吉村昭『ポーツマスの旗』を読む
司馬遼太郎『坂の上の雲』に引き続き、吉村昭『ポーツマスの旗』を読み終えた。
『坂の上の雲』が日露戦争でバルチック艦隊を破るまでの歴史を描いた小説とすれば、『ポーツマスの旗』は日露講和条約成立までの小村寿太郎の奮闘を描いたものだ。
外相・小村寿太郎は、日露講和が日本にとって不平等-勝利にもかかわらず賠償金を取れなかったこと-の結果に終わったことで、非難を浴び続けた。
1905年日比谷焼き討ち事件の原因もそこにある。
しかし、帝政ロシアに対する小村らの外交努力は充分なもので あり、結果もやむを得ないものと今ならば思う。
ところが、当時の日本人は、戦力も資金も底をつき戦争継続など不可能であることを知らなかった。国がその事実を知らせればロシアも知るところとなり講和は無理となるからだ。
不幸なことに、騒擾事件を起こした日本人のエネルギーは偏狭なナショナリズムとなって、後の太平洋戦争に突入する一因となった。吉村昭も講和成立が「明治維新と太平洋戦争をむすぶ歴史の分水嶺であること」と指摘する。
現在の我々にとっても教訓となることは多い。
国際情勢を知らず限られた情報で判断することの怖さ。集団群衆心理。たとえネット時代を迎えたとしても、大メディアに情報を握られている危険性を常に知っておく必要があろう。