鶴齢 特別純米 雄町無濾過生原酒R5BY
利き酒をする際に初見のお酒と既知のお酒(の年度違いやスペック違い等)では、心構えというかスタンスが少し変わってきます。
初見の場合は文字通り初めてで情報が少ないので、どんな味や香りにも対応できるようフラットな気持ちかつ全方位対応型の体制で臨みます。
なるべく先入観を持たないようにしているので香りや味わいの変化にも対応できるし、
よっぽど極端な味だったりフシギな味だったりしない限りはそんなに驚くこともなく、
過去のデータベースからこの辺りの酒と対応するような感じかなと照合して誤差を修正してイメージを作り上げていきます。
類を見ない特徴的な味だったりフシギな感覚だったりする場合は、
これはいったいどういうことなんだろうと素朴な疑問を呈しつつ対応。
まあ、めったにそんなことはないんですけどね。
そんな感じで対応する初見のお酒とは対照的に知っているお酒の場合、大体のイメージは出来上がっているので、
今年(あるいはこのバージョン)はどういう違いがあるか、その差異や変化に注意を払って利き酒をすることになります。
比較的大きな変化があった場合でも、根幹がゆらぐようなことがない限りは想定内の想定外なのでうれしいサプライズくらいになります。
しかし、今日のこのお酒は何というか、どう対応していいのか困惑するような変化だったので、
事前イメージと目の前のお酒とのギャップをどう埋めたもんかといろいろと頭を悩ませました。
ムズカシイ利き酒にはなりましたが、根本のところは変わっていないし、やっぱり変わらずうまいもんはうまいし、まああんまり小難しく考えすぎずうまかったらそれでいいかという結論に達しました。
鶴齢 特別純米 雄町無濾過生原酒(新潟県、青木酒造)
鶴齢の雄町無濾過生原酒は越淡麗や山田錦と比べるとやや端整でスマートなイメージはあるものの、
基本は鶴齢らしいしっかりとした米のうまみを出しているという印象です。
そのつもりで利き酒に臨み、ひとくち目を口にした時に、
「ん?」
と首をひとひねり。
ああ。
いや、違うか?
いくつかの言葉が思い浮かびつつも結論を下すことはせず、もう一度口をつけてみます。
「ん~?」
なんか、ちょっとほっそりしちゃった?
その点に気を配りながらもう一度トライ。
ああ。
どうやら、そういうことではなさそうです。
根本的には変わっていない。
ちゃんと米のうまみも出ているし、全体像としてちゃんと従来のイメージを保っている。
でも、シャープになったというか、例年よりもキレがある。
キレがあるといっても辛口というわけではなく、ちゃんと米のうまみを感じる。
だけど、ドライさも感じる。
そして、熟成耐性はやや低めになっている印象。
なるほど。
多分、米の影響かな。
去年は多くの蔵の人から米が溶けにくかったという話を聞いていました。
米が溶けにくいということは、発酵の経過次第では雑味が強くなったり大味になったりしがち。
そうならないようにいつも以上に気をつけて細心の注意を払って丁寧に醸した結果、
シャープさが前面に出てきた。
そして、米のクオリティは正直なので出来た酒はきちんとしていても熟成ポテンシャルは低くなる。
そんな感じなのかな、と思います。
おそらく、年末年始あたりでピークを迎えるんじゃないかなと思うので正月用のお酒として一本ストックしておこうかな。