京都大学で日本酒の講義 | 日本酒バー開店日記~日本酒BARあさくらat京都~

京都大学で日本酒の講義

一昨日、京都大学で日本酒の講義をしてきました。
縁あって、京大で学ぶ3,4回生の留学生相手に
日本酒の講義をしてくれないかという依頼を受けたのです。



大学院生時代、研究会等での発表をしたことくらいはありますが、
大勢の前で講義をするという経験は皆無。
しかも正規の授業なので、時間は90分です。
生来、あがり症の自分に勤まるだろうかと不安もありましたが、
これも日本酒普及のためには必要なことだし、
と思いお受けすることにしました。



大学での授業ではありましたが、
お酒のテイスティングも可能ということで、
講義をしながら実際に味を見てもらうという方法をとることにしました。
百聞は一見にしかずの言葉通り、
いくら言葉を尽くして説明しても、
実際に呑んでもらわないことには味というものは伝わりませんから、
テイスティングありというのは非常にありがたかったです。



で、講義の依頼を受けて何を話すか、
内容を考えて準備をするという作業が一番大変でした。
日本にある程度長く滞在しているとはいえ、
留学生の日本酒に対する知識はほぼ白紙に近い状態です。
日本酒というものを全く知らないものと思って、
一から順に基礎的なこととお酒を飲む上でこれは知っておいた方がいい、
ということを中心に話すことにしました。
興味を持ってくれた人にはもう少し踏み込んでもらえれば、
との思いから
中には多少難しいかな、という内容もあえて混ぜ込んでみました。



そうして迎えた当日。
事前に40人いるかいないかくらいと聞いていたのが、
ザッと数えて50人くらいの学生さんたちで教室は満席、
立ち見も出るほどの盛況ぶりでした。
(後になって聞いた話では、興味があって時間が空いていた先生も何人か来ていたそうです)
私は先に教室に入って準備をしていたので、
徐々に増えていく学生さんを見ながら、
ちゃんと話せるかどうか不安だったのが徐々に落ち着いてきました。
定刻になり、コーディネーターの先生が
私を皆に紹介してくれる言葉を聞いていた時が
一番緊張した瞬間でした。



声が震えそうなほどに緊張していましたが、
(実際、第一声は多少声が上ずっていました)
まずは自己紹介から始め、簡単に挨拶を。
挨拶を終えてからは学生さん達にいくつか日本酒に関する質問をし、
それからようやく本題に。
その頃には心臓のバクバクも落ち着いていました。


海外での日本酒の飲酒事情を最初の質問で聞いてみたのですが、
予測通り、
和食レストラン、寿司屋での熱燗しか呑んだことがない、
という回答がほとんどでした。
まずはそこで飲まれているものはどんなお酒か、
ということを日本酒の基礎的な分類をからめて
できるだけ分かりやすく解説していき、
そこから徐々に日本酒がどのように造られているか、
という工程の話へと移っていきます。


合間合間に造り以外の日本酒に関する話題を織り交ぜ、
試飲をしてもらいながら味の違いのことにも触れ、
という風に授業を進めていきます。
今回心がけたのは、日本酒になるべく興味を
持ってもらえるような授業内容にしようということ。
興味を持ってもらうというよりは、
一般にされているような誤解をここで解いておいて、
その上で味を見てもらい、
興味を持ってもらった人には更に話をという感じです。
決して、


「日本酒はおいしいから呑め!」


という強制ではなく、
チョイスの一つとして選んでもらえればというスタンス。
そして、日本酒だけではなく、
アルコールを楽しくおいしく呑むための心構え。
そのために、あえて他のアルコール類の話もしました。
まだ若い学生さん達が無茶をしてアルコールで嫌な思いをしないように、
楽しく飲酒文化に親しんでもらえれば、
という気持ちで話しました。


一応、90分間一人でずっと話し続けるくらいのつもりで
準備をしていたのですが、
学生さんからは活発に質問が出てきました。
これは授業だから店のことには
なるべく触れないでおこうとも心がけたのですが、
授業の最後では先生(!?)の店の場所を詳しく教えてください、
という質問まで飛び出し、
思っていたよりもずっと興味を持ってもらえたようで、
意外な反応の良さに驚きながらもうれしさの方が大きかったですね。


時計を忘れてしまって、
どれくらいの時間が経っているのか把握していなかったのですが、
もう90分はオーバーしてしまっているのかな、
と思ったところでちょうど話も一応の区切りを迎えたので、
そこで話を終えました。
あとをコーディネーターの先生が引き取ってくれたのですが、
実際には10分ほど時間が余っていたのを知ってビックリ。
90分話すというのは、実に長いもんだとあらためて実感。
毎週何コマも授業をしている大学の先生はすごいなあ、
と思わずにはいられませんでした。


留学生が相手ではありましたが、
正規の授業でのゲスト講師という立場。
かつて研究者を志していた身としては、
大学の教壇に立つというのはひとつの夢でしたから、
こういう形にせよ、
それが叶ったというのは実は自分にとっては
すごくうれしい出来事でした。


授業は思っていたよりもずっと好評だったようで、
早くも、ひょっとしたら来年もまたお願いをするかもしれない、
という話まで出てきたようです。
そして、意外な評価だったのが話し方と講義の進め方でした。
普段の会話では滑舌が悪い、聴こえない、
と言われることも多い私なだけにこの評価は本当に意外でしたが、
そのことを自覚しているだけに、
なるべく分かりやすく、ゆっくり、ハッキリと
そして反応を見ながらピッチを変えようと心がけたのが
功を奏したのかもしれません。



大勢の前で講演というのは初めての経験でしたが、
思ったよりも好評でホッとしました。
日本酒を広めるためには大学や企業、
公の場での講演活動もこれからもっと増やしていかなければな、

とも思いました。
特に大学における酒育は非常に必要なことだと思います。
入学時のオリエンテーションで、
というのは未成年がほとんどなので難しいかもしれませんが、
卒業前、社会人として巣立つ前の心構え、研修という形で
授業に取り入れてもらえる大学はありませんかね。
そういう機会をいただけるなら、
喜んで話をしに行きたいと思います。
講演等の依頼がありましたら、ぜひお声がけください。