休みが多く、

 

これ読み始めて、確かもう

 

4,5回目の授業ですが、

 

やっと読み終わりました。

 

 

オタク仮面

 

  第2話  馬の嘶き

 

「知ってる?ジョアナ。

 マルタがゾンビーに襲われたって。」

 

「うん、夕べ電話で直接聞いた。

 蝿の化け物も出たって・・・」

 

馬の世話をしながら、同僚のイザベルと話すジョアナ。

 

「変なのが現れて、

 みんな退治してくれたらしいんだけど、

 マルタの車 までマシンガンで撃ちまくって

 スクラップにしちゃったんだって。」

 

「ひどいわよねえ。

 助けてくれるのはありがたいけど、

 もっとスマートにできないのかしら。」

 

「ほんと、どこの馬鹿なんだろう。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ジョアナは、いったん家に帰り、弓道の練習へ行く準備をして いると、携帯がなった。さっきまで話していたイザベルからだ。

 

「ジョアナ、馬の様子が変なの。すぐ来て!」

 

「え、さっき何ともなかったのに・・・ 

 わかった。すぐ行く。」

 

 厩舎へ戻ると、入口にイザベルが倒れている。かけよって抱き 起こすが、気を失っている。

 

「しっかりして!イザベル!!」

 

声をかけても意識は戻らない。奥からは馬が暴れて 鳴いているのが聞こえる。ジョアナはイザベルを飼葉の上に寝かせると、奥へと急いだ。 すると、馬を囲んでゾンビーたちがうじゃうじゃ・・・ その中で、馬の頭をした大男が雌馬に ちょっかい出している。

 

「何やってんのよ!あんたら!!」

 

「ヒヒーン、邪魔するなよ。

 俺の嫁さんにするんだから。

 ヒヒーン、ゾンビーども! 

 やっちまいな!!」

 

馬男は嫌がる雌馬に頬ずりしながらそう命じると、ゾンビーたちはジョアナに 向かってきた。

 

「なめんじゃないわよ!」 ビシッ! 「あれ?」

 

勇敢にも、ゾンビーに蹴りを入れるがまったく効かない。やがてゾンビー 達にじわじわ囲まれ、逃げ場を失う・・・ ジョアナ絶体絶命! と、

 

 たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中 ・・・

 

ポケモンのOPが聞こえてきた。やつか?

 

「ゾンビー、ゲットだぜ!!」

 

厩舎の入口からさす光の中に浮かぶシルエット。両手を腰に 当て仁王立ちのオタク仮面。しかしどこか貧弱だ。

 

「貴様か。出来損ないのくせに

 完成改造人間の蝿男を倒すとはたいしたもんだ。

 だが、俺はそんなに柔じゃねえぜ。」

 

「確かにお前たちに中途半端な改造をされたが、

 俺は自らを さらに改造し、

 オタクパワーを自在に操れるようになったのだ。

 お前たちの科学力より俺の オタクパワーのほうが

 優れていることを見せてやる。」

 

 腰のホルダーからCDを取り出し、バックルに入れる。

 

「変身!パックマン、スタート!!」

 

 光の中で、黄色い巨大な球体へと変わっていき、 巨大パックマンが現れ た。 

 

 パク、パク、パク、パク・・・

 

そのまま次々にゾンビーを吞み込んでいく。脇でやり取りを見ていたジョアナも、

 

「マジ?」

 

「な、なんじゃこりゃあー・・・」

 

どんどんゾンビーたちが吞み込まれ減っていくのを目の当たりにしてあせる馬男。

 

「くそー!

 そんなレトロなキャラクターに

 やられてたまるか!」

 

「そういうあんたも

 ミノタウロスの馬版。

 かなりレトロじゃん・・・」

 

 小声で突っ込むジョアナ。それを聞いた馬男は怒り、ジョアナに詰め寄る。 

 

「なんだとー、この小娘が!」

 

ジョアナを助けようと馬男の後ろから迫るオタク・パックマン。それに気づいた馬男 は体も馬に変え、後ろ足で蹴り飛ばす。窓を突き破り外へ放り出される 黄色いボール。地面に叩きつけられた反動で、バックルからCDが飛び出し変身 が解除されてしまった。

 

「ふん、所詮俺様の敵ではないわ!

 止めを刺してやる。」

 

 馬男は元の半馬半人の姿に戻りオタク仮面を追って表 へ出る。やっと立ち上がったオタク仮面に向かって猛ダッシュ!オタク仮面はよろけながらも 新しいCDを取り出しバックルに挿入した。

 

「変身!戦国無双、スタート!」

 

今度は甲冑の武者姿、手には大薙刀を持っている。 迫り 来る馬男を、脇構えで待ち受ける。再び全身馬の姿になり、襲い かかる馬男。すかさず逆袈裟に切り上げるオタク武者。

 

 ズバッ!

 

「ウッ・・・

 そ、そんな馬鹿な・・・」

 

 ツーっと首から一筋の血が流れ地面に滴る。 そしてそのまま首は 切り口に沿って滑り落ちた。

 

 ドサッ・・・

 

それを背中で聞きながらオタク武者は、しばし切り上げた姿勢のままポーズを 極め、勝利の余韻に浸っている。

 

『俺、かなりかっこよくね?』

 

心の中でそうつぶやいた瞬間、

 

 ガブッ!

 

「んごっ・・・

 いってええええええええ!

 なんだあ?」

 

 振り返ると馬男の顔。死んだはずの馬男の頭が飛んできて、オタク武者の尻に噛 み付いたのだ。

 

「くそっ、離れろ!死に損ない!!」

 

必死に薙刀の柄で馬の頭を突くが、馬男は白目を剥きながらも 放さない。そこへ、馬の糞をさらうためのスコップを持ったジョアナが後ろから近づ き、

 

「しつこいんだよ、てめー!」 

 

 ボカッ!!

 

 思い切り馬男の頭を引っ叩いた。

 

「ホゲッ・・・」

 

馬男はオタク武者の尻から落ち、ついに息絶えた。

 

「ありがとう、ジョアナ」

 

「え、何で私の名前知ってるの?」

 

「あ、い、いや、その・・・  

 あ、さっき君の同僚から聞いたんだよ。」

 

「だったら何でイザベルが気を失ってるのよ。

 ちゃんと助けなさいよ!」 

 

「え、あ、う・・・んー・・・」

 

オタク仮面が答えに窮していると、正気を取り戻したイザベルがふらふら とやってきた。

 

「ジョアナ・・・」

 

「イザベル、大丈夫?」

 

 オタク仮面は急いで武者姿から貧弱ヒーローの姿に戻ると、キャリーカートからローラースケート を取り出し はき始めた。

 

「ちょっと、待ちなさいよ!

 あんた誰なのよ?」

 

「ヒーローは正体を知られちゃいけないんだ・・・」

 

 そう言うと、噛まれた尻を擦りつつ、オタク仮面はへっぴり腰でカートに引かれ て 去って行くのであった。

    

 

                   続く・・・