解けない。」

僕は、密かに驚いた。
あくまで表面的にはフムフムと頷きながら。あからさまに驚くと、自分のレベルの低さを露呈してしまうと恐れた。

僕はいつだってそうだ。他人に一角の人物であると思われたがってしまう。ありのままの自分ではバカにされると思ってしまう。

だから知っていないことを話されても、なんとなくはわかる的な顔をする。
嫌な性格だと思うが治らない。

まぁそんなことはどうだっていい。

それよりも、「死が存在する」という言い方に驚いた。
死が存在しないという前提も有りうるということだろうか?

僕は素直にマスターに訊ねた。
マスターには人を素直にさせるオーラのようなものがある。
するとマスターはサラリと答えた。

「究極の立ち位置に立つと、死は存在しませんね。」

おぉ~話が哲学的かつスピリチュアル的になってきたぞ!
僕はこういう議論が大好きだ。

ジブリ・ジャズ [ All That Jazz ]


ある日、マスターに聞いてみた。

「幽霊はなぜ服を着ているんですかね?」

心霊写真というものがテレビや雑誌で紹介されるときがある。
どう考えても幽霊としか思えないものが写っている。
でも必ず服を着ている。裸の幽霊なるものを見たことがない。

これがよくわかない。
服も幽体化するのだろうか?


ターミネーターはタイムスリップするとき、裸で現れる。
服はタイムスリップできないらしい。

なんとなくそれっぽくってリアルな設定だ。

でも幽霊は・・・・

マスターはいつもの涼しげな眼差しをこちらに向けてニッコリと笑った。

「この問題は結構レベル高いですよ!」

カフェで流れる恋歌 ジャズピアノ



他人だから話せるということがある。
家族や友人たちには話せないが、他人だったら話せる。

例えば哲学的な「人生について」とかスピリチュアル的な「宇宙人は何をしに地球に来ているのか」とか。

話せばたぶん、思いっきりバカにされるか鼻で笑われるだろう。翌日からの家庭生活や社会生活に支障が出るだろう。

でも、青臭い、くだらない、答のない話題を遠慮なく議論できる相手がいると楽しいと思う。

ほとんど友人がいない僕は、そういう議論がしたくなるとバーに行く。

バーの名前は「BAR 人生のカラクリ」

カフェで流れるジャズピアノ